2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26245066
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
安藤 寿康 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30193105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂上 雅道 玉川大学, 付置研究所, 教授 (10225782)
小林 千浩 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90324780)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 行動遺伝学 / 双生児 / 縦断コホート研究 / 遺伝と環境 / 認知能力 / 脳画像 / メンタルヘルス / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで継続してきた双生児縦断コホート研究を継続し、新たな発達の時点での教育過程における諸要因の遺伝・環境構造を明らかにするという同一の研究目的に対して、児童期コホートと青年・成人期コホートを独立に対象としながら研究を進めていこうとしている。そのため、それぞれの発達段階に対応した調査計画を立て、その準備を完了することが本年度の主たる研究活動であった。 まず児童期コホートでは、質問紙の調査項目の選定を行った。特に重要な点は、来校形式による行動調査を、十分なサンプル数(目標300組)を確保するために、11歳時(小学5年生)の1時点のみで行うことに決め、そしてこれまでの継続性をふまえてK-ABCの相当年齢課題を用いるとともに、新たな課題として実行機能課題(抑制、上書き、向き替えの3機能)をパソコン上で実施するためのプログラム開発を行い、その予備調査を、テスターの訓練も兼ねて、9人の対象年齢の単胎児に対して行った。また毎年縦断的に実施する予定の質問紙調査の内容として、一般的な教育的変数の範囲を拡大し、将来の精神的な危機状況を予測する精神科領域の行動変数や環境変数まで含めることとして、本研究開始時点では含まれていなかった新たな研究協力者として滝沢龍(東京大学大学院医科学研究科)、ならびに村山航(レディング大学心理学部)を得て、項目の検討を行った。 青年・成人期コホートでは、fMRIによる脳構造と脳機能の測定、ならびに遺伝子調査のための採血を実施するための準備作業を行った。新たな調査実施場所である玉川大学脳科学研究所にて、これらを実施することに伴う技術的な諸問題とともに、効果的なデータ収集の仕方も検討した。結果的に、認知能力のみならず抑うつ傾向も調査のターゲットとし、最もサンプル数の多い女性一卵性双生児を優先的に対象とすることにした。また質問紙の調査内容の検討も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は調査計画を検討・確定し、その準備を完了することを主たる目的としており、その目標はほぼ順調に達成した。 児童コホートで、コンピュータを用いた実行機能課題の開発を行ったことは、当初の計画になかった発展であり、世界的研究動向の中で、その重要性が認識されていながら、この年齢段階での双生児研究がほとんどないことから、国際的競争力を大きく高めうる調査内容となったと言える。さらにこの同じプログラムは、青年・成人期コホートにも適用できるため、発達段階を超えた横断的比較も可能となるという点でも、本研究全体の価値を高めたと言える。一方で、予備調査は単胎児に行うことにとどまり、双生児に着手することができなかった。しかしながら、この予備調査は当初の計画になかったものの、必要不可欠のステップであり、過小評価することはできない。 青年・成人期コホートでも、本調査の中で最も野心的な行動ゲノミクス研究を達成するための重要な調査課題であるfMRIによる脳画像調査の準備が完了し、次年度から開始できる段階に至ったのは計画通りである。しかし予備調査は、ここでも双生児を対象とする前の、一般大学生を対象とするところまでにとどまった。とはいえ、これも必要不可欠なステップとして評価できる。また質問紙調査項目にはまだ検討中のものが残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
児童期コホート、青年・成人期コホートとも、前年度に行った調査項目の確定と予備調査に基づき、実際の調査を実施する。 児童期では、毎週末2組ずつの双生児を対象とした来校形式の行動調査を開始する。また質問紙調査は、最終的な倫理審査の結果を待ち、承認後ただちに郵送・回収・入力、そして分析を行う。質問紙調査は、これまで蓄積された幼児期から初期児童期までのデータと連結させることによって、本研究の目的である縦断的な変化に及ぼす遺伝と環境の因果構造に関する分析が可能であり、その成果発表を目標とする。 青年・成人期においても脳画像調査と採血をただちに開始し、児童期と同じく毎週末2組ずつの調査を継続的に行う。とくに脳画像調査については、一卵性双生児の差異に関わる脳構造・脳活動の同定と、その遺伝子発現の差異との対応を明らかにすることが目的であるため、対象者の均質性を確保するため、女性一卵性双生児の協力者を優先的に募る。通常の一卵性と二卵性の量的比較を基にした行動遺伝学的分析では、サンプル数が数百人を必要とするが、一卵性の差異を基にした分析では、その遺伝的等質性の中での差異を扱うので統計的検出力も相対的には高いため、本年度2~30組を撮像することで、予備的な成果を出すことが可能と考えており、それを目標とする。またこのコホートの質問紙は、その調査項目を最終確定し、倫理審査を経て、8月までに郵送・回収を目指す。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Why children differ in motivation to learn: Insights from over 13,000 twins from 6 countries2015
Author(s)
Kovas, Y., Garon-Carrier, G., Boivin, M., Petrill, S. A., ., Ando, J., Bogdanova, O. Y., Brendgen, M., Dionne, G., Forget-Dubois, N., Galajinsky, E. V., Gottschling, J., Guay, F., Lemelin, J. P., Logan, J. A. R., Yamagata, S., Shikishima, C., Spinath, B., et al
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Journal Title
Personality and Individual Differences
Volume: 80
Pages: 51-63
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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