2014 Fiscal Year Annual Research Report
第3次革命を迎えた宇宙論的銀河形成流体シミュレーション:原始銀河形成と宇宙再電離
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26247022
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長峯 健太郎 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50714086)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2018-03-31
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Keywords | 理論天文学 / 銀河形成 / 宇宙論 / 数値計算 / 流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで宇宙論的流体シミュレーションを主に宇宙論的な体積で実行してきたが、それではどうしても解像度が~kpcスケールを切ることができなかった。そのため、最近ではズームインシミュレーションが数多く行われるようになり、これによって宇宙論的な初期条件を保ったまま、解像度を上げて特定領域の銀河形成を解くことができるようになってきた。 本研究は、新たな超新星爆発フィードバックモデルを構築し、それを用いて最終的には宇宙論的ズームシミュレーションを走らせることを目的としている。H26年度には、まずこのフィードバックモデルの新たな構築を開始した。また、H26年度8月に、コード開発の事前準備の段階で当初の予想に反してズーム流体シミュレーションをスパコンに多数同時に並列に走らせる最のジョブ投入と計算のロードバランスに不具合が発生することが判明し、追加で検証実験が必要となった。繰り越した経費ではその研究を続けるとともに、超新星爆発のモデル開発とコードテストも継続した。 H27年度中には、超新星爆発のモデル開発をまず孤立銀河系において開発及びテストを行った。旧来のモデルでは超新星爆発が起きた後、単に熱的エネルギーを周辺のガス(SPH)粒子にばらまき、かつ解像度の限界を克服するために運動エネルギーも同時にSPH粒子に与えて銀河風などの現象を再現する手法が主流であった。ここ数年では、超新星爆発に加えて大質量星からの星風や輻射によって超新星が爆発する以前に周辺の星間物質にまずフィードバックがかかり、その後の超新星爆発フィードバックの効率がよりよくなるという指摘がされていた。我々はこの流れを受けて、超新星爆発が起きる以前の400万年間においては大質量星からの熱的フィードバックを考慮し、その影響を孤立銀河系において調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新しい超新星フィードバックモデルを組み込んだ孤立系銀河におけるテストミュレーションを走らせたが、様々なコードのクラッシュが起きた。時間がかかったが、そのデバッグをする過程でモデルの物理的妥当性が検証でき、特にフィードバックによって吹き出る銀河風の速度についての理解が深まった。また、最初に雇用した研究支援員が新たな職を得て転出することが決まったため、早急に後任の研究支援員を公募し、雇用することとしたため、その間の引き継ぎにも時間がかかった。 上述した超新星フィードバックモデルにおいては、その爆発エネルギーを分配するSPH粒子をどのように取るかによって、そのフィードバックを受けた粒子の運動エネルギーが時には1000km/sを越すような速度を持ってしまうことがあり、注意を要することを孤立銀河系のテスト計算から見出した。これは単純な超新星爆発のSedov-Taylor解を使用すると爆発の影響を見積もる半径が短めに出てしまい、結果として非常に数少ない粒子に多くのエネルギーが分配されてしまうことによって起きてしまう。そこで我々はより長時間にわたってガス冷却などの効果を考慮して爆発半径を見積もったChevalier (1974)の解析結果を利用することで、この問題を解決することに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も新しく開発したフィードバックモデルの物理的妥当性を検証しながら、孤立系銀河とズームシミュレーションのテスト計算を重ね、それらのProduction Runに近づけていく努力をしていく。 また、大質量星や超新星によるフィードバックには輻射の影響があるわけだが、その際に大事になるダストの破壊・成長を取り込んだモデルもシミュレーションに組み込んでいくことを考慮する。特に、これまでのシミュレーションにおいては通常ダストの質量は金属量に正比例するものとして非常に単純に扱われていたが、最近 Asano et al. (2013)やHirashita (2015)などのダストの破壊と成長を考慮したモデルが日本人研究者によって盛んに研究されている。これらのモデルをシミュレーションに組み込みやすいように改変し、今後の輻射輸送シミュレーションにむけた準備として宇宙論的シミュレーションに組み込む努力をしていく。これらの超新星爆発モデルとダストモデルの両方を組み込んだ宇宙論的シミュレーションを走らせ、銀河形成と進化に対する影響を調べて、銀河の光度関数や質量関数などとの比較を行っていく。 これらの研究結果がまとまり次第、研究成果を論文にまとめて発表していく。また、様々な星形成モデルによってどのように銀河の形態や電離光子の脱出確率が変わっていくのか、高赤方偏移の銀河について検証していく。
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Research Products
(10 results)