2015 Fiscal Year Annual Research Report
エピブラストから多様な体細胞系列を生み出す遺伝子制御ネットワークの解析
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26251024
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
近藤 寿人 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (70127083)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子発現調節 / エピブラスト幹細胞 / マウス胚操作 / 体細胞系列 |
Outline of Annual Research Achievements |
すべての体細胞系列の直接の前駆体であるエピブラストから、個々の体細胞系列がどのような制御のもとで生み出されたり分岐したりするのかという、発生生物学の根本問題を、現代的なアプローチによって研究する研究を実施した。次の研究成果を得た。 1.体細胞系列の前段階として、エピブラスト幹細胞で作動している遺伝子制御ネットワークを明らかにすることを目指した。転写因子ZIC2, OTX2, SOX2, POU5F1, POU3F1に関するChIP-seq解析を行っていたが、データの分析を進めた結果、ZIC2+OTX2, SOX2+POUの転写因子の組み合わせが、別個の転写制御協同ユニットを構成することが明らかになった。2. Wntシグナルの強度に応じてEGFP発現レベルを変化させるレポーターマウス系統R26-WntVisを完成した。3. 転写因子FOXA2が発現されると、同時にEGFP蛍光タンパク質を発現するノックインマウス胚から、その性質を保持したエピブラスト幹細胞株を樹立した。このエピブラスト幹細胞を用いて、原条とその周辺組織に対応した細胞群を生み出す条件を見いだした。4. エピブラスト幹細胞から、直接的に神経幹細胞株を樹立した。その樹立過程において与えるWntシグナルの強度の違いによって、異なる領域特性をもった神経幹細胞株を樹立した。5. エピブラスト幹細胞を出発点として、心外膜前駆体に対応する幹細胞株を樹立した。6. SOX2転写因子は初期胚発生の重要な転写因子であるにも関わらず、ノックアウトマウス胚が着床直後に発生を停止するために研究が停滞していた。そこで、CreERとfloxed Sox2 alleleの組み合わせによって、発生時期、あるいは組織特異的なSox2ノックアウト胚を作成した。神経系及び消化管を中心として大きな発生異常が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の、当初に計画した研究は順調に進んでいる。 1. 遺伝子制御ネットワークを、ChIP-seqを用いて、ゲノム全体を対象として解析する研究、2. エピブラスト幹細胞を起点として、新たな体細胞系列の幹細胞株を樹立する研究、3. さまざまなシグナル因子の、遺伝子制御ネットワークに対する効果と幹細胞からの発生の方向付けに対する効果を、総合的に解析する研究、4. 特定の転写因子が、各発生ステージの遺伝子制御ネットワークに対する関与の変化の研究。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は、当初の計画にそって順調に展開しているので、大きな方針の転換は予定しない。研究対象とする転写因子として、ZFHXファミリーの因子(δEF1/ZEB1, SIP1/ZEB2)を加えることにした。これらがEMT(epithelial to mesenchymal transition)を介して、胚の中での細胞系列の分岐を制御している可能性がある。 また研究をすすめるにつれて、エピブラストの中での特異的な組織構造であるNodeおよび周辺の組織が、古典的な「オーガナイザー」から期待されるものとは異なる挙動を示すことを強く認識した。これらの組織がどのような発生能を持ち、また他の組織に具体的にどのように働きかけるのかを明らかにするには、鳥類(ニワトリ、ウズラ)胚の操作による研究が切れ味の良い解析を可能にするので、平成28年度では、鳥類胚のエピブラストを用いた研究にも力を入れる。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] YAP is essential for tissue tension to ensure vertebrate 3D body shape.2015
Author(s)
Porazinski S, Wang H, Asaoka Y, Behrndt M, Miyamoto T, Morita H, Hata S, Sasaki T, Krens SF, Osada Y, Asaka S, Momoi A, Linton S, Miesfeld JB, Link BA, Senga T, Castillo-Morales A, Urrutia AO, Shimizu N, Nagase H, Matsuura S, Bagby S, Kondoh H, Nishina H, Heisenberg CP, Furutani-Seiki M.
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Journal Title
Nature
Volume: 521
Pages: 217-221
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Transcriptional repressor ZEB2 promotes terminal differentiation of CD8+ effector and memory T cell populations during infection.2015
Author(s)
Omilusik KD, Best JA, Yu B, Goossens S, Weidemann A, Nguyen JV, Seuntjens E, Stryjewska A, Zweier C, Roychoudhuri R, Gattinoni L, Bird LM, Higashi Y, Kondoh H, Huylebroeck D, Haigh J, Goldrath AW.
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Journal Title
J Exp Med.
Volume: 12
Pages: 2027-2039
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Two classes of Sox2-partner factor interaction involved in developmental gene regulation, as indicated by genome-wide ChIP-seq analaysis.2015
Author(s)
Kondoh H, Matsuda, K, Mikami T, Andrabi M, Yamaguchi K, Shigenobu S.
Organizer
48th Annual meetin of the Japanese Society of Developmental Biologists.
Place of Presentation
Tsukuba Convention Center, Tsukuba, Ibaragi, Japan
Year and Date
2015-06-02 – 2015-06-05
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