2014 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシア多島海における乱流強度の定量化とその全球気候の形成に果たす役割の解明
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26257208
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日比谷 紀之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80192714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
升本 順夫 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60222436)
木田 新一郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, アプリケーションラボ, 研究員 (50543229)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 乱流混合 / 潮汐流 / インドネシア通過流 / 全球気候 / 投棄式乱流計 |
Outline of Annual Research Achievements |
インドネシア多島海において潮汐混合を発生させる要因となる内部潮汐波の励起・伝播・散逸過程を明らかにするため、多島海全域を対象とした高解像度の数値実験を行った。エネルギー収支解析の結果、内部潮汐波の顕著な励起源がスラウェシ海のサンギヘ諸島、スールー諸島周辺海域や、セラム海、ハルマヘラ海に集中していることが示された。これらの海域で励起された内部潮汐波の一部は励起源直上で散逸し、残りは鉛直低次モードの波として遠距離伝播した後に浅海域で散逸する。このため、多島海域外へ伝播する内部波エネルギーはほとんどなく、励起された内部波の大部分が多島海域内で散逸することが明らかになった。特に、スラウェシ海で発生した内部潮汐波はその伝播途上で内部波ソリトンに発達し、浅海域に到達して大部分のエネルギーを散逸するが、その伝播過程におけるエネルギー散逸も無視できないことがわかった。 次に、エネルギー収支解析から得られたエネルギー散逸率 ε を Osborn (1980) の式に代入することで、インドネシア多島海における潮汐混合の強度分布を見積もった。その結果、鉛直拡散係数の特に大きな「乱流ホットスポット」は、セラム海、ハルマヘラ海、スラウェシ海、フローレス海に存在し、特に、それらの海峡部においては 10 Munk 以上もの強い混合が局所的に見られることがわかった。多島海域内における鉛直拡散係数の平均値は 2 Munk となり、領域平均値の観点からは、鉛直一次元バランスやパラメタリゼーションを用いた先行研究の推定値と同程度の結果となった。今後は、本研究により同定された「乱流ホットスポット」を中心とした乱流観測を行うことで、インドネシア多島海域内における乱流拡散強度のマッピングを完成させていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度に行った数値実験から同定されたインドネシア多島海域内における乱流ホットスポット域を中心に乱流観測を実施する予定であったが、使用を予定していた投下式深海乱流計VMP-Xの開発が大幅に遅れてしまったこと、また、現地における協力体制にも支障が出たことなどの理由から、当初の計画通りに実施することが困難となった。そのため、前述の数値実験から推定された潮汐混合強度分布を循環モデルに組み込むことで、現時点までで明らかとなった潮汐混合がインドネシア多島海域における海面水温・水塊変成に与える影響を調べ、平成28年度に実施する観測計画の基盤となる情報を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26-27年度に実施した数値実験から、インドネシア多島海における海面水温・水塊変成は 2000 m 以浅の比較的浅い海域の乱流混合に敏感に反応することが明らかとなった。そのため今後の乱流観測は、開発の遅れている投下式深海乱流計VMP-Xを使用する計画から、研究室の保有する深海乱流計 VMP-5500 に2000 m のロープを取り付けて実施する計画に変更することにした。今後は、インドネシア側の共同研究者 Fadli Syamsudin 博士、Iskhaq Iskandar 博士と、現地における傭船をはじめとする具体的な観測計画について綿密な打ち合わせを行うことで研究を推進していく予定である。
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Research Products
(31 results)