2015 Fiscal Year Annual Research Report
北極海における海洋揮発性有機分子の動態とその支配要因に関する研究
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26281001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉川 久幸 (井上久幸) 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 特任教授 (60344496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小杉 如央 気象庁気象研究所, 海洋・地球化学研究部, 研究官 (20553168)
村田 昌彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, チームリーダー (60359156)
亀山 宗彦 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (70510543)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 環境分析 / 環境変動 / 北極海 / 揮発性有機化合物 / 海洋炭酸系 / 海洋メタン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、北極海の揮発性有機化合物(VOC)及び海洋炭酸系の動態把握と、その変動要因を解明することを目的としている。着目するVOCは生物活動により生成し、大気オゾンの動態やエアロゾルの生成などを通じて気候変化に関与する物質である。北極海は夏季の海氷融解が進行し、海洋生物相の変化や基礎生産の増加が議論されており、これらがVOCの組成と量に影響を及ぼすと考えられている。炭素循環の観点からは、海氷生成の減少と基礎生産の増加は北極海の二酸化炭素吸収量の増加を期待させるが、一方で海洋酸性化促進の側面も有する。平成27年度は、北極海で海洋観測を実施することが最初の目標であり、8月24日~10月6日の間、海洋地球研究船「みらい」MR15-03航海に乗船し、海洋VOC(ジメチルスルフィド(DMS)、イソプレンなど)の分析、大気および表面海水の二酸化炭素分圧、メタン分圧の連続測定を実施した。観測の結果、海洋二酸化炭素とメタンの大気・海洋間の交換については、海氷融解水が交換の障壁となっていることが明らかになってきた。今後はどの程度の擾乱で障壁が破れるのか、気象学・海洋物理学的な観点からの取り組みが必要である。硫化ジメチル(DMS)及びその前駆体であるジメチルスルフォニオプロピオネート(DMSP)分析用の試料は、鉛直分布を取得するために25測点で試料の採集を行った(1日に約2回の頻度)。DMSの試料は、本研究で導入したキューリーポイントインジェクターを用い、ガスクロマトグラフで船上測定を行なった。イソプレン及びモノテルペンの分析は抽出処理が複雑である。このため試料は7測点で採取し、本研究で導入したVOC抽出ラインを用いて抽出し、ガスクロマトグラフを用いて船上で測定を行った。また、メタンの鉛直分布に関しては、アラスカ沿岸海域に特に着目し19測点で試料の採集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海洋地球研究船「みらい」MR15-03航海の連続観測および各層採水地点のデータは、品質の評価も終わっており、現在解析中である。海洋二酸化炭素と海洋メタンの分布と変動については、河川水、海氷融解、生物活動の影響などについて引き続き検討する。特に、海氷融解水の寄与が大気・海洋間の気体交換を阻む役割(障壁)を果たしていることが分かってきたので、どのような気象学的な擾乱で交換が促進するのかを検討している。また、「みらい」航海で採取したVOC測定用海水試料のうち、DMSP及びメタン試料は保存が可能であるため実験室に持ち帰っている。これらの試料については、平成28年度に実験室内での測定を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
海洋の炭酸系及びメタンに関しては、過去データと比較し分布に関する年々変動とその要因について理解を深める。特に1998年から2002年にかけて取得された表面海水の二酸化炭素分圧と全炭酸濃度のデータを本研究課題で取得された同データと比較し、海洋酸性化の進行度合いを評価することを予定している。また海洋内部におけるメタンの生成と酸化に着目し、各層採水と連続観測の結果と組み合わせた解析を行っていく。平成27度の「みらい」航海では、北極海での海氷張り出しの影響により、当初予定していたシベリア沖での観測が実施できなかった。アラスカ沖での密な採水による分析で、普遍性のある結果を得ることが出来たと考えているが、結果の確認のためにもシベリア沖で観測する外国研究船での海水試料採取を検討している。 得られた結果については、国内外での学会で発表するとともに、論文として投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
海洋地球研究船「みらい」から持ち帰った機器の再設置及び測定精度に問題が生じ、採取した海水試料の分析が今年度にずれこんだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海水試料分析のため、ガス容器代、人件費・謝金に使用する予定。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] The GEOTRACES Intermediate Data Product 20142015
Author(s)
Mawji, E., R. Schlitzer, E. M. Dodas, C. Abadie, W. Abouchami, R. F. Anderson, O. Baars, K. Bakker, M. Baskaran, N. R. Bates, K. Bluhm, A. Bowie, J. Bown, M. Boye, E. A. Boyle, P. Branellec, K. W. Bruland, M. A. Brzezinski, E. Bucciarelli, H. Yoshikawa, et al.
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Journal Title
Marine Chemistry
Volume: 177
Pages: 1-8
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Continuous measurements of xCO2 and xCH4 in the seawater and overlying air in the western Arctic Ocean2015
Author(s)
Sasano D., M. Ishii, N. Kosugi, A. Murata, H. Uchida, K. Kudo, S. Toyoda, K. Yamada, N. Yoshida, H. Y.oshikawa-Inoue, S. Nishino, T. Kikuchi
Organizer
The 18th WMO/IAEA Meeting on Carbon Dioxide, Other Greenhouse Gases, and Related Measurement Techniques (GGMT2015)
Place of Presentation
La Jolla, California (USA)
Year and Date
2015-09-13 – 2015-09-17
Int'l Joint Research
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[Presentation] Relationship between CH4 and CO2 in the surface seawater in the western Arctic Ocean2015
Author(s)
Sasano D., M. Ishii, N. Kosugi, A. Murata, H. Uchida, S. Toyoda, K. Yamada, K. Kudo, N. Yoshida, T. Mifune, M. Yamamoto-Kawai, H. Yoshikawa-Inoue, S. Nishino, T. Kikuchi
Organizer
4th International Symposium on the Arctic Research
Place of Presentation
富山国際会議場 (富山県・富山市)
Year and Date
2015-04-23 – 2015-04-30
Int'l Joint Research
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