2015 Fiscal Year Annual Research Report
ファージ相互作用によるアオコ原因ラン藻の遺伝的・生理的変動の解明
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26281031
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 天士 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80305490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
左子 芳彦 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60153970)
金子 貴一 京都産業大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80370922)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バクテリオファージ / ラン藻 / ミクロキスティス / 共進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
アオコは、ラン藻の異常増殖により湖沼で発生する自然現象である。ファージ耐性領域の遺伝子解析により、主要なアオコ構成種であるミクロキスティスが、環境中で極めて多様なファージと相互作用していることを見出した。本課題は、ファージが本種ゲノム多様化と増殖生理へ与える影響を解明する。本年度の成果は以下の通りである。 1)本年度は新たに本種6株のゲノム解読を行った。ファージによる感染履歴が同じ株間で機能未知のタンパク質YafJに非同義置換変異を見出した。本種ファージ感受性株とその耐性変異株2株のゲノム比較を行った。2つの変異株において30と69か所の変異が認められた。そのうち9カ所の変異は両者に共通していたが、いずれもタンパク質非コード領域の変異であった。 2)2014年および2015年の京都市広沢池試料を用いて、ウイルス感染履歴の異なる本種個体群 (CRISPR タイプ) の網羅的な解析を行った。2014年および2015年の広沢池では代表的な本種個体群が変動し、ファージによる頻度依存的な選択機構が本環境中で機能していることが示唆された。 3)上記広沢池から調整したウイルスメタゲノム配列に対して本種ウイルス感染履歴配列を検索したところ、本種感染性ファージの部分配列と予想される新規なファージターミナーゼ遺伝子を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度までにゲノム解読を終えた本種は15株となり順調に進んでいる。環境での本種ゲノム変動過程も継続的に調査が進み、本種感染性ファージの部分配列を得ることにも成功した。しかしながら今年度も本種-ファージ感染系におけるゲノム多様化・増殖応答変化を解明するためのマイクロコズムを構築には至らず、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本種-ファージ感染系によるマイクロコズム実験を行い、ファージによる宿主ゲノム多様化と変異による増殖応答変化を解明する。感染履歴の異なるミクロキスティス株の比較ゲノム解析によりウイルスによるゲノム変化を総括する。また、メタゲノム手法による新規本種感染性ファージのゲノム解読を進める。
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Causes of Carryover |
本種-ファージ感染系マイクロコズムにおけるゲノムの多様化解析が未実施であったため、本種とファージのゲノムシーケンスにかかる試薬の購入を行わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本種-ファージ感染系によるマイクロコズム実験を行い、ファージによる宿主ゲノム多様化解析を行う。また、共進化による本種の遺伝子変化を環境でとらえるため、サンプリング旅費に充てる。
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