2015 Fiscal Year Annual Research Report
キーエレメントの化学構造に基づいた有機ハロゲン化合物の生成機構と排出制御法の確立
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26281035
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坪内 直人 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90333898)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 石炭 / ガス化 / 塩化水素 / 炭素活性サイト / 金属種 / 二次的反応 / 有機塩素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、廃棄物焼却・鉄鉱石焼結・電気炉製鋼・石炭燃焼/ガス化といった高温プロセスから非意図的に排出される難分解性の有機ハロゲン化合物に関し、その主要生成サイトであるダスト・フライアッシュ・チャー中の炭素質物質、ハロゲン化合物および金属成分の化学状態や加熱時のダイナミックス等を詳細に解析する一方、HClやHFによる炭素の表面ハロゲン化実験を行い、有機ハロゲン化合物の生成機構を分子レベルで解明するとともに、低品位褐炭から製造した金属ナノ粒子含有活性炭を用い、有機ハロゲン化合物の排出抑制を可能にする安価な排ガス処理原理を構築することを目的とする。 平成27年度は主に、石炭のガス化過程における塩素の行方を調べた結果、炭素転化率は反応時間が増加すると直線的に増え180minで100%に達する一方、水溶性塩素の割合はガス化初期には大きいものの後半ではほぼ一定(30~60%)となり、その約50%がHClであった。また、ガス化時には水に不溶な塩素種が生成し、その量はガス化後期に著しく増え、最大で70%に上った。次に、フェノール樹脂から調製した炭素をO2賦活後、KもしくはCaをドープしたモデル炭素物質を用い、100ppmHCl/50vol%CO2/N2流通下500℃で保持したところ、炭素は金属の有無に依らずHClと容易に反応し、その量は炭素活性サイト数の増加とともに増し、Ca担持炭素で最も大きくなり、この試料のXPS測定では、炭素単独に比べ有機塩素に帰属できるスペクトルの強度が顕著となることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、石炭ガス化時における塩素の行方を主に調べ、初期には主にHClを含む水溶性塩素が発生し、一方、終盤には熱的に安定な有機塩素が生成することを明らかにした。また、金属担持炭素を用いるモデル実験と反応後のXPS測定より、有機塩素はガス化初期に発生したHClとチャー中の炭素活性サイトおよび金属種の二次反応を通して形成されることを見出した。このように、本研究は順調に進展しており、平成27年度に掲げた目標を充分に達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、前年度の研究を発展させるとともに、金属ナノ粒子含有活性炭を用い、有機ハロゲン化合物の排出抑制を可能にする安価な排ガス処理原理の確立を目標に掲げる。活性炭の原料は可能な限り安価で、しかも、ナノ微粒子の添加工程が不要であることが望ましいので、金属イオンを元々含む低品位褐炭を原料として用いる。褐炭中の金属イオンはイオン交換状態で微分散しているので、容易にナノ粒子に転換されることは明白である。そこで、鉱物質組成の異なる数種の褐炭を不活性ガス中で熱分解あるいは熱分解後に酸素賦活することで金属ナノ粒子含有活性炭を作製する。金属の結晶形態と表面組成はXRDとXPSで分析し、細孔性状はガス吸着量測定装置で調べる。また、吸着性能の評価では、石英製の反応管にダストあるいはアッシュを充填し、その加熱時に発生する有機ハロゲン化合物を上記の活性炭上に流通させ、この過程における有機ハロゲン化合物の濃度変化を分析する。得られた結果より、活性炭の有機ハロゲン吸着能を制御するキーファクター(温度・ガス雰囲気、活性炭の表面積・細孔性状、金属の種類や存在状態)を抽出し、高性能有機ハロゲン除去剤を開発するための指針を確立する。
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Causes of Carryover |
研究の都合上、3月納品・4月支払いとなる物品があったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度内に購入予定だった物品は全て納品済であり、平成28年度の研究は計画の変更なしで進めることが出来る。
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Research Products
(5 results)