2016 Fiscal Year Annual Research Report
困難を抱えた子ども・家族を地域で途切れなく支援する早期対応型地域支援モデルの検討
Project/Area Number |
26282015
|
Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
大谷 由紀子 摂南大学, 理工学部, 教授 (00411116)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 伸生 京都華頂大学, その他部局等, 教授 (50228954)
畑 千鶴乃 鳥取大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60550944)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | こども家庭支援 / 地域包括支援 / 社会的養護 / 地区拠点 / フィンランド / カナダ |
Outline of Annual Research Achievements |
国内では法改正に伴う子ども家族支援の政策と自治体構想を中心に調査を実施した。先行国調査は日本の子育て支援策がモデルとしたカナダ、フィンランドにおけるハイリスクな子ども家族サービスを把握した。 子育て世代包括支援センターはフィンランドのネウボラを模した日本版ネウボラであるが、妊娠・出産に限定された母子保健であり、事例から窓口は簡易なものが多く丁寧な対応は難しいと思われる。地域子ども家庭支援拠点は、ワンストップ型ハブの形成プロセスに知見を得ており、事業初動期における先行自治体の構想を聞き取った。結果、政令市Sでは児童相談所や既存機関を包括した拠点、中核都市T市では子ども食堂などの民間活動も含めた地区拠点の構想があった。 カナダ・オンタリオ州のこども家族サービスは、過去10年の改革を整理し、新たなビジョンを把握した。改革の重点は、4、5歳児の全日制幼稚園への移行、地域リソースの再編、0~12歳の子どもと家族のための包括的支援の構築、である。しかし、支援の必要な家庭こそサービスにアクセスできない問題が浮上し、サービス拡充よりむしろ、既存サービスをハブに統合することでアクセス保障を図ってきた。2015年以降は子育て支援にファミリーサービスを統合した拠点整備を進めている。トロント市は改革推進のため地区特性を多彩な指標で分析し、貧困地区に社会サービスと拠点の優先的設置を進めている。2015年からは140地区の格差是正のため、1つの窓口からすべてのサービスにつながる「ヒューマンサービス・インテグレーション」を新たな方向に示している。フィンランドのネウボラは自治体に設置義務があり、健全育成、予防を担う在宅支援、特別なニーズの3レベルで構成される。学校保健から外れた子どもへは青少年・家族ネウボラで多彩なサービスが提供されるが、近年は市内に点在するサービスのファミリーセンター化が進んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画から、国の政策や自治体サービスの動向や進捗を踏まえた調査にシフトすることで、本研究の目的、および、地域が直面する課題に呼応した検討を行うことができた。海外調査は、我が国の地域子育て支援事業がモデルとする先行国において、ハイリスク家庭へのサービスに関する調査を実施し、現状の枠組み、経緯、将来像を把握することができ順調に進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
国内調査は平成28年度に引き続き、自治体の施策と新たな事業の構想について、人口、既存リソースを考慮して調査対象を選定し、聞き取り調査と視察を実施する。同時に、児童福祉法など国の政策動向を注視し、ハイリスクな子ども・家族サービスの全体を捉えた研究を行う。海外調査においては、昨年度は概要把握までを行ったフィンランドでの継続調査、および、フィンランド同様に拠点化が進展するスウェーデンでの政策把握を行う。さらに、改正児童福祉法で動き始めたアドボカシーオフィスの設置について、既に本研究のカナダ・オンタリオ州調査にてヒアリングを実施していることから、改めて先行事例として捉え直し、現地聞き取り調査を実施する。これらの調査をとおして、最終年度として本研究の総括を行う。
|
Causes of Carryover |
フィンランド調査は当初、8日間、3名での実施を予定していたが、訪問先との日程調整において学務との関係から、調査人数が2名となり、日数も短縮されたことから残額が生じた。また、最終年度に2ヶ国での海外調査、国際学会での発表を予定していたため、それらを見据えて慎重に予算を執行した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、当初計画のフィンランド、スウェーデンでの調査、国際学会での発表に加え、近年の政策動向から新たにトロントでの調査を計画している。繰越金はそれらを実施するための費用に充てる。
|
Research Products
(10 results)