2015 Fiscal Year Annual Research Report
睡眠障害が競技パフォーマンスを低下させる機序の解明とその改善法の開発
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26282181
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
前田 清司 筑波大学, 体育系, 教授 (30282346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋本 崇之 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00323460)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 睡眠質 / 高照度光照射 / メタボローム解析 / 代謝産物 |
Outline of Annual Research Achievements |
アスリートにおいて、睡眠は競技パフォーマンスを維持・向上するために重要な役割を果たしている。これまでに断眠や睡眠時間の短縮により、競技パフォーマンスが低下することが報告されている。さらに、睡眠時間だけではなく、就寝前の高照度光照射は睡眠質を低下させ、起床後の競技パフォーマンスを低下させることも示されている。しかし、その機序についてはほとんど明らかにされていない。 本年度は、高照度光照射による急性の睡眠障害(睡眠質の低下)で変動する代謝産物をメタボローム解析にて網羅的に評価し、睡眠質の低下に関連する代謝産物を探索することを目的として研究を行った。睡眠障害のない健常男性を対象に、睡眠質を低下させる高照度光照射条件と正常睡眠(対照条件)の2条件を、環境が制御されたカロリーメーター室にてランダムに行った。睡眠質の評価として、睡眠中における睡眠ポリグラフ検査(PSG)と起床時の主観的な睡眠を内省するOSA睡眠調査票を行った。高照度光照射条件では、対照条件と比較し、PSGにて評価した入眠潜時が有意に延長した。また、高照度光照射条件におけるOSA睡眠調査票の疲労回復の得点が有意に低い値を示した。これらのことから就寝前の高照度光照射により、睡眠質が低下する可能性が示唆された。さらに、起床後における尿サンプルをメタボローム解析によって網羅的に評価し、両条件間で比較検討した。その結果、高照度光照射条件では対照条件と比較し、5-Hydroxylysine、Allo-threonineの値が有意に高く、N-Acetylleucine、Ornithine、Carnosineの値が有意に低いことが明らかとなった。これらのことから、就寝前の高照度光照射による急性の睡眠障害(睡眠質の低下)は、タンパク新生やアミノ酸生成、抗酸化作用に影響を与え、疲労回復を低下させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画通りに、高照度光照射によって急性的に睡眠質を低下させた時に変動する代謝産物をメタボローム解析にて検討し、タンパク新生、アミノ酸生成、抗酸化物質に関連する物質が睡眠質低下の影響を受ける可能性が示唆された。このように、睡眠質を低下させた介入研究により、睡眠質の低下に関連する可能性のある候補物質が検出されたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、就寝前の高照度の光照射により、OrnithineとCarnosineの産生が低下することが示された。このことから、これらの物質を補給することでパフォーマンスの低下を抑制できる可能性が考えられる。そこで、最終年度は睡眠質の低下により不足している物質(Carnosine、Ornithineなど)をサプリメントにより補給することで、競技パフォーマンスに関連する身体機能が改善するか否かについて検討する予定である。さらに、これまでの研究成果をまとめて、睡眠障害が生じた際の競技パフォーマンス向上のためのコンディショニング法を提案する。
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Research Products
(3 results)