2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26282185
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
田中 雅彰 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60382199)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スポーツ生理学 / 疲労 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、運動疲労の神経基盤を統合的に解明することである。平成23~25年度基盤研究(B)「運動疲労時における中枢制御機構の統合的解明」において、抑制システム、促進システム、疲労感などの運動疲労関連因子の神経基盤を個々に明らかにした。本研究ではさらに進めて、動的で相互依存的な側面を持つ運動疲労の中枢神経系制御機構に対して、脳磁図装置(160チャンネルを有する横河電機製MEG vision)を用いて詳細に検討することで、運動疲労の神経機構を統合的に解明する。本年度は、健常者を対象として、運動疲労時における抑制・促進システムの相互作用について検討し、その神経学的基盤を明らかにした。 本研究では、健常被験者に対して、運動による疲労困憊状態を想起させた上で、抑制システムを賦活させるセッション、促進システムを賦活させるセッション、コントロールセッションを3試験区クロスオーバーデザインで実施した。なお、研究の遂行に当たっては、被験者のプライバシーに十分配慮し、大阪市立大学倫理委員会の承認の後、被験者の同意を得たうえで実施した。 周波数解析を用いて、抑制システムの脳活動を評価したところ、右前頭前野において、α周波数帯域(8-13 Hz)事象関連同期が認められた。一方では、促進システムの脳活動を評価したところ、右前頭前野において、α周波数帯域事象関連脱同期が認められた。これらの結果は、右前頭前野の活動を抑制することで抑制システムが活性化され、一方では、右前頭前野の活動を亢進することで促進システムが活性化することを示唆している。 本研究により、これまで別々に同定されていた抑制システムと促進システムの神経基盤を、動的・相互依存的に解明された。これらの成果は、運動疲労の神経機構を統合的に解明する上で、非常に意義深いものであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、健常被験者に対して、運動による疲労困憊状態を想起させた上で、抑制システムを賦活させるセッション、促進システムを賦活させるセッション、コントロールセッションを3試験区クロスオーバーデザインで実施した。本研究により、これまで別々に同定されていた抑制システムと促進システムの神経基盤を、動的・相互依存的に解明することに成功し、当初の計画どうりに進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
我々のこれまでの脳磁図を用いた運動疲労研究から、中枢神経系が疲労した状態において、運動疲労時、促進システムの神経基盤を構成する前帯状回の活動が特異的に減少することを明らかにしてきた。しかしながら、時空間的関係性を有する形での統合的理解までには至っていない。今後の研究では、健常被験者を対象として、中枢神経系を疲労負荷させた上で、運動による疲労困憊状態を想起させる実験を行い、中枢性疲労の、運動疲労に対する影響を検討し、その神経学的基盤を明らかにする。本年度と同様、本研究実施体制の構築に必要な人材(研究協力者)として、大阪市立大学大学院・医学研究科・病院講師の石井聡と、同特任助教の山野恵美が挙げられる。彼らは、各々の役割において優れた専門知識と経験を有している
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Causes of Carryover |
脳磁図実験後に、実験結果の解釈に必要な行動実験を追加する必要が生じたためと、論文採択によって掲載料が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
脳磁図実験後に、実験結果の解釈に必要な行動実験実施し、論文採択による掲載料を支払う。
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