2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26282193
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
勢井 宏義 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (40206602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近久 幸子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00452649)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 睡眠 / 運動 / 脂質代謝 / ケトン体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケトン体代謝に焦点をあて、短時間の運動が末梢ケトン体濃度にどのような影響を及ぼし、かつ、睡眠の持続時間おおよび深度(脳波デルタパワー)をどように変化させるかを、マウスを用いて観察した。その結果、5~60分のトレッドミルを用いた強制運動は、時間依存的に血中ケトン体濃度を上昇させるとともに、運動に引き続く睡眠の深度を増大させた。血中グルコース濃度は減少せず、逆に30~60分の運動によって増大した。血中トリグリセリドは30~60分の運動によって減少した。脳内では、カテコールアミンやセロトニンなど、古典的伝達物質の各部位におけるコンテンツをHPLCを用いて定量した。カテコールアミンやセロトニンの代謝産物が、運動時間に依存して増加していた。一方、肝臓や脳におけるmRNA発現をRT-PCR法を用いて定量したが、運動終了時点からサンプリングまでの時間が短く、有意な差を見出すまでには至らなかった。しかし、肝臓において、脂質代謝やケトン産生に関わる核内受容体および酵素などのmRNAが上昇する傾向になった。さらに、ケトン体を腹腔内に投与し、睡眠への影響も観察した。現在脳波の解析中であるが、行動観察からケトン体の腹腔内投与によって睡眠が誘発されていると思われる。 今年度に得られた結果から、運動と睡眠、そして脂質代謝の間に密接な関連性があることが具体的な形で明らかとなった。しかし、ケトン体を産生している臓器の同定、運動からケトン体産生に至るシグナルの経路、さらに、睡眠の深度増大の原因がケトン体なのかいなか、ケトン体であった場合のメカニズムなど、明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
末梢のケトン体増加による睡眠への影響について、運動による効果と腹腔内投与による効果のエビデンスを出す予定であったが、後者について、解析が間に合わなかった。 また、運動による血中ケトン体増加についても、その産生臓器の特定に至っていない。この点については当初より難しいことが予想されていた。肝臓のケトン体産生に関わるmRNAあるいは蛋白発現が増加していたとしても、肝臓以外の関与を否定するものではない。肝臓でのケトン体産生を抑制する操作、あるいは、血中ケトンの脳への移動を阻害する操作を施した上での運動・睡眠実験が必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、運動に伴って増加する血中ケトン体がどの臓器由来なのかを特定する。候補は、肝臓、脳、筋である。運動させた上で、それぞれの臓器における脂質代謝・ケトン体代謝に関わる酵素などの動態を調べる。さらに、ケトン体の脳への輸送体であるMCT1の阻害薬を利用して、肝臓からのケトン体が脳に運ばれない状況下の運動・睡眠の関連性を観察する。また、運動と肝臓でのケトン体産生とが関連すると想定された場合、自律神経の肝臓枝を切断することで、肝臓への神経的シグナルを切断するなどの実験を行う。運動によって、筋からのシグナルが中枢あるいは末梢多臓器へ、運動に応答したなんらかのシグナルを出していることが充分考えられ、脳を含めた各臓器間のネットワークを解明する。
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Causes of Carryover |
運動刺激強度の設定などマウス数の少ない予備実験に時間を要し、予定していた実験全てをこなすことができなかったこと、また、それに伴い、予定していた冷凍保管庫を購入せずに実施できたことが理由として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
まず、多量のサンプル保管のため、冷凍保管庫を購入し、また、実験として、免疫染色などの蛋白質発現の組織学的検討や酵素活性の測定などに、充分な試薬を準備し詳細な検討を行う。また、脳内の微量なケトン体を定量できる方法に開発する。
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Research Products
(2 results)