2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26284011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鶴岡 賀雄 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (60180056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 明 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (00381145)
藤原 聖子 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (10338593)
市川 裕 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20223084)
高橋 原 東北大学, 文学研究科, 准教授 (30451777)
江川 純一 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (40636693)
石井 研士 國學院大學, 神道文化学部, 教授 (90176131)
池澤 優 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (90250993)
堀江 宗正 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (90338575)
伊達 聖伸 上智大学, 外国語学部, 准教授 (90550004)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宗教学 / 世俗 / 宗教 / 世俗化 / 公共 / 政治 / 国際情報交換 多国籍 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、宗教学全体を巻き込む根本的な問題として2つの課題が内外の学界において認識されている。第一に、「宗教」概念を始めとする宗教学の諸概念・理論が帯びていた西洋近代的特殊性、さらに宗教学という学的営為の政治性に対する自己反省を経て、宗教学をどう再建するかという課題がある。第二に、21 世紀に入る頃から「公共圏における宗教の役割」が盛んに論じられ始めたように、近代的な「宗教」と「世俗」の分割線がグローバル社会において揺らぎ、ポスト・セキュラーと呼ばれる状況が新たに出現しているが、これをどう捉えるかという課題である。本研究の目的は2つの課題を有機的に接合することである。すなわち、進行するポスト・セキュラー状況を単なる宗教復興とはみなさず、近代的宗教概念への反省を経た方法論によって解明し、新たに位置づけることを目指している。 平成27年度は、研究グループごとに研究成果をまとめ、英語による海外発信を活発に行った。まず、8月にドイツ・エアフルト市で開催された国際宗教学宗教史学会世界大会でパネル発表を行った。さらに、それぞれが発表原稿を論文に発展させ、Brill社から刊行されている日本宗教研究専門の国際的学術誌Journal of Religion in Japanに全論文を寄稿した。11月にはアメリカ宗教学会で発表したメンバーもいる。これらの発表・論文に共通する問題提起は、日本の現在の宗教情勢を、ポスト・セキュラー的と分類することは妥当か、あるいは、世俗化の継続・反証のどちらと見るべきかというものである。その問いに対する直接的な答えはメンバーにより異なるものになったが、いずれも経験的データ、事例により堅実な論証を図った。 以上に加え、12月からは、日本語による論文集の企画を始めた。国内外で、今、宗教に何が起こっているのかについて総合的に説明を試みる、時宜にかなった企画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目であった昨年度に比べ、今年度は研究成果のアウトプットを進めることができた。国際宗教学宗教史学会の発表準備段階では、発表内容について先に本科研メンバーで検討する研究会を行い、そこには院生・若手も多数参加し、十分な意見交換を行うことができた。本科研は、「政治・法と宗教」グループ、「医療・福祉と宗教」グループ、「宗教意識の新動向」グループに分かれて研究を行っているが、どのグループも成果を英語で発信することができた。その内容は以下の通りである。 「政治・法と宗教」グループ 「Rethinking the History of Religions in Japan from a Post-Secular Perspective」と題したパネルでの合同発表。デンマーク宗教学会会長J. Borup氏が司会・コメンテータを務めた。また、「Kingship and Religion in the Modern World」と題したパネルをノルウェーの研究者と合同で開催した。 「医療・福祉と宗教」グループ 「Transcending Borders in the Wake of Catastrophe: Religion and Spiritual Care after the 11March2011 Earthquake in Japan」と題したパネルでの合同発表。Journal of Religion in Japanの編集長で南アフリカ・ケープタウン宗教学科教授E. Porcu氏が司会・コメンテータを務めた。また、「Representing Death and Life: Transitions, Diversities and Contemporary Significance」と題したパネルを、イギリスの研究者と合同で開催した。 「宗教意識の新動向」グループ 「Comparative Spirituality: East and West」と題したパネルを、デンマーク、ドイツ、イギリスの研究者と合同で開催した。また、「Fluidity and Hybridity of Religious Innovation in Contemporary Japan」と題したパネル、「New Religions and Popular Culture」と題したパネルでそれぞれ発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
論文集による成果発表に向けて、各グループ・全体で研究発表を行い、意見交換を重ねる。論文集は、20世紀後半から2000年までの宗教情勢を日本・世界についてまとめる巻、2000年代の変化を「政治・法と宗教」「医療・福祉と宗教」「宗教意識の新動向」の区分に沿って日本・世界について分析する巻から成る。教育での活用を意識し、全体に「日本人は無宗教なのか・そうではないのか」「オウム真理教事件の後、何が変わったのか」「仏教は昔から“堕落していた”といえるか」「スピリチュアル・ブームは最近の現象か・昔からあるのか」「社会の右傾化とともに国家神道は復活しているか」「宗教法人に課税すべきか」「仏教のTVヴァラエティ番組は宗教の衰退を示すのか、公共圏への進出なのか」「世俗化は終わったのか」「イスラーム国はイスラームなのか・そうではないのか」「グローバル化は世界の宗教に多様化をもたらしたのか・一元化を起こしたのか」「宗教ナショナリズムなのか政治化した宗教なのか」「テロの原因と責任は宗教にあるのか・ないのか」「宗教は生命を尊ぶのか・尊ばないのか」「宗教と科学は対立するのか・しないのか」「社会参加型宗教は弱者の味方か・そうではないのか」といった問いを織り込み、院生からのフィードバックを得ながら練っていく予定である。 国際研究者交流、国際情報交換も引き続き活発に行う。Journal of Religion in Japanに本研究グループの論文(全体で7本の予定)が掲載される予定の特集号は、夏前に刊行される。それに対する意見を海外の日本宗教研究者から求め、研究交流を図る。その進展具合によっては、海外の研究者と同テーマで英文論文集を企画することも考えている。
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Causes of Carryover |
理由として以下の二点がある。 一点目として、国際学会参加のための旅費を確保していたが、参加予定者のなかで急遽渡欧できなくなってしまった者、また、別の資金を使用して参加可能になった者が現れたこと。 二点目として、海外の研究者を招聘する講演会を企画したが、航空会社のストライキにより来日不可能になってしまったこと。以上二点により次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会参加のための旅費は、今年度の国際学会参加のための旅費にあてる。また海外研究者招聘のための旅費及び謝金は、今年度の招聘にあてる。
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