2014 Fiscal Year Annual Research Report
マニフェスト・デスティニーの情動的効果と21世紀惑星的想像力
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26284043
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
下河辺 美知子 成蹊大学, 文学部, 教授 (20171001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
巽 孝之 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30155098)
舌津 智之 立教大学, 文学部, 教授 (40262216)
日比野 啓 成蹊大学, 文学部, 准教授 (40302830)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マニフェスト・デスティニー / 惑星思考 / モンロー・ドクトリン / 環太平洋 / 情動 |
Outline of Annual Research Achievements |
4年間のプロジェクトの初年度である平成26年度は、19世紀アメリカの領土拡張主義スローガンであるマニフェスト・デスティニー(以下「明白なる運命」)の持つ情動的効果の本質をさぐるために、アメリカ19世紀歴史の文脈と情動という概念自体の研究の両面からのアプローチで研究をおこなった。情動のレトリックが現在にいたるまで歴史をとおしてアメリカの空間的・時間的 位相をつくりだしてきたことを検証するべく研究会、学会発表、論文執筆、シンポジウムを行い、「明白なる運命」という概念が19世紀、20世紀、21世紀のアメリカおよび西半球においてどのように表れたかについてさぐった。 本年度行われた研究会および個人の研究活動は以下の通りである。 ①ワークショップ「マニフェスト・デスティニー以後の先住民ージェラルド・ヴィゼナー文学を中心に」2014年7月17日於慶應義塾大学 ②基調発表&ワークショップ「女性旅行者と地政学的想像力」2015年12月5日於成蹊大学 講師:大串尚代 発表:小泉由美子、内藤容成、阿部暁帆 ③研究発表「アメリカ演劇(史)の<明白なる運命>』講師:常山菜穂子 於成蹊大学2015年1月31日 ④研究発表「近代小説と情動あるいは風景をめぐるいくつかの思弁」2015年年2月23日於成蹊大学 講師:遠藤不比人 その他、研究代表者、研究分担者は各自「明白なる運命」というレトリックを歴史的にたどると同時に、その心理的・精神的効果がアメリカ国民の情動を操作するナラティブとしていかに機能してき たかに焦点をあて、地球という球体の上のアメリカの位置を読み直した。平成26年度の研究代表者、研究分担者4人の業績は、著書6点、論文5点、学会発表13回(招待講演含む)におよぶ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にあたる平成26年度初年度は「明白なる運命」の歴史的意味とその情動的背景を分析するという目的が設定されていた。まず情動についての先行研究を概観した上で、アメリカ国家の外交政策を検証するために使える情動研究の方法を探った。「明白なる運命」のレトリックが生み出された社会的・政治的・文化的経緯をつきとめ、それがナラティヴとして19世紀から21世紀のアメリカで変奏されていく歴史的経緯を明らかにするという目的については、情動をテーマとする別の科研プロジェクトを行っている研究者との研究会を催したりして、情動の文化史的意味を構築中である。 研究代表者および3人の研究分担者は、平成26年度に『グローバリゼションと惑星的想像力』をはじめとした著書を出版し、また、国内外での研究発表やシンポジウムでの発表を精力的におこなってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は「情動」という概念が21世紀グローバル世界においてどのような意味を持ち、それが19世紀アメリカが西半球という空間を占めたこととどのようにつながっているかを検証する。南北アメリカ大陸を環大西洋・環太平洋文化圏に置くことによる地理的想像力についてリサーチを進め、南北アメリカ大陸を、対ヨーロッパとの関係(環大西洋的連環)および対オセアニア・アジアとの関係(環太平洋的連環)の二つの空間に置き、「明白なる運命」の持つ情動的機能をさぐる。 研究代表者および三人の研究分担者による個人ベースの研究と、研究会・学会発表やシンポジウムの開催を通じての研究成果共有を行う予定。研究代表者下河辺を中心として、2013年に終了した科研基盤( B)の成果本『モンロー・ドクトリンと21世紀世界』(仮題)の出版準備にかかる。また、共著『帝国と文化』(巽)、共著『アメリカン・ルネサンス文学における情動と身体』(舌津)、『少女歌劇とレビュー』(日比野 )の出版を予定。また、2015年6月Tenth International Melville Conferenceを慶應義塾大学で開催し、日本メルヴィル学会会員として、巽(副会長)、下河辺(監事)、舌津(評議員)はこの国際学会運営にかかわる一方、「明白なる運命」という切り口からアメリカン・ルネサンス研究に再挑戦する研究発表を行う。さらに、11月にオレゴン州で行われるPAMLAで "Transpacific Literary History"というパネルを主催し、司会 (下河辺)発表(巽)を行う。研究会は年に3回行う予定。代表的メルヴィル研究者であるSamuel Otter (UC Berkeley)教授、エマソン研究者佐久間みかよ氏、メルヴィル研究者貞廣真紀氏などを招く予定。4人のメンバーがそれぞれ海外の研究機関、アーカイヴへ資料調査に出張する。
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Causes of Carryover |
平成26年度は36,380円(下河辺)、19,329円(巽)、10,423円(舌津)計66,132円が残った。次年度使用額が生じた理由としては、2015年1月に予定されていた研究会の講師が急病のため中止となり謝金の支出がなかったため、また、旅費の請求で、タクシー代が予定額より少なかったためなどである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
3人とも残額は少額であるため、平成27年度の研究費として使用する予定。なお、延期になっていた研究会は2015年5月19日に開催されることになっている。
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Research Products
(23 results)