2014 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期守護創建禅院の基礎的研究―国菩提寺と京菩提寺
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26284101
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
早島 大祐 京都女子大学, 文学部, 准教授 (10378490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
衣川 仁 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部(総科), 准教授 (10363128)
大田 壮一郎 奈良大学, 文学部, 准教授 (00613978)
小原 嘉記 中京大学, 国際教養学部, 准教授 (40609202)
山田 徹 京都大学, 文学研究科, 助教 (50612024)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 京菩提寺 / 国菩提寺 / 西山地蔵院文書 / 細川氏 / 六角氏 / 守護在京 / 大内氏 / 中世後期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は室町幕府の成立に伴って分国支配を進めた守護が分国や京都に創建した菩提寺(前者を国菩提寺、後者を京菩提寺と称する)を検討するものである。従来、守護による分国支配を論じる際、守護所が注目されてきたが、本研究では、これまで全く注目されてこなかった国菩提寺に着目し、その政治的・経済的機能、京菩提寺や中央勢力との繋がりなどの検討を通じて、守護による分国支配、引いては中世後期社会における都鄙関係について新たな知見を提示しようと試みるものである。 申請者は、これまでにも室町幕府の有力守護であった細川家の菩提寺を検討してきたが、当時の守護の菩提寺について総合的に検討していく必要がある。また右で述べたように、守護の菩提寺については未開拓の分野であるため、菩提寺に関する基礎的事実(誰の菩提を弔うか、菩提寺の創建年次・場所・住持・宗派など)を確定する作業から始める必要もある。 そこで、初年度の第一回研究会(五月一日)では、本研究の目的を伝えるとともに、研究メンバーの役割分担(誰がどの守護・史料を担当するか)を決定した。また、守護の菩提寺を確定するための作業の下準備として、『室町幕府守護職家事典』から各守護歴代当主の院号を抜き出し、一覧化した表を作成・配布した。第二回(一〇月一三日)・第三回(一二月二八日)研究会では、近江六角氏・周防大内氏の菩提寺に関する報告を実施し、その基礎的事実を確定、個別事例の蓄積が進んだ。それと並行して、菩提寺の類型・変容・移動・役割などに関して新たな論点が提起された。今後、事例の蓄積とともに、菩提寺に関する諸論点の整理が必要である。なお、八月一九日から二一日まで、九州における守護菩提寺の調査合宿を実施、有力守護大友氏や肥後菊池氏などの菩提寺を実見し、その情報を蒐集した。また第四回研究会(三月四日)では、京菩提寺の基本史料である西山地蔵院文書翻刻の校正を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究事業のたちあげにあたり、本年度は採択直後の五月一日から研究会議を行い、各分担者、協力者たちのあいだで、都合四回の研究会を開催し、研究推進のための方針を確認できた。また八月には研究分担者を中心に、調査旅行を開催することができ、そこでも菩提寺研究の可能性についてきめ細かく意見を交換することができた。 さらに第四回研究会では、【研究実績の概要】でも触れたように、京菩提寺の基本史料である西山地蔵院文書の影印・翻刻を公刊する目処がついた。この文書の公開によって、本申請事業が加速的に進むとともに、中世後期の歴史研究全体にも大きなメリットとなるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針は大きく二つある。 一つは当申請課題で目標とした、守護の分国における菩提寺の実態と守護所、および守護が経営を請けおった荘園(守護請)がいかなる有機的な連関で結びついていたかについての研究である。これについては、残る三カ年度において、一つ一つ確実に事例を積み上げて、一定の見通しをたてることにしたい。 具体的には本年度と同様に年三~四回程度の研究会の開催(五月 一〇月 一二月 三月)と八月の調査旅行の実行を通じて、研究参加者同士の理解・認識を深め、チームとして本研究課題の目標に接近していきたい。 もう一つは、京菩提寺の基本史料である西山地蔵院文書の公刊である。これについては、翻刻については、四校を現在行っており、また研究代表者が執筆する解説についても、九割の完成しているなど、本年度に、出版にあたり必要な作業はほぼ完了したので、平成二七年度中の刊行を行いたい。 今後の研究の推進方策としては、以上の点を想定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、科研採択初年度ということで、年度予定で組み込んでいた謝金支出のうち、四月中の支出がかなわなかったためである。また研究協力者の出張費も計上していたが、協力者の本務繁多のために、遂行できなかった出張が存在していたことも理由として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し分は、謝金、出張旅費、本年度の資金が大学に支払われるまでのあいだの物品費として、使用目的に即して柔軟に利用していく予定である。
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Research Products
(9 results)