2017 Fiscal Year Annual Research Report
中近世地中海史の発展的研究: グローバルな時代環境での広域的交流と全体構造
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26284116
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
亀長 洋子 学習院大学, 文学部, 教授 (40317657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 巳貴 専修大学, 商学部, 准教授 (00553687)
西村 道也 福岡大学, 経済学部, 講師 (10599814)
宮崎 和夫 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40251318)
黒田 祐我 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (50581823)
櫻井 康人 東北学院大学, 文学部, 教授 (60382652)
堀井 優 同志社大学, 文学部, 教授 (70399161)
佐藤 健太郎 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (80434372)
高田 良太 駒澤大学, 文学部, 准教授 (80632067)
澤井 一彰 関西大学, 文学部, 教授 (80635855)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地中海史 / 異文化交流 / 居留地行政 / 貨幣経済 / コンスタンティノープル【イスタンブル) |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は以下の二つの会合を実施した。 (ア)研究成果を国内に発表する公開講演会の開催 平成29年12月9日に東北学院大学ヨーロッパ文化総合研究所との共催にて公開講演会「中近世の東地中海世界における諸民族の混交」を開催した。すべてこの科研のメンバーによる報告・コメントであり、パネリストとして西村道也「ビザンツ貨をめぐる模倣と構造」、高田良太「コンスタンティノープルのヴェネツィア人: バイロの設置をめぐって」、堀井優「近世オスマン帝国下のヴェネツィア領事網」、コメンテーターとして澤井一彰「オスマン帝国支配下のイスタンブル史の立場から」が登壇し、本研究の成果を披露した。非常に多くの来場者があり、貨幣の問題や、ヴェネツィア人の対外進出などについてフロアとの活発な議論もなされた。終了後科研メンバーでの討議も行った。 (イ)トルコ人研究者の招聘研究会と研究打ち合わせ イスタンブル・グラフィックアート美術館顧問のエミネ・キュチュック氏を招聘し、平成30年3月15日に公開講演会"Traces of Venetians and Genoese in Istanbul"を実施し、3月16日は午前学習院大学、午後同志社大学、3月17日は関西大学で研究打ち合わせを行った。平成28年度にイスタンブルでのクーデターのため中止になった史資料調査に関連する報告を披露してくださり、将来実施する計画のあるシンポジウムや史資料調査の事前準備として極めて有意義であった。 また、亀長洋子が平成29年8月28日から9月6日の帰国までイタリア・ジェノヴァ国立古文書館にて史資料調査を実施し、コンスタンティノープル郊外のジェノヴァ人居留地ペラにて15世紀に作成された会計や監査の記録の残存状況を調査し、入手し、居留地で問題視された事象を発見するためにふさわしい史料であるとの認識を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年8月にイスタンブルにて開催予定であったがトルコ内でのクーデターのため中止せざるを得なかったイスタンブル大学との共同シンポジウムとトルコ内の史資料調査の代替として、同シンポジウムと調査で共同研究を進める予定であったエミネ・キュチュック氏を招聘することができ、多くの写真等を用いたイスタンブル内のヴェネツィア人・ジェノヴァ人史跡についての講演を聞くことができた。現存する史跡の状況の大枠を科研メンバーが理解でき、その関連の研究打ち合わせをすることもでき、今後のシンポジウムや共同調査の方向性を一層明確にすることができた。 また東北学院大学で行われた公開講演会では、この科研費のでの研究の大きなテーマであるコンスタンティノープル(イスタンブル)の多元性、流通、外交、異文化交流といったテーマが扱われ、改めて地域の複合性やビザンツ・イスラーム・ヨーロッパという文化圏の交錯がもたらす影響の大きさを感じることができた。仙台での開催であったが、多くの来場者と活発な質疑からは、同地の人々の地中海世界や異文化交流史への関心の高さがうかがわれ、成果公開先を地方都市にしたことが有意義であったと実感した。 亀長洋子のイタリア・ジェノヴァ国立古文書館における海外史資料調査では、コンスタンティノープルにおけるジェノヴァ人居留地研究の史料的可能性が発見され、史料的限界も含め、今後の分析視角を検討する良き素材になった。 また、2回の会合時に行われた研究打ち合わせにて今後の研究方向について話し合いがなされ、イスタンブル文化圏という発想、多宗教の混合地としての他の研究対象の可能性なども含め、次につながる研究の広がりを研究メンバーの間で共有することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、まず本科研での最終打ち合わせ会を実施する。報告書に関して、メンバー各自の掲載原稿と執筆内容の方向性等を確認し議論するための会合である。また、本研究実施終了後の共同研究について、その方向性についての意見交換も実施する。この研究企画では、多分野交流の焦点としてイスタンブル(コンスタンティノープル)に焦点をあてたが、2016年7月のトルコでのクーデターのため同地での現地の研究者とのシンポジウム開催を中止せざるを得なかったため、今後の研究計画として、改めて同地での国際シンポジウム計画、またイスタンブル文化圏という視点での研究、さらには地中海内で他に焦点となる地域を検討する機会してもこの会合は機能する。 また成果報告書を年度末に刊行する。報告書には、総括として、この5年間の本企画の活動内容の詳細を記載する。そして、本研究の二つの目的に対応する(1)各メンバーの調査および研究報告の総合による中近世地中海世界の全体構造の解明、(2)コンスタンティノープル(イスタンブル)やその文化圏の多角的検討による多元的構造の解明に関する各メンバーの個別原稿が報告書の内容の中心となる。内容としては、当初計画時から想定されている本研究の具体的なテーマであるA.紛争原因と解決手段、B. 人やものの移動、C. 統治構造と政治文化といった主題が、奴隷、貨幣、繊維製品、巡礼、居留地行政、宗教的な対立と衝突などの観点から扱われる。また平成28年度に実地された共同調査結果も貴重な内容であったゆえ、その調査報告も含む。 報告書作成については、研究代表者、研究分担者に加え、研究協力者の斎藤寛海も報告書原稿を執筆する。報告書の配布先については、西洋史研究者のみならず、東洋史分野も含め、広範な分野の歴史研究者に送付する予定である。また、広く一般にも成果を普及させるべく、出版についての準備を開始する。
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Causes of Carryover |
エミネ・キュチュック氏の公開講演会参加にさいし、一部の遠方の研究者が公務のため欠席となり、旅費・宿泊費に関する支出がが予定より少なくなった。また同氏の航空券代金が想定よりも安価であったことも一因である。また、平成30年度に作成する成果報告書に関し、長い文章の執筆を予定しているメンバーもいるため、最終年次の印刷費に余裕を持たせたいとも考えてのことである。報告書作成を念頭に置いた会合は平成30年度に1回予定しているが、必要に応じて増えることも想定しており、その折には繰り越した次年度使用額からの支出もありうる。さらに、メンバーの論考が所収された文献のメンバー内への配布を予定していたが、出版時期が遅れたためその金額が次年度使用額の中に含まれている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(35 results)