2017 Fiscal Year Annual Research Report
法廷における異文化衝突の言語分析―法文化の変容と法批判をめぐって―
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26285001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
尾崎 一郎 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (00233510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱野 亮 立教大学, 法学部, 教授 (80267385)
宇田川 幸則 名古屋大学, 大学院法学研究科, 教授 (80298835)
高橋 裕 神戸大学, 大学院法学研究科, 教授 (40282587)
池田 公博 神戸大学, 大学院法学研究科, 教授 (70302643)
堀田 秀吾 明治大学, 法学部, 教授 (70330008)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多文化主義 / 法文化 / 司法通訳 / マイノリティ / 法批判 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年8月1日に、博多にて、九州大学に短期滞在中の海外研究協力者Dimitri Vanoverbeke教授(ベルギー)を囲んで、尾崎・高橋・池田の参加のもとに全体会合を行い、最終年度へ向けての研究取りまとめについて情報交換と議論を行った。また、4月と8月末にいずれも札幌にて研究会合を行った。これらの会合を通じて、内集団と外集団を自然に区別し前者を優先する社会的動物としてのヒトの生得的な認知基盤を視野に入れた文化対立現象分析の必要性が確認されるに至った。 10月には尾崎が上智大学で開催された法文化学会において、また、12月には研究協力者の郭薇(北海道大学講師)が、Asian Law and Society Associationの年次大会(台北)において、これまでの調査、研究成果にもとづき、研究報告を行った。 さらに、平成30年3月18日に泉徳治元最高裁判事(現弁護士)にインタビューする機会を得、東京にて実施した。 他方、本プロジェクトにおいて海外の参照地点として継続的に実態調査を行ってきたベルギーにおいて、2年ほど前から法務大臣と高等司法評議会の裁量で実施されてきた陪審裁判の停止(廃止)は違憲であり直ちに再導入をするべきであるとの予期せぬ判断を平成29年12月21日に憲法裁判所が出したとの情報がVanoverbeke教授より伝えられた。この実態をただちに調査すべく準備を開始したが、同国の重罪院も高等司法評議会も唐突な違憲判決の余波で混乱を極めており当面十分な連絡がとれないことが判明したため、時間をおいて調査した上で、あらためて法廷における文化衝突をめぐる本研究の総括をすることにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
法廷における異文化衝突というテーマをめぐって、国際シンポジウムや国際学会での報告、全体研究会、実態調査を着実に積み重ね、研究取り纏めの段階に入っていたが、1つには昨年度来意識されてきた、人間集団が外集団に対して本源的に有している敵意、憎悪、排除傾向という根本問題についての、進化心理学、認知科学、言語人類学などの新領域科学の知見も取り入れながらの学際的研究、具体的には、実体規範による憎悪の可視化による緩和、文化的コンテクストに配慮したトランスレーションの実現、手続による対立感情の緩和という循環的関係にある三要素についての実証研究を実施するためのより精緻な理論枠組みと時間的・資金的余裕とが現在欠けているという問題が解決できていない。さらに、ベルギーにおける陪審制廃止違憲判決という予期せぬ激震についての実態調査も、同国の法実務の混乱ゆえに今年度内に実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで計画しながら実施ができなかった国内の裁判所における調査について、1つは札幌地裁裁判官との密接なラポールを研究協力者の郭薇が偶然確立することに成功しつつあることと、もう1つには泉徳治元最高裁判事へのインタビューに尾崎が成功したことから、さらに先へ進める可能性が増した。また、おそらく平成30年の夏頃までには、ベルギーの陪審制度をめぐる混乱もある程度落ち着くことが見込まれ、その時点で現地における聴き取り調査を実施できる予想である。これらを着実に進めた上で、全体の研究の取り纏めを行うこととしたい。
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Causes of Carryover |
平成29年度中に実施しようと考えていた国内調査について、調査に不可欠の被調査者との関係構築に長い時間がかかっており実施に至らなかった。他方で外国調査(ベルギー)も、違憲判決による混乱というドラスティックな事態に直面して、調査実施に手間取ってしまったため、未使用額が発生している。 これについて補助事業期間を延長することとし、やり残した国内調査と外国調査のための旅費、資料代、謝金等として効率的に使用するとともに、最終年度の取り纏めと研究成果の公刊へ向けて用いる予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
30年度が最終年度であるため、記入しない。
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