2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26285023
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
瀬川 信久 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10009847)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 佳幸 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00273425)
山口 斉昭 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00318320)
後藤 巻則 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (20255045)
大塚 直 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90143346)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 不法行為法 / 差止め請求 / 医療訴訟 / 消費者訴訟 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には、不法行為法制度研究会を計9回開催して研究計画を遂行した。 環境・生活基盤班(研究会3回)では、フランスの環境損害に関する議論状況の検討を通して、日本で環境損害を認める際の問題点を具体化した。原子力発電所事故による不動産損害の検討では、損害賠償額の算定方法、原賠法と民法との関係など検討課題を整理した。建材アスベスト訴訟の検討ではこれまでの共同不法行為類型における位置づけを通して共同不法行為法理を再検討した。 生命・医療班(研究会4回)では、医療現場の実態、病院における医療紛争処理の実際の報告を行い、そのうえで、医師患者関係のあり方、アメリカにおける医療の責任のあり方、医薬品副作用被害救済制度をモデルにした紛争処理や被害者救済の在り方につき検討した。 取引・市場班では、消費者法判例研究会(月1回。取引・市場班の研究分担者・研究協力者が参加)において、消費者取引の場面での不法行為法のあり方を系統的に検討した。そのほか、現在進行中の消費者契約法改正の検討を進めた。 総括・理論班(研究会2回)では研究会、古典的な過失責任とこれに対する交通安全義務、危険責任の責任法理としての特殊性を検討し、また、古典的な使用者責任と法人・事業遂行者の責任対比しつつ、それぞれの今日的な意義を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究活動による達成度は次のとおりである。環境・生活基盤班では、環境損害につき日本においてこれを認める際の問題点を整理し具体化した。また、原子力損害について、損害賠償額の算定方法、原賠法と民法との関係につき検討すべき課題を明らかにした。生命・医療班では、医師不足の中では従来の医師個人の帰責性を根拠とする責任理論に限界があること、この限界を克服するためには、システムとしての過失に基づく責任概念や、同様の視点を取り入れた紛争処理の仕組みが必要であることと、その導入に向けての課題を明らかにした。取引・市場班では、取引市場において不法行為責任が拡大する様相を整理し、その中で説明義務違反、適合性原則の位置付けを明らかにした。総括・理論班では、古典的な責任原理と現代的な責任原理の諸特徴を整理し、共同不法行為責任の諸理論も同様の観点から整理できること、これらの責任原理の違いをさらに検討することの重要性が認識された。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度には、26年度の研究の到達点を踏まえつつ、各班において次のような研究推進の方向を考えている。環境・生活基盤班では、新たな損害概念、賠償範囲など、福島原発事故が投げかけた賠償問題の分析、差止に関する知的財産法・競争法を含めた横断的分析を行い、共同不法行為についても若干扱う。生命・医療班では、26年度の研究成果を踏まえつつ、良き医療を阻害せず貢献するための法の在り方を探る視点から不法行為制度を検討し、また、高齢化社会の中で医療が直面する問題と不法行為の在り方も検討する。取引・市場班では、26年度に得た知見の上に、まず、説明義務・適合性原則を検討し、それを基点として、取引的不法行為の法理全般の検討に進む。その中で、説明義務・適合性原則をめぐる民法と消費者契約法と金融商品取引法の考え方の関係を明らかにする。総括・理論班では、各領域班の提起した問題を相互に比較検討すると同時に、古典的な責任原理と現代的な責任原理の観点から整理を試みる。また、比較法的な検討を進める。
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Causes of Carryover |
取引・市場班では、消費者取引と投資取引の判例法理とそこにおける不法行為法規範の内容が、近年実務的にも理論的にも重要になっていること、これの検討を進めるには実務法曹との連携が不可欠だと判断し、新しい試みとして「消費者取引・投資取引における不法行為責任法理」をテーマとする連続研究会を平成26年度内に開始すべく準備を進めた.しかし、参加いただく実務法曹の側での組織体制・責任体制を整えるのに時間を要し、年度内に開始することができなかった。 環境・生活基盤班では、平成26年10月~12月にフランスよりロラン・ネイレ教授(ヴェルサイユ=サン・カンタン・アン・イヴリンヌ大学)を招聘し、差止及び環境損害についての講演研究会を開催すべく準備を進めたが、教授の事情により実現することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
取引・市場班では、「消費者取引・投資取引における不法行為責任法理」をテーマとする上記の連続研究会を当面、3回程度実施することとし、その第1回を本年5月16日にを開催する(報告者・題目は、黒沼悦郎「デリバティブの投資勧誘」、川地宏行「デリバティブ取引における時価評価に関する説明義務をめぐる日独法の比較検討」)。 環境・生活基盤班では、本年12月ごろにフランスよりロラン・ネイレ教授研究者を招聘し、差止及び環境損害についての講演研究会を開催するほか、連続研究会を3回程度実施する予定である。
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Research Products
(10 results)