2014 Fiscal Year Annual Research Report
非営利法人法の再構成 ―健全な民間非営利活動の一層の促進を目指して
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26285025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐久間 毅 京都大学, 国際公共政策研究科, 教授 (80215673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 秀樹 京都大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80173392)
横山 美夏 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80200921)
橋本 佳幸 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00273425)
西内 康人 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40437182)
山下 徹哉 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (10511983)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 公益認定 / 非営利法人のガバナンス / 一般法人に対する監督 / 非営利法人の名称 / 非営利法人の会計 |
Outline of Annual Research Achievements |
非営利法人法の現状を客観的に見定めるための研究をし、主として次の成果を得た。 非営利法人に対する助言をしている星さとる氏(パブリックベネフィット研究所代表)を招いた研究会を通して、非営利法人にとり法人運営の自由度が制度改革によりむしろ低下した面があること、公益認定のハードルが高いこと、公益認定の方針・基準が行政庁により異なる現状があること、これらの問題を改善しようとする際には非営利法人、特に一般法人のガバナンスに大きな問題があること、その問題の克服は必ずしも容易でないこと等を確認した。 京都府公益認定等審議会事務局の桑谷正之氏(京都府総務部政策法務課副課長)を招いた研究会を通して、一般法人の制度について、公益目的財産額が数字上十分存在しても、財産の内容次第で公益目的支出計画の作成・実施が容易でない場合があること、一般法人の実態は様々であり外部からの監視・監督が必要であるところそのための法的手段が欠けていること、「社団法人」「財団法人」という旧来からの名称が公益性の希薄な一般法人についても公益的性格のある法人であるとの誤解を一般人に生じさせていること等を確認した。 松元暢子氏(学習院大学法学部准教授)を招いて行った研究会を通して、非営利法人、特に一般法人のガバナンスを実効化する方策を検討する必要があること、その際アメリカ法との比較検討から有力な示唆を得られる可能性があること、具体的にたとえば法人への寄付者に一定の監督権を付与することが考えられること等を確認した。 藤井秀樹氏(研究分担者)の報告による研究会を通して、非営利法人に関する会計制度も法人類型ごとに区々である現状であること、もっともその統一に向けた試みがみられること、その動きが法制度の統一の試みに参考になりうること、会計制度の適切な整備により法人のガバナンスの向上を期待しうること等を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、3年間の研究期間を基礎研究期、各論研究期、統合研究期に分けて進めることとしている。平成26年度は、このうちの基礎研究期として、本研究全体の基盤固めとして、非営利法人法の現状の客観的評価を定めるための研究を行い、実務家等を招へいして新たな非営利法人法制の実務上の意義と問題点を確認したうえで、非営利法人のガバナンスにかかる現行法の問題点を確認することとした。より具体的には、①キックオフ研究会において本研究の目的・計画を再確認する、②実務家を招へいして実務からみた新制度の問題点を把握する、③非営利法人のガバナンスにかかる法規制の問題点を整理する、ということを計画していた。①は、「研究実績の概要」欄に字数制限の関係から記していないものの、研究開始直後にこれを行っている。②③については「研究実績の概要」欄に記した通りであり、所期の目的をほぼ達したということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度および平成28年度には、今年度確認した非営利法人法制にかかる様々な問題点について、解決または改善の方策を具体的に検討していく。 平成27年度から平成28年度前期にかけて、各論研究期として、非営利法人のガバナンスの実効化をはかるための方策の検討、民間非営利活動を支援する法的枠組みの研究、比較法研究を行う予定である。 非営利法人のガバナンスの実効化をはかるための方策の検討は、法人の設立・運営に対する外部牽制の態様類型別に行う予定である。このような検討が有用であることは、「研究業績の概要」欄記載の通り、平成26年度の研究において確認することができている。 民間非営利活動を支援する法的枠組みの研究においては、公益性判断の明確化と公益推進事業を支援する法的枠組みを現行制度の枠内または延長線上で検討することに加え、公益性の希薄な民間非営利活動を支援する法人以外の法的枠組みが考えられないかも検討する。 このほか、比較法研究を行う。その際、平成26年度の研究でも有用性を確認することができたアメリカ法との比較検討に力点を置く予定である。
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Causes of Carryover |
物品費、旅費、人件費・謝金について、今年度使用額が交付申請時の記載経費額を下回っている。 このうち、物品費は、研究代表者・分担者の保有するパーソナルコンピュータ・プリンタ等に老朽化したものが複数あり、故障等のため更新の必要が生じた場合に見込まれる額を計上していたが、その更新台数が少なくて済んだことが大きな原因である。 旅費、人件費・謝金については、法人行政に精通した実務家を遠方から招へいする場合に備えて経費を計上していたが、京都府職員を招へいすることとしたことにより、旅費・謝金の支払が不要になったことが大きな原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由に述べた通り、研究代表者・分担者の保有する機器類には老朽化し、故障等の場合に研究計画の遂行に支障を生じうるものが複数あるため、本年度使用せずに済んだ額について今年度使用の必要が生ずる可能性がある。 また、本研究計画において次年度は海外調査を予定しているものの、当初申請額に比べて実際の次年度分採択額が低額となったため、この調査のための費用を確保することができないおそれがあったところ、本年度の未使用額を次年度使用額として請求することにより、当初予定どおりの調査を行うことができると考えている。
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Research Products
(7 results)