2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本の経済外交における非公式協議ネットワークへの参入過程の歴史的解明
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26285039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池内 恵 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (40390702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
御厨 貴 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00092338)
牧原 出 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00238891)
宮城 大蔵 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (50350294)
鈴木 均 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (80414077)
小宮 京 青山学院大学, 文学部, 准教授 (80451764)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 政治学 / 国際関係論 / イラン / 経済外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、対中東経済外交の推進主体である官庁および民間主体へのオーラル・ヒストリー調査を中心に、経済外交の非公式ネットワークの実態を解明する作業を行った。また、石油を中心とした中東の経済外交が行われる世界的な中心は日本でも中東諸国でもなく西欧、特に英国であることから、ロンドンを拠点にした調査も行った。 特に、主要な研究分担者が総力を挙げて行ったのは、経済産業省および総合商社の元幹部への聞き取り調査である。1970年代から80年代にかけて、日本の対イラン経済外交の軸となった、IJPC(イラン・ジャパン・ペトロケミカル)について、政策的に援助した官庁側の資料を収集するとともに、推進を行った事業主体である総合商社の元幹部への聞き取りを多く行った。 具体的な成果として、 『イラン革命と日系企業 第一冊 IJPC関係(3)-永嶋達雄氏(元三井物産)-』(日本貿易振興機構アジア経済研究所、平成28年3月)を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年目として、平成27年度の研究はおおむね順調に進展した。二年目は、中東や東南アジアに関する日本の中東・東南アジア外交を推進する実質的な主体である、総合商社の元幹部への聞き取りを多く行った。具体的な成果として、 『イラン革命と日系企業 第一冊 IJPC関係(3)-永嶋達雄氏(元三井物産)-』(日本貿易振興機構アジア経済研究所、平成28年3月)を刊行した。この資料集は、本研究プロジェクトの主要メンバー全員が、総合商社において、日本のイランとの経済関係史上、最大のプロジェクトである、IJPC(イラン・ジャパン・ペトロケミカル株式会社)に日本側の推進主体として主導した三井物産の元幹部で、1970年代末から80年代初頭にかけてこれに関わり、IJPC副社長として現地で事業を統括した永嶋達雄氏に8回の聞き取り面談を行ってまとめたものであり、日本の対イラン経済関係の背後にある財界・官界の意図や目的、人脈や態勢を当事者の視点から体系的に記録する、貴重な成果となった。また、ちょうどイラン側の事業推進主体の人物像や役割、イラン革命による体制変動の中で移り変わるイラン側の事業推進態勢や権力構造の変動もまた、実地に観察した立場から記録されており、貴重なものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、最終年度に当たり、平成26・27年度に積み重ねた聞き取り記録を整理し資料集として刊行するとともに、行政史料記録を整理して、論文の執筆・刊行に向かう。 今年度は経済外交の民間推進主体の聞き取りを進めると同時に、官庁の記録に基づいた論文や資料集の集成にも重点を置く。これまでの当研究課題の調査からは、日本の経済外交は実質的に民間主導で行われてきたという認識が官民双方であるとともに、包括的な聞き取りを行うと、官庁の側に随所で政策意図を民間の活動に伝える動きが現れてきた。公的に表明されることがない、また公式の記録に残りにくい、官庁側の経済外交の意図と推進手段を解明することが、最終年度の大きな課題となる。 また、経済外交の官庁側の推進主体は、しばしば官庁および関連団体の在外拠点を使って中東や東南アジアとの経済外交のネットワーク形成を行う。研究分担者の鈴木均は平成27年度の途中から平成28年度初頭まで英国・ロンドンを拠点に在外調査を行っており、研究代表者の池内恵もロンドンへの調査のための渡航を定期的に行って、日本の対中東経済外交のネットワークの現場を調査している。このような現地調査の成果をもとに、日本と中東の経済人脈のネットワークに関する実地調査を進め、成果を論文として刊行するのが最終年度の研究推進の手順となる。
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Causes of Carryover |
日本の対東南アジアおよび中東への通商外交についての官庁での役職経験者へのオーラル・ヒストリーが最終年度に先送りとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
日本の対東南アジアおよび中東への通商外交についての官庁の役職経験者の協力を得て、オーラル・ヒストリーあるいは個人資料の提供を得るための聞き取り調査を実施する。
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Research Products
(14 results)