2016 Fiscal Year Annual Research Report
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26285069
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
江上 雅彦 京都大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (40467395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若井 克俊 京都大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80455708)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 構造変化 / 相関 / クレジットリスク / レバレッジ比率 / 証券化プログラム / 最終通過時刻 |
Outline of Annual Research Achievements |
リーマンショック前後の資本市場の構造変化(相関の上昇)が、複数企業のデフォルト相関にどう反映されるかを探求する研究を精緻化した。マーケットに蓄積されていくショックが一定期間持続するという着想に基づくが、このショックは観測不可能であるため、モデルの工夫により構造変化前後の株式市場のデータから、ショックの大きさを推計している。本研究は"An Analysis of Simultaneous Company Defaults by the Shot Noise Process"(Egami and Kevkhishvili)としてJournal of Banking and Finance(査読付)にアクセプトされた。
銀行のレバレッジ比率を明示的にモデルに組み込み、債権証券化の前後における銀行価値の変化、金融危機を想定した大きな変動下における銀行行動を分析した。"A model for bank's asset securitization program"(Egami and Hosono)としてワーキングペーパーを公開し、査読付ジャーナルへの投稿を目指している。
企業価値がデフォルトレベルまで下がる以前に「任意のあるレベル」を最後に通過する時点の分布を求める研究を行った。確率過程の時間反転を利用し、任意のレベルを1年以内に最後に通過しデフォルトに至ってしまう確率、その最終通過時刻からデフォルトまでの時間の分布を求めることができる。資本市場のデータから構造変化を検出しつつ、従来のデフォルト確率に比し、より豊富な信用情報を提供できると期待される。"An application of time reversal to credit risk management" (Egami and Kevkhishvili)としてワーキングペーパーを公開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の課題に照らし、26~28年度において資本市場における構造変化(特に急激な変動、個別銘柄間の相関の変化)を捕捉し、効率的ポートフォリオ、クレジットリスク、不動産市場(REIT)、銀行行動等にどのように反映されているか、また変化を踏まえてどのように行動すべきかという研究を遂行してきた。今年度も上記3つの研究で一定の成果が上がったものと考えている。さらに前年度に完成した"An Irreversible Change of Correlations in the US Equities Market and Difficulties in Using the Information"(Egami, Shigeta and Wakai)についても改訂を行っている。
また課題研究遂行において、複雑なモデルの構築・展開のためマルコフ過程(拡散過程、レヴィー過程)の新しい知見を得る研究も順調に行っている。特に現在値の最大値からの乖離はファイナンスでドローダウンといわれる概念であるため、本件に関する論文 "A Direct Solution Method for Pricing Options involving Maximum Process"(Egami and Oryu)としてワーキングペーパーを公開している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っている研究の完成、および学会報告・査読付ジャーナルへの掲載を目指すとともに、引き続きモデル分析の基礎となるマルコフ過程の研究を継続して行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
モデルの工夫により、28年度に購入を予定していたクレジットリスク関係のデータベースを購入する必要がなくなったため、29年度に一部予算を繰り越し、研究のレベルアップを図ることをお認め頂いた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文執筆・完成のためのコンピュータ購入、英文校正料や投稿料の支払い、発表・打ち合わせのための旅費、参考図書や資料の購入に充当したいと考えている。
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Research Products
(4 results)