2014 Fiscal Year Annual Research Report
発達障害者の社会的排除に関するシステム論的解明と社会的包摂に向けた国際比較研究
Project/Area Number |
26285109
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田邊 浩 金沢大学, 人間科学系, 教授 (50293329)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹中 均 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90273565)
山中 浩司 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (40230510)
眞鍋 知子 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (70320025)
松田 洋介 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (80433233)
竹内 慶至 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (80599390)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 発達障害 / 自閉症 / 福祉国家 / 福祉レジーム / 社会的包摂 / 社会的排除 / 居場所 / 障害学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度,国内調査研究,海外調査研究,理論研究の3つをそれぞれ進めた. 国内における調査研究としては,当事者家族への調査を実施した.具体的には,自閉症の子どもを持つ母親20名を対象として,聞き取り調査を実施した.おもな調査内容は、診断に至るまでの過程、自閉症に対する支援内容、家庭・学校での生活状況、基本的属性、その他である.現在,データを整理して,分析を進めている最中であり,それらは来年度の継続して行う必要があるが,データの収集自体はあらかた終えることができた.また,障害のある方の「居場所」の問題を考察するために,障害のある方のためのグループホームや就労支援を行っている施設を調査した. 国外に関しては,スウェーデンのマルメ市において現地聞き取り調査を行った.調査対象としたのは,職業高校,大学病院附属の障害者リハビリセンター,自閉症特別支援学校,職業安定所,知的障害協会,発達障害のある方々が暮らすグループホーム,知的障害のある方が働いている労働現場(リサイクルショップ)の7ヶ所である.これらによって,スウェーデンにおける発達障害者のおかれた状況と,その支援の現状についておおよそ把握することができた.これらに関しては,調査の実施が予定より遅れて年度末となってしまったため,詳細な調査結果のとりまとめは,来年度の課題として残されている. 理論的な研究としては,発達障害の現代的諸問題を考察するために,障害学の検討を進めた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内での調査研究は,ほぼ予定通り遂行することができた.当事者家族の聞き取り調査を終え,障害のある人びとの居場所を検討するためのコミュニティ調査も進展した. 海外での調査研究は,実施時期が予定より大幅に遅れたものの,計画していた通りに聞き取り調査を実施することができた.データの分析は平成27年度の課題として残されることになったが,わたしたちがほぼ望んでいた通りの施設・団体等で調査を実施することができたので,計画の進捗状況としてはとくに問題があるとは考えていない.現在の状況から,27年度前半までに調査結果をまとめて論文とし,投稿することができると見込んでいる. 以上の理由により,本研究はほぼ計画どおりで,順調に進んでいると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
国内研究に関しては,順調に進展しているために,とくに計画を変更する予定はない.ほぼ計画にしたがって,当事者・当事者家族,学校,コミュニティ等において,引き続き調査研究を進めていく予定である.調査を遂行してから,早い段階で分析の作業を行い,結果をとりまとめるように心がける. 海外現地調査については,若干の計画の変更を予定している.今年度の調査により,発達障害のある人びとのおかれた状況やその社会的支援のあり方には国によってさまざまな違いがあることが予想されたので,本申請研究での研究参加者での調査の分担も再検討し,調査対象国を若干広げることを検討している.具体的には,本年度はドイツでの調査を計画していたが,イギリスおよびオーストラリアにおいても調査を実施することを検討し,その方向で進める. 理論研究に関しては,計画から大きな変更はないが,障害学の検討の必要性が高まっているので,障害学の現在までの成果を学び,その知見から発達障害がどのように捉えられるかについて重点的に検討することとする.
|
Causes of Carryover |
海外現地調査の調査地において,調査を実施する1ヶ月ほど前にテロ事件が生じたため,安全を期して調査への参加者を限定した.そのために参加を見送らざるをえない研究分担者等が出たことにより,予定していた海外出張旅費を大幅に残すことになったことが,次年度使用額が生じたもっとも大きな理由である.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
「今後の研究の推進方策」においても述べたように,海外現地調査の対象国を当初計画より拡げることを検討している.したがって,今年度の未使用金はおもに海外調査旅費に充てる予定である.また,今年度に実施したスウェーデン調査において多くの資料を収集したので,その資料整理を学生に協力してもらい,謝金を支払うこととするが,それにも未使用金を使用する. 国内調査では,当事者家族調査の調査自体はほぼ終わったものの,データ整理の作業は残されているので,その作業のための謝金としても今年度未使用金を使用する.その他,大きな使用用途としては,聞き取り調査の音声記録データを業者に依頼して反訳する.そのための費用にも未使用金を充てる予定である. 以上が,次年度の主とした研究費の使用計画である.
|
Research Products
(5 results)