2016 Fiscal Year Annual Research Report
「部落」対策事業として始まった大阪府方面委員制度の全国化とその限界についての研究
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26285144
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Research Institution | 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術 |
Principal Investigator |
飯田 直樹 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、, その他部局等, 学芸員 (10332404)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 方面委員 / 大阪 / 警察 / 社会事業 / 部落 / 供養施米 / 作善 / 勧進相撲 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主として大阪府公文書館が所蔵する『方面委員一件書類』を検討し、『書類』に含まれている文書が、①大阪府方面委員幹事文書(これが『書類』の約9割を占める)、②大阪府救済課(社会課)文書、③その他に分類できることを確認した。 特に注目すべきは、方面委員を設置した大阪府救済課ではなく、職務内容・権限などの規定がない方面委員幹事宛に、各方面からの活動報告がなされる点や、委員の更迭や採用などの人事通知が幹事からなされることなどが確認された点である。これらの諸事実は、大阪府救済課に貧困者救済の義務が原理的にはないことの文書的な表現と考えられる。 当然、大阪府からの公的な救済資金は極めて限定されており、そのようななかで方面委員達が資金的に依拠していたものの一つとして、様々な主体からの寄付金があったことも『書類』から確認した。特に、供養施米という死亡者を供養するための作善(さぜん)という宗教的な行為の一環としてなされる供養施米が多く、そのなかには相撲興行、すなわち前近代以来の勧進相撲を伴うものがあったことも判明した。 なお、今年度は、これまでの研究成果の一部を大阪歴史博物館の特集展示「近代大阪と名望家」(2017年3月1日から4月24日まで)として公表した。難波第一方面の委員であった田中半治郎と西野田第一方面の常務委員であった池永恒太郎の家に残された資料を紹介した。田中の場合は、自らの活動記録を克明に記した方面委員手帳を残したが、池永はそのような記録を残さなかった。この違いは、何によって規定されているのか、今後の検討課題として明記しておきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大阪歴史博物館での特集展示「近代大阪と名望家」(2017年3月1日から4月24日まで)は、新聞紙面において「地味な展示だが…好企画」(『朝日新聞』2017年3月8日付け夕刊)などと評価されており、研究成果の市民への社会的還元という点では一定の成果を得ることがてきたと考える。 ただし、今年度新たに発見した諸事実については、研究論文として公開することができていないので、その点については来年度以降の課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度発見した諸事実をまとめた研究論文を公開するとともに、大阪府以外の方面委員制度や類似制度の歴史を検討するとともに、その発展過程における大阪府方面委員制度の影響について検討するとともに、制度間の比較などを行っていきたいと考えている。
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Research Products
(5 results)