2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26287015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹井 義次 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (00212019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神本 晋吾 京都大学, 数理解析研究所, 研究員 (10636260)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 完全WKB解析 / 可積分系 / パンルベ方程式 / インスタントン型形式解 / ストークス幾何 / 多重総和法 / 国際情報交換 / オーストラリア:フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 本年度はまず、2変数の線型完全積分可能系に対する廣瀬の結果の非線型版、すなわち、4階のII型パンルベ方程式に対応する2変数退化ガルニエ系が変わり点の交差現象が起きる点の近くで(4階のI型パンルベ方程式に対応する)最も退化したガルニエ系へ変換できるかどうかという問題に関して、これまで得られた知見を報文にまとめた(RIMS Kokyuroku Bessatsu, B52(2014), 301-316)。最終結果の証明に向けて、これまでの議論の整理ができたという意味で大きな一歩となった。
(2) 昨年度、交付申請書を作成している段階では思いもよらなかった離散パンルベ方程式の漸近解の構造に関する新たな研究の展開が、N. Joshi氏(シドニー大学、豪)と共同研究を開始する中でもたらされた。例えば、離散パンルベ方程式に対しても完全WKB解析の視点からのアプローチが可能であり、高階の常微分方程式と同様に仮想的変わり点や新しいストークス曲線も含んだ形でそのストークス幾何が定義できる。さらに、離散パンルベ方程式を通常の微分パンルベ方程式と連立させて一つの可積分系として捉えることにより、そうした(新しい)ストークス曲線上でのストークス現象についても明示的な解析が可能になる新たな議論の方向性が見えてきた。まだ定理という形にまとまった結果は得られていないものの、離散パンルベ方程式も含めて一つの可積分系として扱うという視点は本研究の核心に触れるものであり、本研究の今後の展開にも大きな影響を持つものと確信している。
(3) 本研究の研究目的や上記(2)の進展と密接に関連する仮想的変わり点に関して、研究協力者の河合隆裕氏(京都大学)、本多尚文氏(北海道大学)と協力して、英文の解説書 "Virtual Turning Points" を執筆した。(Springer 社より近刊予定。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
離散パンルベ方程式の漸近解の構造に関する新たな研究の方向性が得られたという面では、少なくとも心理的には研究は大いに(つまり、当初の計画以上に)進展したと考えている。ただ、N. Joshi氏との共同研究に基づくこの新たな研究の展開に時間が取られ、当初の計画であった「変わり点の交差」が起きる点での4階II型パンルベ方程式に対応する2変数退化ガルニエ系から(4階I型パンルベ方程式に対応する)最も退化したガルニエ系へのWKB解析的な変換の構成については、残念ながら完全な証明を得るには至らなかった。この面では研究の進展は多少遅れていると言った方が適当かも知れず、両者を総合して評価すれば、「研究はおおむね順調に進展している」という判断が最も適当であろうと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた離散パンルベ方程式の漸近解の構造に関する新たな研究の方向性は、通常のパンルベ方程式のみならず離散パンルベ方程式も含めて一つの大きな可積分系として捉えるという視点が重要であり、その意味で本研究の問題意識とも密接な関係を持っている。その意味では、本来の研究目的に沿った研究と並行して、この新たな方向性をもった離散パンルベ方程式の漸近解の構造に対する研究を同時に進めることが、本研究にとっても有益であると考える。 今後は、「変わり点の交差」という現象を中心とした当初の研究計画に沿う研究に加えて、この新たな離散パンルベ方程式の漸近解に対する研究を同時並行的に進め、両者の有機的な結び付きを図って行きたい。特に後者の研究の推進のため、具体的な方策としては、共同研究者である N. Joshi氏と相互訪問等により密接な連絡を取り合い、さらに連携研究者の小池達也氏(神戸大学)、数理解析系大学院生の佐々木真二君等の協力を得ながら、コンピュータを用いた離散パンルベ方程式のストークス曲線の解析等に重点的に取り組んで行きたい。
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