2016 Fiscal Year Annual Research Report
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26287023
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂上 貴之 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10303603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 剛 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20346076)
柴山 允瑠 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (40467444)
前川 泰則 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70507954)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 応用数学 / 流体力学 / 関数方程式論 / 数理物理 / 統計力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に基づき研究を進め,散逸的弱解を通じた乱流現象の理解に進展があった.(P1) 一般化DeGregorio方程式の解の示す乱流統計則について,Lpノルムの保存則が成り立つ場合を調べた.昨年度に得られたL2ノルム保存の場合と同様,エネルギースペクトルがカスケードする慣性領域が形成されること,その傾きが外力をランダム外力から定常外力に変えたときに得られる定常解のスペクトルとよい一致を見せることなどが明らかになった.保存量の違いは慣性領域の傾きの違いとして現れ,pが無限大すなわち渦成長項がゼロになるとき,ある一定の値に収束することも示唆された.(P2) オイラーα方程式の三点測度初期値に対するα点渦の衝突がもたらすエンストロフィーの特異散逸解の形成を,オイラーα方程式一般化して得られるEuler-Poincare系に拡張した.その結果,オイラーαを含むより一般の流れを平滑化する関数クラスに対しても同じエンストロフィー散逸渦衝突解が構成できることが証明できた.このことは二次元乱流のエネルギーカスケードエンストロフィー散逸を引きおこすメカニズムとしての渦衝突の普遍性を強く示唆する数学的結果である.オイラーα点渦系で進めていた四点以上衝突の研究は数値的にはエンストロフィー散逸が見られるものの,点渦の強さによってその挙動が大きくことなることが示唆された. また,今年度は多くの成果について研究論文が発表された.招待講演も多数行った.本経費によりアメリカオーランドで7月に開催されたAIMS ConferenceでMini-symposiumを,9月に帯広での国際研究集会を,1月に名古屋で国際研究集会を企画し,研究成果の発表や共同研究なども活発に行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績で記述したように(P1)と(P2)のそれぞれの研究が順調に進んでいる.またその成果も次々と研究論文や招待講演として国際的な場で発表されている.それにとどまらず,この成果をさらに発展させるため,流体現象の基盤的研究が進展している.(P1)に関連して,この知見を壁乱流のようなものに拡張できるかを検討するための予備的研究として前川准教授のプランドル方程式の研究が進んでいる.また,(P2)に関連して点渦系のトーラスといった多様体への拡張も試みている.特に点渦が存在する場が二次元平面の場合でなく,球面やトーラスといった多様体の上にある場合の点渦力学の基礎方程式の導出を行い,曲率や種数といった幾何構造の違いこうした特異散逸に与える影響について調べる手がかりが構築されつつある.また,それらの点渦解とナヴィエストークス乱流の関係を調べるためにドイツの研究者と共同研究が開始された.さらにα渦層に関連して渦層の不安定化による特異散逸の研究に着手するためカナダの研究者との共同研究が始まるなど,国際的な共同研究に発展が進んでいる.以上の理由から当初の計画を大幅に超え,新しい研究テーマが見出されるなど,想定以上に順調に研究が経過していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として,研究成果の論文としての投稿,研究集会での発表を積極的に行う.海外から散逸的弱解の研究者の招へいなども検討する. (P1)については,Lpノルムを保存するDeGregorio乱流の統計則の特徴付けについて,その成果を論文として発表する.今年度はこの研究をさらにすすめて,本統計則を生成する仕組みとして明らかになった定常外力下の特異定常解まわりに,ランダム外力が形成する自己相似的な軌道群の構造を理解していく.また,別の角度からの研究にも取り組む.例えば時系列解析や離散セルオートマトンを利用するなど様々な数理的手法で理解できないかどうか検討を加える.また,エネルギースペクトルに見られるカスケード形成を非線型偏微分方程式の散逸的弱解としてどのようにして特徴づけるかについて,特にDuchonとRobertによる散逸的弱解と同様の検討を行う. (P2)については,Euler-Poincare(EP)モデルとして一般化が行われたことを契機に,これを用いたより一般的な多体点渦モデルおよび渦層モデルへの適用を考える.αモデルで計算されていた四体衝突問題がEPモデルでも確認されるかどうかを調べる.昨年度までの結果は,これまでに知られた点渦解とEP点渦解に本質的な違いがあることを示唆しており,EP点渦系のオイラー方程式の弱解近似の問題についても検討を加える. また昨年度に新しい展開が見えつつある壁乱流や多様体の上の乱流などにおける散逸的弱解の構造との比較をするための基礎研究を継続的に行い,本計画終了後の新しい研究テーマとして発展させることを目指す.
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Causes of Carryover |
今年度開催した帯広での国際研究集会の経費について,外国からの参加者の旅費負担が予定を大幅に下回ったため昨年度の残額分がそのまま来年度に繰り越されることとなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は研究成果の発表や研究集会のオーガナイズなどに充てることで有効に活用していきたい.今年度は研究代表者が所属機関の専攻長を務めており海外出張は難しいが,海外からの研究者招へいの経費に利用したいと考えている.
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Research Products
(19 results)