2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26287027
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
秋山 正幸 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50425401)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 赤外線天文学 / 補償光学 / 波面測定 / トモグラフィー推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は地上大型望遠鏡の補償光学装置として、多天体の同時補償観測を実現するトモグラフィー多天体補償光学の実証と性能評価を行うことが目的である。その中で特にトモグラフィー推定の適用視野の拡大を目的とした、複数の時間ステップの測定量を用いる複タイムステップ-トモグラフィー法を我々は提案している。今年度は、すばる望遠鏡への持込み装置 RAVEN を用いて、多天体補償光学の実証観測を行った。特に複タイムステップトモグラフィー法を RAVEN の制御計算機に実装し、実験室での光学シミュレーションでの性能評価および実際の天体を用いた性能評価を行った。この結果、実験室での光学シミュレーションでは計算機上でのシミュレーションから予想される性能がほぼ再現され、複タイムステップトモグラフィーが有効に機能することが分かった。一方で実際の天体の観測においては、古典的なトモグラフィー法による多天体補償光学がうまく機能することは確認できたが、複タイムステップトモグラフィー法に切り替えた場合でも予想されるほどの性能の改善が見られなかった。この結果は、瞳面を移動するように動く波面揺らぎ成分だけではなく、望遠鏡ドーム内の揺らぎ成分のように移動の動きを持たない成分の寄与が大きく、この成分をアルゴリズム内に取り入れて評価を行うことが重要であることを示唆する。今後は試験観測で得られたデータのオフラインでの解析により、性能向上についての検討を行う。これまでに得られた複タイムステップトモグラフィー法の計算機上でのシミュレーションおよび多天体補償光学系の実証装置RAVENのキャリブレーションユニットを用いた光学実験の結果を取りまとめて 査読論文として発表した。これまでにない新しく有望な手法として支持され、さらに査読過程においては解析計算での性能評価を進め、計算機でのシミュレーションの結果と整合する評価が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の申請の予定通り、平成27年度にすばる望遠鏡への持込み装置 RAVEN を用いて、実際の天体を用いた試験観測を行うことが出来た。さらに新しいアルゴリズムである複タイムステップ-トモグラフィー法を RAVEN の制御ソフトウェアに実装し、古典的なアルゴリズムと新しいアルゴリズムを用いた場合の性能比較を行うことが出来た。さらに、試験解析において得られた波面センサーのデータをオフラインで解析することにより、性能向上に向けたポイントも判明しつつある。当初の計画にはない課題も見つかってきたが、それの改善に向けた性能評価も進展しており、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる平成28年度は、すばる望遠鏡での試験観測で得られた波面センサーのデータをオフラインで解析することにより、複タイムステップ-トモグラフィー推定法の性能向上を図るうえでの改善点を探る。特に、望遠鏡ドーム内で生じる揺らぎのように移動しない成分を取り入れて推定することが必要であると考えている。すばる望遠鏡での実際の観測結果に基づいて、次世代30m地上大型望遠鏡に取り入れた場合の性能評価を完成させ、地上大型望遠鏡の装置提案への基礎として取りまとめる。
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Causes of Carryover |
購入予定であったファイバーコネクターの納期が想定以上にかかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ファイバーコネクターを購入する。
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Research Products
(3 results)