2016 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of the production method of highly polarized 3He gas for the Hyperpolarized 3He-MRI
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26287050
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Research Institution | Kobe Tokiwa University |
Principal Investigator |
田中 正義 神戸常盤大学, 保健科学部, その他 (70071397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 国寛 神戸常盤大学, 保健科学部, 教授 (00027070)
藤原 守 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (00030031)
太田 岳史 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (20727408)
牧野 誠司 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70222289)
與曽井 優 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (80183995)
藤村 寿子 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (90378589)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポメランチュク冷却 / 高速融解法 / 常温超偏極3Heガス / 無冷媒希釈冷凍機 / 常温冷媒ガス循環系 / 磁気結合型ロータリポンプ / 59Coゼロ磁場NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度研究実績の概要は以下の通りである。 過去2年間、本研究テーマを追求してきて、本年度はその最終年である。本年度のゴールは、オランダ・ライデン大学名誉教授であるゲオルギオ・フロサティの指導の下で、設計、製作、改良したメンブレン型ポメランチュークセルを使って、ポメランチュク冷却を達成し、超偏極固体(液体)3Heを生成し、それに続く高速融解(Rapid melting)法による減偏極を抑えた常温超偏極3Heガス生成の実証であった。本研究の進行中、基幹装置の一つである無冷媒希釈冷凍機の冷凍性能が劣化した結果、希釈モードに入る条件(3He分留器[Still]温度<0.7 K)を満たさず、1K以下の低温が再現されなくなった。無冷媒希釈冷凍機の冷凍性能回復は最も優先度の高い課題であり、今年度の中心課題となった。無冷媒希釈冷凍機性能劣化の原因を徹底的に探った結果、常温冷媒ガス(3He,4He)循環系の不具合と冷媒ガスコンプレッサーオイル蒸気吐出が循環ラインのガス流量を減少させたことが明らかになった。更に、詳細に原因を追究する過程で、冷媒ガス循環に用いていたロータリポンプの破損が起こった。これは、冷媒ガス循環系に過度の圧力が加わった(1.2気圧以上)ため、ロータリポンプの回転軸の真空シールが破裂して、回転負荷がかかり、モータが焼き切れたものと思われる。この修復のため、新たにドイツ・プファイファ製の回転軸の真空シール不要の磁気結合型のロータリポンプを導入した。また、ロータリーポンプのオイルとしては、高温に強く、化学変化に対して安定なフォンブリンオイルを用いた。本年度年度末にロータリポンプが入荷し、組み立て、取り付け、調整を完成した。 これに並行して、NMR装置の整備を行った。本来17 TでのNMRを可能にするものであったので、システムチェックのため59Coのゼロ磁場NMRを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究が遅れているのは、主として以下の理由からである。 (理由) 希釈冷凍機(DRS2500)と17 T超電導ソレノイドコイルは、本研究の主要実験装置であるが、この主要実験装置は本来偏極HD標的の開発で使われており、我々は空き時間を利用して借用してきた。しかし、ここ数年偏極HD標的開発はSPring8での実験準備が進み、我々の研究開発で使う時間が取れなかった。更に、我々が開発してきたメンブレン型ポメランチュクセルは3Heを高圧(34気圧)にして冷却すると、破損する恐れがあり、DRS2500にいきなり装着して使うと失敗する場合が多かった。以上の理由で、冷媒として液体ヘリウムを使わない低ランニングコストの無冷媒希釈冷凍機(Kobe10μ)を導入して予備実験を行うことにした。大阪市大理学部の低温物理の協力でKobe10μの最適化を行い、150 mTの低温化に成功したが、その後の開発でKobe10μに多くの不具合が生じ、1 K以下にならなくなった。そのため多くの労力がKobe10μの性能復帰に注がれることになった。更に、Kobe10μの密閉冷媒ガス循環系のロータリポンプの回転軸の真空シールに過大な冷媒ガス圧力がかかり、破損し空気の侵入を許してしまい、Kobe10μに重大な損傷を与えてしまった。目下Kobe10μのロータリポンプを密閉性の高いものに代え、Kobe10μ性能劣化の原因を探っている。現在のところロータリポンプの出力側に配置されている小型オイルコンプレッサー(ジュールトムソン管用の加圧器)のオイル蒸気の下流(特にチャコールトラップ)への拡散により冷媒ガス循環系の目詰まりを起こして冷媒ガスの流量が減少していることが確認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は希釈冷凍機(DRS2500)使用に向け、その前段階として液体ヘリウム冷媒なしの無冷媒希釈冷凍機(Kobe10μ)による開発を昨年度から開始した。しかし、その開発は、Kobe10μの不具合から遅れており、1年間の研究延長を申請してその許可を得ている。 延長した1年間の最重要課題は、無冷媒希釈冷凍機(Kobe10μ)の性能回復である。ロータリポンプをより密閉性が高く、回転軸の真空シールが不要な磁気結合型ロータリポンプを導入した。また、ロータリオイルとしては、化学的に安定な高温にも耐えるフォンブリンオイルを用いた。無冷媒希釈冷凍機(Kobe10μ)全系の不具合を詳細にチェックし改善する。特に冷媒ガス循環系のコンプレッサオイルのチャコールトラップへの漏えいによる冷媒ガス流量減少による性能劣化が深刻であったので、改善を行う。 無冷媒希釈冷凍機(Kobe10μ)の性能が回復した時点で、メンブレン型ポメランチュクセルをKobe10μの混合室(Mixing chamber)に取り付け、50 mK程度の温度を実現し、超偏極固体(液体)3Heを生成し、高速融解(Rapid melting)法により、減偏極を防ぎつつ、常温の超偏極3Heガス生成を試みる。更に、生成した超偏極3Heガスの超偏極度が最大になる条件、即ち、取り出すガス流量、偏極保持用のガイディング磁場の形状等の最適化を調べる。この一連の開発では、本研究の初期で製作した、PXI, Labviewによる、デジタルNMR装置を使いNMR法と新たに購入予定のアナログ型パルスモードNMRを偏極度即手に用いる予定である。残念ながら、最終目標であるDRS2500 + 17 T ソレノイドコイルを用いた実験の次年度完了は時間的に困難と思われる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由: 本研究の進行中、基幹装置の一つである無冷媒希釈冷凍機(Kobe10μ)の冷凍性能が劣化した結果、希釈モードに入る条件(スティル〔Still〕温度<0.7 K)を満たさず、1K以下の低温が実現されなくなった。その結果、メンブレン型ポメランチュークセルによる冷却達成による超偏極固体(液体)3He生成とそれに続く高速融解(Rapid melting)法による減偏極を抑えた常温超偏極3Heガス生成等の実証が困難になった。Kobe10μ劣化の原因を徹底的に探ったが、常温冷媒ガス(3He,4He)循環系の不具合と冷媒ガスコンプレッサーオイル蒸気吐出が循環ラインのガス流量を減少させたことが明らかにされた。 使用計画: 本年度でKobe10μの性能回復を目指し、次年度は、繰り越した予算を常温超偏極3Heガス生成に充てる予定であるが、Kobe10μの性能回復がなければ、本研究計画の遂行は不可能なので、本年度中にKobe10μ性能回復がなければ、次年度繰り越し予算の一部をKobe10μ性能回復に充てざるを得ない。
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