2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26287084
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
池上 弘樹 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 専任研究員 (70313161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石黒 亮輔 日本女子大学, 理学部, 准教授 (40433312)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 巨視的量子現象 / 超流動ヘリウム3 / クーパー対 / 超低温 |
Outline of Annual Research Achievements |
超流動などの巨視的量子現象では、熱ゆらぎに埋もれてしまうような微小な相互作用でも、マクロな数の粒子の凝縮により増幅され、巨視的な現象として観測されうることがある。そのような例として、Leggettは、超流動ヘリウム3のA相において、ヘリウム3原子の内部の電子密度の偏りによりクーパー対が磁気モーメントを持つことにより磁場とl vectorとの間に微弱な相互作用が生じ、それがマクロな性質に影響を及ぼすと提唱している。この現象の実験的検証を行うために、実験セル作製し冷凍機にマウントして実験に入ろうとしたところ、超低温高磁場冷凍機に低温リークがあり冷却ができないことが判明した。超低温高磁場冷凍機は大型であり、またリークが1K以下の低温でのみ出現するため、リーク部分の特定に非常に時間がかかり、多くのエネルギーを注いだ。一方で、これと並行して、微小電流を高感度で測定する測定系の整備を行った。 それと並行しえて、3He-4He混合液上の電子の移動度測定を行った。この系では、混合液の表面にコヒーレンス長程度の厚さの3He薄膜を作る事が可能である。この3He薄膜は、上下の面がきれいな表面であるため、l vectorのドメイン壁などの欠陥が生成しにくく、明確な実験が可能な系だと考えられる。そのため、クーパー対の軌道角運動量と磁場との間の微弱相互作用の存在を検証するための理想的な実験系といえる。この系で微弱相互作用の存在を検証するための第一歩として、3He-4He混合液上の電子の移動度測定を行った。観測された移動度は、100 mK以上の高温では混合液の粘性で決まり、それより低温では混合液中の3He準粒子の散乱で決まっていることが明らかになった。詳細な解析により、3He準粒子は表面で3He表面状態との間で異常な散乱を行うことにより、鏡面散乱よりも高い移動度を示すという異常な現象が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
超低温高磁場冷凍機にあり、その原因の特定および修理に時間がかかった。リークは1Kポットのスーパーリーク、あるいは4Kプレート付近の断熱真空管のリークである。超低温高磁場冷凍機は大型であり、またリークが1K以下の低温でのみ出現するため、リーク部分の特定に非常に時間がかかった。そのため研究の進捗状況は当初の予定より遅れ気味である。 一方で、3He-4He混合液上の電子の移動度測定が可能となり、理論との比較から、移動度には粘性領域とバリスティック領域があることが明らかになった。バリスティック領域では、移動度は混合液中の3He準粒子の表面での散乱で決まる。詳細な解析により、3He準粒子は表面に存在するで3He表面状態との間で異常な散乱を行うことにより、鏡面散乱よりも高い移動度を示すという異常な現象が明らかになった。現在、この実験結果を論文にまとめている。3He-4He混合液上の表面電荷を用いた実験が可能になったことは、混合液の表面の3He薄膜を舞台としたクーパー対の軌道角運動量と磁場との間の微弱相互作用の検証するための大きな前進である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築した低雑音測定系を冷凍機シールドルームに持ち込み、その性能チェックを行う。製作した実験セルで高磁場中でのl vectorの向きの出現確率の測定を行う。14Tまでの高磁場中でのl ectorの向きの出現確率を実験的に決定するために、冷却測定を多数回繰り返す。また磁場の大きさ・向きを変えて測定を繰り返し、磁場とl vectorの間の微弱相互作用が存在することを確実にする。高磁場中でのみ出現する超流動ヘリウム3-A1相は、非ユニタリーなユニークな超流動相である。このA1相においても、固有マグナスが働くと予想されているため、上記の測定に加えA1相における固有マグナス力の観測も試み、またクーパー対の軌道角運動量と磁場の相互作用の有無も検証する。 また、3He-4He混合液上の電子の移動度の異常な散乱の実験結果を早期に論文にまとめ出版する。同時に、国際会議等で発表を行い、成果を世界に向けて発信する。さらに、3He-4He混合液上の3He薄膜を舞台として、クーパー対の軌道角運動量と磁場の相互作用の検証することにも挑む。この系で固有マグナス力を測定することによりl vectorの向きを決定可能な実験系を構築する。そのために、まず、混合液上の3He薄膜中にイオンを蓄える技術を開発し、その輸送特性を観測する測定系を構築する。
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Causes of Carryover |
超流動3Heにおける軌道角運動量と磁場の微弱相互作用の巨視的増幅の実験的検証を行うための超低温高磁場冷凍機に低温リークがあり、それの修理に時間がかかった。そのため研究に遅れが生じた。したがって平成29年度も継続して実験を行う必要がある。それと並行して、3He-4He混合液上の電子の移動度の異常な散乱の実験結果を早期に論文にまとめ出版し、国際会議等で発表を行い成果を世界へ向けて発信する必要がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、研究費は主に、測定に必要な電気回路パーツなどの消耗品の購入、3He-4He混合液上の電子の移動度に関する論文の出版費用、国際会議での発表における旅費等に使用する。
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Research Products
(9 results)