2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26287094
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中林 孝和 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (30311195)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電場効果 / Step-Scan FT-IR / Stark効果 / 振動スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度製作したステップ・スキャン型電場変調赤外吸収システムと液体電場セルについて、10-6オーダーの微小変化の検出ができるように装置の最適化を行った。さらに、基本的な分子の液体状態における電場変調赤外吸収スペクトルの測定に成功した。オレイン酸については、C=O伸縮振動バンドとC-H伸縮バンドの電場効果の測定に成功した。得られた電場変調赤外吸収スペクトルは、Liptayの式に従い赤外吸収スペクトルのゼロ次、一次、二次微分の線形結合によって再現することができ、各微分形の係数から、官能基の電場による配向変化、振動励起に伴う分子分極率および双極子モーメントの変化について検討した。振動励起に伴う双極子モーメントの変化(Du)は、振動バンドの非調和性に由来するが、C=O伸縮振動バンドについては、報告されている固体中の分子のDuよりも小さな値であった。グリセリンについては、OH伸縮振動バンドの電場効果の観測に成功した。オレイン酸と同様にLiptayの式で再現し、Duの値はC=O伸縮バンドよりも大きな値であった。OH基の高い非調和性を反映していると考えられる。また、スペクトル分解を行わずにブロードなOH伸縮振動バンドの電場効果を再現できたことから、電場効果は水素結合の大きさに顕著に依存しないと考えられる。また同じ振動分光法であるラマン分光法を用いた基本的分子の電場効果を観測するシステムを製作し、タンパク質微結晶のラマンスペクトルの電場変化を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
製作したシステムを用いて、外部電場による10-6の赤外吸収の変化を測定することができた。この微小変化検出技術を用いて、生体分子の電場変化および時間分解測定に拡張を行うことができる。また赤外のみではなく、同じ振動分光法であるラマン分光法でもタンパク質微結晶のラマンバンドの電場変化が観測され、最終年度ではあわせて検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、様々な系への応用と現有のナノ秒パルス電場発生装置を用いた時間分解測定を行う。測定時間内での溶媒の揮発が信号雑音比を低下させており,密閉した高電場印加溶液セルの改良を合わせて進めて行く。赤外用の偏光子と回転ステージの導入も行っており、角度依存性の測定も行う。またラマン分光法でもタンパク質のスペクトル変化が観測され,詳細を検討するとともに、赤外分光法の電場効果との比較を行う。高電場存在下でのポリペプチドの構造変化の理論計算も引き続き検討する予定である.
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