2016 Fiscal Year Annual Research Report
流星・火球の高精度分光観測と軌道決定による隕石の母天体小惑星探査
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26287106
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
阿部 新助 日本大学, 理工学部, 准教授 (40419487)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 流星 / 小惑星 / 宇宙科学 / 自然現象観測 / 惑星起源・進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
小惑星や彗星から放出されたmm~cmサイズの塵(メテオロイド)が,秒速数10kmの超高速で地球大気に突入する際の流星発光を分光観測することにより主要構成元素の組成比が分かる。本研究では,高感度・高解像度カメラと分光器を組み合わせた全天候型の分光・撮像自動観測システムを新規開発し,複数地点から常時観測を行い,年間に数百個程度の高品質の流星・火球スペクトルと軌道を得ていく。地球に到来するメテオロイドの惑星間空間での起源と分布を,物質科学と軌道力学の観点から統計的に初めて把握し,小惑星・彗星などの母天体と地球に衝突する隕石・惑星間塵との関連を解明することが本研究の目的である。また,流星・火球発光の物理化学素過程を理解するための人工流星プラズマ実験や,火球母天体の物理情報を得るための小惑星分光観測にも取り組み,幅広いアプローチから太陽系小天体の起源と進化について探求する。 火球の大気中でのアブレーション過程を分光学的に理解する目的で,室内での流星アブレーション実験を実施している。隕石やそれらを模擬した供試体を製作し,JAXA/ISAS惑星大気突入環境模擬装置(アーク加熱風洞)を利用して真空チャンバ内に流星アブレーション・プラズマを発生させ,紫外-可視-近赤外の分光計測を行う手法を確立した。加熱率を制御した本実験により,秒速10数km程度の地球大気突入体の発光の時間変化を詳細に調べ,発光効率などの流星発光物理で重要なパラメータの決定を行うことに成功している。また,本実験で得られたスペクトルデータは,流星・火球の高解像度分光スペクトルを理解する上で重要な比較データとなる。また,原子・分子スペクトルのモデル計算を可能にしたことで,実験や観測で得られるデータからプラズマ温度や組成比などの物理量を正確に導出し,成果を出していく準備を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,隕石やそれらを模擬した供試体を複数製作し,JAXA/ISAS惑星大気突入環境模擬装置(アーク加熱風洞)を利用して真空チャンバー内に流星アブレーション・プラズマを発生させ,紫外-可視-近赤外(波長200-1000nm)の分光計測と高速度カメラを用いた実験を実施した。火球の地球大気中でのアブレーション過程を分光学的に理解する目的で独自に確立した人工流星アブレーション実験の手法を用いて,流星アブレーション中の「質量減少率 dm/dt」と「発光効率 η」を導出することに初めて成功した。最大加熱率を実際の火球と合わせて実験を行うことで,秒速10数km程度の隕石火球を模擬した発光の時間変化と発光効率を詳細に調べた成果については,現在論文にまとめている。一方,平成27年度に開発を行った超高感度・超高解像度4Kカメラと平成28年度に新たに制作した分光器システムを用いて,統計的な議論を行えるように高解像度流星・火球分光(波長380-900nm)データ取得を引き続き行い,流星分光スペクトルと,室内アブレーション実験の結果やモデル計算と比較しながら,低速流星や火球スペクトルの物理素過程についての成果をまとめていく段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,隕石やそれらを模擬した供試体を複数製作し,JAXA/ISAS惑星大気突入環境模擬装置(アーク加熱風洞)を利用して真空チャンバー内に流星アブレーション・プラズマを発生させ,紫外-可視-近赤外の分光計測と高速度カメラを用いた実験を引き続き実施する。異なる加熱率の実験を実施することで,突入速度と発光効率の関係について調べて,理論モデルの構築を試みる。一方,平成27-28年度に開発を行った超高感度・超高解像度4Kカメラと分光器,制御PCを組み合わせた「全天候・流星分光システム(波長380-900nm領域)」の安定した定常観測を引き続き行い,統計的な議論を行えるように流星・火球の分光データ数を増やしていき,これまでに得られた高品質の流星分光スペクトルと,室内アブレーション実験の結果を比較しながら,低速流星や火球スペクトルのアブレーションの物理素過程についての成果をまとめる。 また,隕石火球となるメートル・サイズの岩塊の形成メカニズムとして,自転周期の加速,惑星や太陽接近による小惑星の分裂が考えられるが,流星群母天体候補で分裂が示唆されている地球近傍小惑星の自転に伴う分光観測を,米国ローウェル天文台4.3m望遠鏡を用いて平成27-28年度に実施し,表層の不均質性(宇宙風化のリセット)を発見した。また,京都大学生存圏研究所のMUレーダーを用いた観測からは18万個を超える微光流星の軌道を導出するに至っており,光学との同時観測から,レーダー観測で得られているメテオロイドのサイズ分布と軌道に関してまとめる。平成29年度は,小惑星の分裂と,これらを起源としていると考えられるメテオロイド軌道とサイズ分布について研究成果をまとめる。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Evaluation of Artificial Meteor Sources with Arc Heater Wind Tunnel2016
Author(s)
Mask Watanabe, Koki Sakuyama, Hironori Sahara, Soichiro Numata, Shinsuke Abe, Takeo Watanabe, Takayuki Shimoda, Junsei Nagai, Yuta Nojiri, Lena Okajima
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Journal Title
Transactions of the Japan Society for Aeronautical and Space Sciences, Aerospace Technology Japan
Volume: 14
Pages: 119-123
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] アーク加熱風洞を用いた流星アブレーション過程の計測2016
Author(s)
阿部新助, 荒木健吾, 岩崎太陽, 戸円和博, 鴻巣雄貴, 松山誉, 作山幸樹, 麻野将吾, 木村菜摘, 山下矩央, 佐原宏典, 渡部武夫, 岡島礼奈, 下田孝幸
Organizer
平成28年度・宇宙航行の力学シンポジウム
Place of Presentation
JAXA/ISAS(神奈川県相模原市)
Year and Date
2016-12-19 – 2016-12-20
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