2015 Fiscal Year Annual Research Report
地上・宇宙光学望遠鏡ならびに電波望遠鏡による木星大気圏-電磁圏結合過程の解明
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26287118
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂野井 健 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80271857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠羽 康正 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10295529)
土屋 史紀 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10302077)
鍵谷 将人 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30436076)
三澤 浩昭 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90219618)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 惑星大気 / 木星 / 国際情報交換(ハワイ) / 光赤外天文学 / 装置開発 / イオ / ひさき / すばる |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度は、60cm望遠鏡を用いた木星連続観測をフル稼働させた。具体的には、クーデ焦点に取り付けられた可視中分散・高分散分光器ならびにコロナグラフと高速CMOSイメージャーを用いて、木星と衛星イオトーラス(硫黄イオン673nm発光)の連続観測を行った。さらに、40cm望遠鏡では、イオトーラスNa589nm発光の広視野イメージング観測を行った。 これと同時に、ISAS/JAXAと連携して、極端紫外戦宇宙望遠鏡HISAKI(SPRINT-A)/EXCEEDによるイオトーラスの紫外線発光(60-145nm)の共同観測を達成した。特に、2015年1月に発生したイオ火山噴出現象に伴う、イオトーラス発光(可視・紫外)と木星オーロラ変動現象(紫外)ではこれまでにないデータが捉えられ、現象のメカニズムの解明が進んだ。 なお、60cm望遠鏡は、本研究目的である木星以外にも、土星(衛星エンケラドス氷火山)、金星、火星、系外惑星など多くの対象に成果を挙げることに成功した。 さらに、大型望遠鏡による公募観測に採択された。具体的には、H28年1月にSUBARU望遠鏡COMICSを用いて木星中間赤外分光観測を行った。また、H28年4月~5月にかけて、NASA/IRTF望遠鏡による木星赤外観測が採択されている。現在、これらのデータの解析を進めており、イオプラズマトーラスのイオンの発光分布と加熱プロセス、木星オーロラ発光変動とイオプラズマトーラスの対応に関わる研究が進行中である。この研究に関連して、本研究グループからH26年度に1名の博士号取得、H27年度に1名の修士号取得があった。 一方で、赤外エシェル分光器の開発について、赤外検出器以外の部分についてはほぼ開発が完了したものの、赤外検出器の故障問題については、前年度に引き続き解決にむけて取り組んでいる。この問題について、国内の天文分野で実績のある研究者に照会するなどして対応しており、今後原因を調べて対処する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度に計画されていたもののうち、ハワイ・ハレアカラ山頂に60cm望遠鏡を持ちいた木星と衛星イオの連続観測を開始することは達成した。とくに、前年度新規開発した可視コロナグラフ光学イメージングシステムや、可視分光器等を用いて、木星の可視イオトーラス(硫黄イオン673nm、Na589nm)発光の連続観測を行うことができた。 また、同時のJAXA/ISASによる極端紫外線宇宙望遠鏡HISAKI(SPRINT-A)/EXCEEDとの同時観測から、2015年1月にはイオ火山噴火に伴うトーラスとオーロラの増光を捉えることができた。さらに、目標の一つである大型望遠鏡による公募観測にも採択され、SUBARU望遠鏡による木星赤外観測も行った。 これらの観測データの解析に基づき成果は成果は順調にでており、イオプラズマトーラスのイオンの発光分布と加熱プロセス、木星オーロラ発光変動の原因とイオプラズマトーラスに関わる新しい知見について、国内外の複数の学会・シンポジウム発表を行った。また、本年度からは本研究グループから1名の修士号取得学生があり、複数の学生が解析に携わっており教育成果もあった。 一方、赤外エシェル分光器の開発について、前年度発生した赤外検出器故障を解決するための対応を今年度も継続しており、以外のその検出器に関わるエレクトロニクス関係の開発と試験、ならびにハワイへの設置に遅れがでている。 以上のとおり、一部について予想外の遅れがあったものの、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策について、H28年度は、現状稼働しているハレアカラ山頂の60cm望遠鏡ならびにコロナグラフイメージング・可視分光器等を用いて、木星の衝前後の観測好適期である冬から春にかけて、木星と衛星イオトーラスの観測を計画している。また、同時期には、極端紫外宇宙望遠鏡HISAKI(SPRINT-A)/EXCEEDとの共同観測や木星シンクロトロン電波観測も計画されている。さらに、NASA/IRTFの観測がH28年4~5月に採択されているが、さらに年度後半の冬期間にかけても同様にSUBARUやNASA/IRTFの公募観測にも申請し 、採択された場合には木星赤外観測を実施する。加えて、本年夏には、NASA木星探査機Junoが木星到着予定であり、国際的な共同キャンペーン観測が実施される。本グループはぜひこの共同観測に参加し、国際連携のもと、著しい成果を挙げることを目指している。これらの観測から、イオ火山活動と木星オーロラ関係についても因果関係を明らかにし、木星大気-磁気圏の間のエネルギー・電磁結合過程を理解を加速する。 一方で、赤外検出器の予想外の故障について、H28年度は赤外分光器・エレキ開発のエキスパートである名古屋大・平原靖大准教授を新たに分担者に追加し、原因の究明を進める。具体的には、問題が見られるファンアウトボードを、過去の実績のあるものを採用し、作り替える。このために、チャンバなどの改造も必要である。また、ケーブルやハーネスの再製作、駆動エレクトロニクス回路の新製作などを検討する。 研究成果は学会・シンポジウム等で発表するとともに、査読つき論文により広く世界に公表する予定である。また検出器不具合検討のため打ち合わせが必要である。
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Causes of Carryover |
本研究の大きな目的の一つである、ハワイ・ハレアカラ60cm望遠鏡と可視分光器・コロナグラフイメージャー等を用いた、木星と衛星イオトーラス観測は順調に行われ、成果があがっている。一方で、赤外分光装置については、赤外検出器の故障により、計画から遅れが生じている。このため、赤外分光装置に用いるエレクトロニクスの開発が計画通りにいかずに遅れが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、上記の赤外検出器故障ならびにエレクトロニクス開発について、問題を解決するために、2名の分担者追加を行った。また、国内外の研究者の協力をのもと、この開発を進める。研究費については、計画的に執行する。
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Research Products
(19 results)