2015 Fiscal Year Annual Research Report
大西洋および日本海深海掘削コアの植物由来有機分子分析による第四紀古植生変動の復元
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26287130
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
沢田 健 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20333594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入野 智久 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 助教 (70332476)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 古植生解析 / 植物バイオマーカー / 花粉分析 / 植物テルぺノイド / 日本海 / 深海掘削コア / 古気候 / 陸源物質輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際深海掘削計画(IODP)イベリアマージン航海(339次航海)と日本海航海(346次航海)で、それぞれ北東大西洋イベリア半島沖(Shackleton site; U1385)と日本海北海道沖(U1422、U1423)で掘削された第四紀海底堆積物コアにおいて、陸上植物由来テルペノイドなどの植物バイオマーカーと花粉の分析を行い、それらの結果を直接比較して、花粉-植物バイオマーカー植生解析データの対応関係モデルを体系的に構築し、植物バイオマーカーおよび花粉分析により、北東大西洋(西ヨーロッパ)と北西太平洋(極東アジア)の過去約150万年間の古植生・陸域古環境の年代変動を復元するものである。平成27年度におけるおもな研究成果は次のとおりである。 1.日本海掘削コアU1423(北海道奥尻沖)のほぼ全試料において、陸上植物バイオマーカー分析と花粉分析を一通り終了した。花粉による過去500万年間の約5万年の解像度の古植生変動を復元した。 2.スギ・ヒノキ由来のテルペノイド(スギオールなど)について、既知標準物質を使用して、それらの同定・定量分析を確立した。また、その派生物も同定を試みた。これにより、日本近海の海底堆積物のバイオマーカー分析によるスギ・ヒノキ科植生の解析が可能になった。 3.U1423コアにおいて、植物ワックスバイオマーカーの濃度と組成比の過去500万年間の年代変動を復元した。植物ワックス濃度の変動は、総有機炭素量(TOC)や全花粉量の変動とよく同調することがわかった。植物ワックスの堆積フラックスがTOC、花粉の堆積フラックスと同じ傾向を示すのか、日本海底層水の酸化還元条件に影響を受けた有機物の保存状態を反映しているのか、検討している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本海掘削コアU1423 (北海道奥尻沖)の植物バイオマーカー分析と、共同研究者である五十嵐博士の花粉分析が予想以上に早いペースでほぼ完遂した。深海堆積物中の多くの陸上植物由来バイオマーカー分子の中でも、スギ、ヒノキ由来のテルペノイドが多様に含まれていることが確認され、スギ・ヒノキ科植生の変動の復元に期待ができる。平成26年度に本科研費で購入したガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)によって、分析ペースが上がったことが予想以上の進展の要因だと思われる。日本海掘削コアU1422 (北海道留萌沖)も花粉分析については開始していて、ペースが早い。ただし、北東大西洋イベリア半島沖(Shackleton site)の掘削コアの分析がやや遅れ気味である。7月末に名古屋で行われた国際第四紀学会(INQUA)において、研究協力者であるボルドー大学Sanchez Goni教授の研究グループと当グループにおいてShackleton siteの研究成果・情報の交換を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度(最終年度)は、日本海掘削コアU1422 (北海道留萌沖)とイベリア沖Shackleton site試料の植物テルペノイドバイオマーカー分析と花粉分析を行う。植物生体試料を用いた実験も併行して、未同定の植物テルペノイドの構造決定を進めて、古植生解析のための指標の設定と分析のルーチン化を図る。また、本格的に、花粉植生指標とテルペノイド植生指標の換算式(検量線)を求めるような定量的な関係モデルを構築する。 前半:日本海北海道沖U1422試料の分析に重点を置き、植物テルペノイド分析と花粉分析を行う。植物テルペノイド分析のルーチン化後に、当研究室の大学院生(研究協力者)も分析を行う。6月末に横浜で行われる国際地球化学会(Goldschmidt Conference)において、コンビーナーとして植物テルペノイドバイオマーカーの講演セッションを世話し、当研究グループも成果発表し、討論する。また、同分野の研究者と情報交換を行う予定である。また、7月はじめに行われる有機地球化学会国際シンポジウムにおいても、同様に成果発表・討論を行う。 後半:イベリア沖Shackleton site試料の植物テルペノイド分析を完遂させる。Shackleton site試料から得られた北東大西洋(西ヨーロッパ)の過去約150万年間の古植生・陸域古環境変動を復元する。日本海北海道沖試料の粒度分析などの堆積学的分析、ダスト分析も完遂させる。研究成果を論文にして国際誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度に本科研費で購入したガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)に、平成27年度に熱分解装置/インジェクタ―を搭載する予定であった。しかし、実際にはより低額のオートインジェクターのみを設置したため。平成28年度に支給される予定の交付金で熱分解分析のための少額備品・消耗品を購入することに方針を変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
熱分解分析のための少額備品・消耗品を購入する。
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