2014 Fiscal Year Annual Research Report
天然におけるナノ黄鉄鉱の生成過程と生命誕生駆動力の解明
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26287133
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 庸平 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00359168)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 道生 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (10647655)
小暮 敏博 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50282728)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生命の起源 / 表面代謝説 / 黄鉄鉱 / 化学進化 / 硫化鉄のうろこ / 鉄結合物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、現在も有力な生命の起源仮説である「表面代謝説」の検証と、優れた光起電力から、安価な太陽光発電の光吸収素子として注目される黄鉄鉱を用いた化学進化の実験による解明にある。平成26年度の研究実施計画として、下記の三つを策案した。 ① 生命誕生場に想定される無酸素・高温条件下で、水溶液中のナノ黄鉄鉱に紫外・可視光を波長領域と強度を 制御して照射する実験系の確立を行う。② 確立した実験系を用いて、生命誕生時に想定される大気条件(高二酸化炭素分圧)と海洋(酸性)および熱水(アルカリ性)を再現した条件で合成実験を行い、生成有機物の評価を行う。③ 深海底熱水噴出域でナノ黄鉄鉱を形成する巻貝の鱗タンパク質中で、ナノ黄鉄鉱形成に関与するタンパク質を特定する。 ① の研究実績に関しては、石英セルを密閉して気相の雰囲気を制御して、90℃まで昇温可能な実験系を確立した。また光源として可視光を波長領域の電磁波を石英セルに強度を制御して照射できる光学系の立ち上げに成功した。② に関しては、新たに導入したガスクロマトグラフ装置で合成された有機物を測定予定であったが、分析の再現性が取れずに、装置の導入のみに留まった。③に関しては、うろこの硫化鉄を塩酸で溶かし、うろこ中の有機物を網羅的に抽出し、塩酸抽出液に対しHPLCポストカラム法を用いて鉄結合物質の分離・検出を行った。ルミノールの化学発光を用いて鉄結合物質の検出を試みた結果、鉄に結合する低分子の有機物の検出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機物評価のためのガスクロマトグラフ装置の不測の故障が生じたため、有機物合成実験が進展していなかったが、故障の修理も終わり照射実験系も立ち上がったので、実験を再開した。また、鉄の鱗の有機物解析も順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、確立した照射実験系で有機物合成を行うと共に、鱗中の鉄結合物質についても特定を行う。また深海底熱水噴出域から採取した試料の微生物群集構造解析とナノ鉱物学的解析も行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度、生命誕生時に想定される大気条件と海洋(および熱水を再現した条件で合成実験を行い、生成有機物の評価を行うために、新たに導入したガスクロマトグラフ装置で合成された有機物を測定予定であったが、分析の再現性が取れずに、装置の導入のみに留まった。そのため実験用の費用を次年度に繰り越す必要がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、確立した照射実験系で有機物合成を行うと共に、鱗中の鉄結合物質についても特定を行うまた深海底熱水噴出域から採取した試料の微生物群集構造解析とナノ鉱物学的解析も行う。
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