2015 Fiscal Year Annual Research Report
腐食疲労における腐食速度予測のための電場/応力場連成解析手法の開発
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26289004
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
桑水流 理 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40334362)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 環境強度 / 腐食疲労 / 腐食電場解析 / 腐食・応力連成解析 / 分極曲線 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に作成した腐食疲労試験冶具は結果として剛性不足であったため、より高剛性な冶具を設計・製作した。冶具の曲げ変形を無くすため、ピン固定式の引張冶具とし、材料もオーステナイト系ステンレス鋼からより高剛性の二相ステンレス鋼に変更した。また、冶具事態を円柱形にしたことにより、腐食チャンバ―との摺動部が引っ掛からない安全な構造となった。更に腐食チャンバーの電極挿入部およびルギン管形状を簡素化することにより、操作性を改善した。これらの改善により、誤操作による実験の失敗を減らすことができた。 改良した試験装置を用いて、一定応力下の分極曲線測定を行ったが、応力負荷に関しては問題が無かったものの、電気化学測定の結果が安定しなかった。過去の経験から、試験片コーティングの不具合が原因である可能性が高かったため、コーティングの塗布回数増加、試験片表面の調質、試験片形状の変更、顕微鏡によるコーティング確認などを行い、万全を期したが、改善があまり見られなかった。そのため次の要因として、参照極の劣化が考えられたため、参照極を交換したところ、安定した計測が可能となった。以上の冶具と試験片の改良により、以前よりも滑らかな分極曲線が得られるようになった。 実験の遅れから、腐食/応力連成解析コードの開発も遅れた。コード開発を加速させるため、本研究で開発した分極特性モデルを汎用有限要素解析コードへ実装しようと試みたが、非線形境界条件の複雑さと不連続な電位・電流の設定の煩雑さから、汎用コードの適用が困難であることがわかった。よって本年度は連成解析コードの開発には至らなかった。ただし、境界要素法(BEM)による腐食電場解析コードは電位と電流の不連続性を考慮した新しい線形要素の導入が完了し、腐食電場解析の精度を向上させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
電気化学測定装置の測定結果が不安定になり、その原因究明に時間を要してしまったため、研究計画が遅れている。コーティングの塗布回数の検討、試験片表面の粗さによるコーティング剥離の検討、腐食窓を大きくするための試験片形状の検討などを行ったため、原因解明に時間がかかった。ただし、これらの検討により試験片のコーティング条件が大幅に改善したため、電気化学測定の結果としてノイズの少ない高精度なデータが採れるようになった。 試験片は予備も含めて十分に作製したため、あとは実験を実施するのみである。分極特性モデルについても本年度に検討を重ね、ひずみ依存型に変更し、近似関数形もほぼ決まっているので、アルミニウム合金の実験結果が得られ次第、ひずみ依存型分極特性モデルの作成が可能である。 また腐食/応力連成解析コードの開発では、連成解析コードを本年度中に作成することはできなかったが、BEM腐食電場解析コードに不連続線形要素を導入することができ、異材境界での不連続な電位と電流を考慮し、かつ滑らかな電流分布(腐食速度分布)を得ることができるようになった。これは腐食/応力連成解析の精度向上にも貢献できる成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れを取り戻すため、本年度の早い段階で、製作済みのアルミニウム合金試験片を用いて、一定ひずみ下の分極曲線測定および低速引張下の自然電位測定を実施し、その結果を基に、アルミニウム合金のひずみ依存型分極特性モデルを完成させる。一定ひずみ下の分極曲線からは、曲線形状に対するひずみの影響がわかり、低速引張下の自然電位変化からは、破断に至るまでの自然電位のひずみ依存性の非線形性が明らかになる。 当初計画していた腐食疲労試験に関しては、実験時間が長く、検討項目も多岐にわたるため、最終年度での実施は困難と判断し、取りやめる。代わりに、実験時間を短縮でき、検討項目も少ない、高応力下の応力腐食割れを対象とする。特に、き裂発生までの腐食過程が重要であるので、その場観察でき裂が確認できた時点で、実験は終了する。酸化皮膜の損傷度合いを一定に保つため、実験は変位制御で行い、負荷応力が耐力近傍になるように設定する。応力腐食割れの場合、その場観察が容易であり、腐食速度の評価が行い易い。また、計測の対象は腐食速度とき裂発生寿命に限定し、負荷ひずみの影響のみ検証する。これにより、腐食/応力連成解析の境界条件も一定状態に限定できるので、開発期間を短縮できる。 解析コードの開発は、オープンソースコードを基に行っているので、必要最小限の労力で解析を実施できるようにしている。解析対象とする問題も当初の計画通り、2次元問題に限定し、実験との比較は定量的比較に留める。また、実験および解析の担当学生を追加し、それぞれ2名づつ配置することにより、最終年度の計画を確実に実施する。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通りに予算執行したが、端数が残ったため、次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試験片加工等の消耗品費として、翌年度分の研究費と併せて使用する。
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Research Products
(3 results)