2015 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ繊維による炭素繊維強化複合材料の超長寿命化機構の解明とプリプレグの開発
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26289012
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
藤井 透 同志社大学, 理工学部, 教授 (20156821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大窪 和也 同志社大学, 理工学部, 教授 (60319465)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高分子系複合材料 / 疲労 / ナノ繊維 / サブミクロン繊維 / カーボン繊維 / 物理的変性 / 静的強度 / 強度向上メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
物理的変性により引張り荷重下での母材/CF間の見かけの接着強度が増すことについて,通常の試験片をナノインデンター等の検査では直接的証拠が得られないと考え,1本のCFをエポキシ母材に埋没させて引張り,母材/CF周りのナノクレーズの発生,マルチ化,ボイドへの成長について光学的に観察した.その結果,当初予想した通り,①未変性エポキシ/CFでは,負荷の初期(破断時の荷重に対して20%)からCF端で応力集中による偏光=クレーズの発生が認められた.その後,負荷の増加と共にクレーズ(領域)は成長(拡大)するが,やがて一気にCFの表面に沿ってはく離が発生し,CFに沿って急速に拡大する.一方,物理的変性を行った母材では,破断時の荷重に対して20%でも目立った変化は認められない.未変性の場合の破断荷重では,CF先端にボイドによる輝点が現れたが,はく離はない.一方,S&NFの先端では,あちらこちらに輝点が現れ,先の仮説を立証できた. 上記の成果を基に,炭素繊維では難しいと考えられたSMCの開発に取り組んだ.SMCではビニルエステルを用いるため,微細繊維として直径500nm~のサブミクロンガラス繊維(GF)を用いた.これをビニルエステルに添加することによって引張り強度を50%も向上させることができた.微細繊維含有率は0.3%である.耐久性も極めて向上した.CFのリサイクルが話題となっている.そこで,S&NFによる母材の物理的変性をCF/PP射出成形品にも応用した.PPとの相性では炭素繊維の特性が発揮できていない.そこで,S&NF変性PPとリサイクルCFのCFPPでは高性能な成形品が得られた.この分野でもS&NFによる母材の変性効果が確認された. さらに,自動車への応用を目指し,その場重合型エポキシ樹脂を用いたCF複合材料へもS&NFによる物理変性の適用も試み,その可能性を見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
サブミクロン繊維・ナノ繊維(S&NF)を用いたエポキシ母材の物理的変性による炭素繊維(CF)強化高分子系複合材料(PMC)の耐久性向上メカニズムに対する仮説を裏付ける一助として考えていたナノインデンターおよび原子間力顕微鏡(タッピングモード)を使った変性樹脂の特性把握を当初予定していたが,十分な結果を得ることができなかった.そこで,これに代わる手法として,単CFを母材中に埋没させた試験片を高倍率光学(偏向)顕微鏡観察を行った.その結果,S&NFがCF先端でのき裂の発生を抑え,母材/CF間の見かけの接着性を高めるメカニズムに対する仮説が見える形で立証された. この成果を基礎に,これまで静的強度,耐久性いずれもGFを大きく凌ぐ,CFを用いたSMCの開発を進めることができた.ビニルエステル樹脂をS&NFにより変性することにより,ランダム繊維ながらCF-SMCは350MPa以上の引っ張り強度を示し,実用性の高いSMCの開発に目処を得た.この手法は特許として申請することができた. さらに,リサイクルCFをPP(ポリプロピレン)と組み合わせた射出成形用のコンパウンドについても,S&NFによる母材の変性の有効なことを示すことができた.加えて,自動車用途への展開を図る〔その場重合型〕熱可塑性エポキシ母材についても,S&NFによる物理的変性の有効性が示され,長期間走り続ける自動車の主要部材の耐久性が高められることが確信できた.
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Strategy for Future Research Activity |
光学的な観察から,微細(サブミクロン,ナノ)繊維による母材の物理的変性の効果が示されたが,炭素繊維強化高分子系複合材料(CF-PMC)の機械的特性を最も高められる最適物理的変性については示されていない.強化繊維,微細繊維の種類と母材に対する添加率によっても性能の向上程度は変わる.そこで,物理的変性の最適条件を見出すと共に,シミュレーションにより,変性効果の定量的予測を進める. 微細繊維の母材への添加により,CF-SMCの静的強度,耐久性が極めて高められることがわかったが,実用化に向けてSMCメーカと協同し,上市可能なCF-SMCの開発を進める. リサイクル炭素繊維(RCF)の活用と実用性を高めるため,SMCと同様に,PPを用いた射出成形用コンパウンドの開発を完成させる.このとき,微細繊維にはCNF(セルロースナノ繊維)を用いるが,2軸混練押出機によりCNFのその場製造と樹脂への分散を同時に達成する手法について確立する. 加えて,その場重合型熱可塑性エポキシ樹脂を用いたCF-PMCについても微細繊維添加の効果を確認する.
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Causes of Carryover |
疲労試験機の定期整備を予定していたが,試験片の耐久性が予想以上に大きく,年度内での試験を終えられないため,年度内での整備を止め,次年度に繰り越すこととした.また,謝礼を予定していたが,これが一部不要になった.加えて,新たな試験片を作るためのカーボン繊維布を購入する予定が遅れたためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
定期点検時間を越えた疲労試験機の整備 カーボン繊維布の購入
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Research Products
(12 results)