2014 Fiscal Year Annual Research Report
冷却時の通電特性低下を抑制する希土類系超電導コイルの基本設計指針と冷却指針の構築
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26289070
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
津田 理 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10267411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮城 大輔 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10346413)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超電導コイル / 冷却 / 熱応力 / 剥離 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、有限要素法に基づく解析コードを作成し、コイル冷却時の過渡熱応力解析を行った。その結果,巻線部に比べて巻枠部(FRP)の熱伝導率が低いことから、巻枠部と巻線部間に大きな温度勾配が生じることがわかった。また、コイル中央部よりもコイル端部の方が大きな応力が発生することがわかった。次に、温度勾配による熱収縮量の差が過渡熱応力に及ぼす影響を明確にするために,コイルの巻線部のみを冷却する場合と巻枠部のみを冷却する場合についてコイル内部の過渡熱応力特性を解析した。その結果、コイルの巻線部のみを冷却する場合は、FRPの熱伝導率が低いために巻枠部の温度がほとんど下がらず、巻線部との温度勾配が大きくなり、コイル全体を冷却する場合よりも過渡熱応力が大きくなった。一方、コイルの巻枠部のみを冷却した場合は、巻線部の熱伝導率が高いため、巻線部と巻枠部の温度が同様に低下することから,巻線部と巻枠部間の温度勾配が小さくなり,過渡熱応力はコイル全体を冷却する場合よりも小さくなった。これより,コイル冷却時は、巻枠部から冷却する方法が過渡熱応力の抑制に有効であるといえる。次に、これを実現する方法として、コイル巻枠中心部のFRP量を減らす方法、巻線部をFRPで覆う方法、コイル巻枠(FRP)の半径方向の厚みを薄くする方法の過渡熱応力低減効果について検討した。その結果、コイル巻枠中心部のFRP量を減らすことによりFRPが速く冷却され、巻線部と巻枠部間の温度勾配を小さくできること、巻線部を熱伝導率の低いFRPで覆うことにより巻線部が冷えにくくなり、巻枠部と巻線部間の温度勾配を小さくできること、そして、コイル巻枠であるFRPの半径方向の厚みを薄くすることにより、巻枠部が短時間で冷却され巻枠部と巻線部間の温度差を小さくできることを確認し、いずれの方法も過渡熱応力抑制に有効であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、近年の通電特性向上により実用化の期待が高まっている希土類系超電導応用機器の開発において、現在、世界的に問題となっている超電導コイル冷却時の超電導層の剥離による通電特性の低下を抑制するために、超電導コイルの基本的な設計指針と冷却指針を確立することを目的とするものであり、具体的には、超電導コイル冷却時の過渡熱応力特性に着目し、コイル冷却・昇温時のコイル内部における温度・ひずみ分布を実験と解析で評価することにより、超電導層剥離の発生メカニズムや、剥離抑制に有効な超電導コイル形状・大きさ・構成方法を明確にすることを目指している。このうち、初年度となる平成26年度は、コイル冷却時のコイル内部における温度分布やひずみ分布を解析的に評価することを計画していたが、実際には、有限要素法に基づく解析コードを作成し、コイル冷却時の過渡熱応力解析を行うことにより、コイルの形状・大きさ・構成方法がコイル冷却時のコイル内部の温度分布やひずみ分布に及ぼす影響を明らかにし、コイル冷却時に発生する過渡熱応力の抑制方法を明確にすることに成功している。よって、現時点では、本研究は順調に進展しているといえる。今後は、平成26年度に実施した有限要素法を用いた超電導コイル内の過渡熱応力解析結果を検証するために、Y系超電導コイルを作製し、コイル冷却時の温度分布やひずみ分布を測定することにより、液体窒素冷却時と冷凍機伝導冷却時において、過渡熱応力を抑制しつつ、コイルの繰り返し冷却・昇温を効率的に行える方法を明確にしていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Y系超電導コイルを構成する超電導テープ線内の剥離抑制に有効なコイル形状・大きさ・構成方法や冷却・昇温方法の明確化を目指し、平成26年度に実施した有限要素法を用いた超電導コイル内の過渡熱応力過渡解析結果を検証するための実験を実施する。具体的には、現用の巻線機を用いて、FRP製の巻枠に一定の張力を印加しながらY系超電導テープ線を巻線し、ダブルパンケーキ型コイルを作製する。次に、冷却時の過渡熱応力特性を明確にするために、エポキシ樹脂含浸した超電導コイルを、冷凍機を用いて液体窒素温度までゆっくり冷却し、臨界電流値を測定する。この臨界電流値を、エポキシ含浸前の臨界電流値と比較し、冷却時の定常熱応力(熱収縮率)の影響で臨界電流値が低下していないことを確認する。次に、コイルを冷凍機の冷却板に取り付け、コイル内部の温度分布推移とひずみ分布推移を測定するとともに、超電導コイルを液体窒素中に浸して冷却する場合についても、同様に冷却時のコイル内の温度分布やひずみ分布の推移を測定する。また、同実験結果をコイル内の温度分布やひずみ分布の解析結果と比較し、解析結果の妥当性を検証する。次に、数値解析において大きな過渡熱応力が得られたコイルパラメータを用いたコイルを作製し、液体窒素冷却時と伝導冷却時それぞれにおけるコイル内の温度分布やひずみ分布を測定し、解析結果と比較することにより、過渡熱応力の低減に有効なコイル形状・大きさ・構成方法や冷却・昇温方法について検討する。また、その結果を踏まえ、液体窒素冷却した場合と冷凍機伝導冷却した場合において、コイルの冷却速度と通電特性の関係について検討し、コイルの通電特性低下を抑制可能な冷却速度の定量的評価を試みる。
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Causes of Carryover |
平成26年度末に意見交換・情報収集のために計画していた東京出張を、別用務が発生したことから実施できなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、Y系超電導コイルを構成する超電導テープ線内の剥離抑制に有効なコイル形状・大きさ・構成方法や冷却・昇温方法の明確化を目指し、平成26年度に実施した有限要素法を用いた超電導コイル内の過渡熱応力過渡解析結果を検証するための実験を実施する予定であるが、繰り越し分は、この実験用コイル治具の作製用として使用する予定である。
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