2015 Fiscal Year Annual Research Report
冷却時の通電特性低下を抑制する希土類系超電導コイルの基本設計指針と冷却指針の構築
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26289070
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
津田 理 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10267411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮城 大輔 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10346413)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超電コイル / 冷却 / 熱応力 / 剥離 |
Outline of Annual Research Achievements |
室温中のY系超電導コイルを液体窒素で浸漬冷却する場合、室温(約300 K)と液体窒素温度(77 K)とでは温度差が大きいため,コイル冷却時にコイル端部を中心に大きな熱応力が発生し、コイルを構成するY系テープ線で剥離現象が生じて通電特性が低下する可能性がある。そこで,平成27年度は、液体窒素上空でコイルを予冷してから液体窒素に浸漬冷却する方法に着目し、室温から予冷温度、および、予冷温度から液体窒素温度に冷却する際に生じる過渡熱応力について検討した。まず、液体窒素上空の温度分布を把握するために、セルノックス温度計を用いて液体窒素液面からの距離と窒素ガス温度の関係を評価した。次に、予冷温度をパラメータとし、予冷中と液体窒素浸漬冷却中のコイル内過渡熱応力を解析した。その結果、予冷時の過渡熱応力は、時間の経過とともに単調増加し、予冷温度が低い場合ほど大きくなるものの、窒素ガス冷却の場合は、液体窒素冷却時よりも熱伝達が小さくなることから、コイル巻枠部と巻線部の温度差も小さくなり、予冷しない場合よりも最大過渡熱応力を抑制できることがわかった(液体窒素液面より1cm上空(約85K)で予冷した場合に、コイル冷却時の最大過渡熱応力を大幅に低減できた)。ただし、液体窒素の遷移沸騰領域で巻枠部と巻線部の温度差が大きくなる様な予冷温度の場合は、予冷温度から液体窒素温度へ冷却する際に、予冷時と同程度の過渡熱応力が発生することがわかった。また、本結果を検証するために、Y系超電導テープ線を用いたダブルパンケーキコイルを作製した。しかし、電流リードとの接続部での通電特性の劣化が、コイルの通電特性に大きな影響を及ぼすことが確認されたため、コイルの巻線端部と電流リード間の接続方法について改めて検討した。その結果、Y系超電導テープ線の劣化抑制に適した低温半田の種類と半田接続方法を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、Y系超電導コイルを構成する超電導テープ線内の剥離抑制に有効なコイル形状・大きさ・構成方法や冷却・昇温方法の明確化を目指し、平成26年度に実施した有限要素法を用いた超電導コイル内の過渡熱応力過渡解析結果を検証するための実験を実施する予定であった。しかし、電流リードとの接続部での通電特性の劣化が、コイルの通電特性に大きな影響を及ぼすことが確認されたため、コイルの巻線端部と電流リード間の接続方法について改めて検討することにした。また、ひずみゲージを用いたひずみ分布測定において、測定結果がひずみゲージの設置状況(取り付け方法)に依存することが確認された。この原因として、ひずみゲージとテープ線表面の接着状況が場所により異なることが考えられたため、再現性の高い取り付け方法について検討した。以上により、当初予定していたコイルの過渡熱応力の測定を実施できなかったが、その代わりに、平成28年度実施予定の、コイル冷却時の過渡熱応力抑制に適した冷却方法について検討した。その結果、液体窒素の遷移沸騰領域の影響により、過渡熱応力の抑制に適した予冷温度が存在することが明らかとなった。以上の様に、当初予定した計画とは異なるものの、平成28年度は、平成27年度に得られた解析結果の検証を含め、コイル冷却中の過渡熱応力の測定を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記(現在までの進捗状況)の通り、平成27年度は、コイル端部と電流リードとの接続方法や、ひずみゲージの取り付け方法について再検討が必要となったため、当初予定していたY系超電導コイルの過渡熱応力の測定を実施することができなかった。このため、平成28年度は、平成27年度実施予定であった、Y系超電導コイル冷却時の過渡熱応力特性の測定を実施する予定である。また、昨年度実施した、コイル冷却時の過渡熱応力抑制に適した冷却方法については、液体窒素の遷移沸騰領域の影響により、過渡熱応力の抑制に適した予冷温度が存在することが明らかとなったため、予冷温度がコイル冷却時の過渡熱応力に及ぼす影響を検証するために、予冷温度をパラメータとして、コイル冷却時の過渡熱応力特性を測定する予定である。また、以上の結果を踏まえ、平成26年度と27年度に実施した解析結果の妥当性を検証するとともに、コイル冷却時の過渡熱応力特性を明確にして、コイル冷却時の過渡熱応力抑制に適したコイル形状や冷却方法を明確にする予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、平成26年度に実施した有限要素法を用いた超電導コイル内の過渡熱応力過渡解析結果を検証するための実験を実施する予定であったが、電流リードとの接続部での通電特性の劣化が、コイルの通電特性に大きな影響を及ぼすことが確認されたため、コイルの巻線端部と電流リード間の接続方法について改めて検討する必要が生じた。また、ひずみゲージを用いたひずみ分布測定において、測定結果がひずみゲージの設置状況(取り付け方法)に依存することが確認されたため、再現性の高い取り付け方法についても検討する必要が生じた。以上により、当初予定していたコイルの過渡熱応力に関する実験の実施が困難となり、平成28年度に延期せざるを得なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、平成27年度に実施予定であった、Y系超電導コイル冷却時の過渡熱応力特性評価を実施する予定である。また、平成27年度に実施したコイル冷却時の過渡熱応力抑制に適した冷却方法の検討において、過渡熱応力の抑制に適した予冷温度が存在することが明らかとなったため、平成28年度は、予冷温度がコイル冷却時の過渡熱応力に及ぼす影響を検証するために、予冷温度をパラメータとした場合のコイル冷却時の過渡熱応力特性評価を実施する予定である。以上の実験で使用するサンプルコイルの作製や実験装置の構築のために、平成27年度からの繰り越し分を使用する予定である。
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