2014 Fiscal Year Annual Research Report
砕波・遡上帯での高濃度底質移動フラックス計測と統合漂砂モデルの開発
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26289161
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
岡安 章夫 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (20213994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下園 武範 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70452042)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遡上帯 / 漂砂 / 底質移動フラックス / 画像流速計測 / 透過型濃度計測 / 段波砕波 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験室内での水流と共に移動する土砂移動量を計測するため,底質濃度と底質移動速度の二次元分布を画像処理技術を用いて同時計測する手法を開発した.底質濃度計測については,エレクトロ・ルミネッセンスシートをバックライト光源とし,透過光強度により計測し,底質移動速度については,バックライト光源とストロボによる照射型光源をビデオ画像のフレーム毎に切り替えて使用することにより,高濃度底質の条件でも精度の高いPIVを可能とした.底質濃度については,透過光強度よりランベルト・ベール則に基づいて,濃度と光減衰量との関係を予め求めた較正関係に従って推算した. 底質移動速度と底質濃度の積から底質移動フラックスの分布を求め,底面変化量から求めたネットの底質移動量と比較した.その結果,本システムを用いて,190グラム/リットル程度の濃度までは,累積誤差10%以下で計測可能であることが分かった. また,1/10固定床勾配斜面を用いた段波砕波による室内実験において,底面境界層付近の流速特性をPIVにより詳細に計測した.PIVシステムのセットアップや相互相関アルゴリズムを最適化することなどにより、1/10mm程度の解像度で境界層内の速度場を把握することができ,これまでより高い解像度で平均速度,乱流強度と底面せん断応力等の評価を行った. その結果,遡上時の平均速度および乱流強度が引き波時のそれより大きいこと,遡上時の流れが砕波と底面と両方の起源の乱れに影響されているのに対し,引き波時は主に底面起源の乱れに依存していること,引き波時最終位相での強い乱れが大きな流速勾配によること等が示唆された.また,対数則により推定された底面せん断応力については,引き波時より遡上時の方が大きいことも分かった. 以上の測定データは,遡上帯での底面境界層を含めた流体場数値モデルの開発や検証に使用できるものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度申請書の研究実施計画にある内容のうち,透過型濃度計測,透過光と照射光の双方を用いた画像流速測定技術,画像計測の最適化の検討,底質濃度と底質移動流速からの底質移動フラックスの推定およびその検証,底面境界層内流速の高精度計測,流速場特性の把握等は実施することができた.購入したダブルパルスYAGレーザーおよび3D底面プローファイラーについては引き続き技術開発を行っていく必要があるものの,当初予定の研究計画については概ね実施できたと判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,まず平成26年度に購入したダブルパルスYAGレーザーおよび3D底面プローファイラーを計測システムに組み込む技術開発の継続を行う.ダブルパルスYAGレーザーを用いることにより,より短い撮影間隔で流速計測が行えるため,特に乱れ量の把握などで改善が見込まれる.また3D底面プローファイラーの使用により,底質移動の奥行き方向の偏りについて補正が可能となるので,より正確な底質移動量の計測が期待できる. 流速計測としては,引き続きドライベッド上を進行する遡上波の流体力学的な内部構造について,大型の段波水槽を用いた大縮尺室内実験を行う.底面粗度の影響を評価するために,粗度なし,粗度付きの底面上での流速を測定すると共に,底面透過性の影響なども考慮するため,透過性の底面も使用することを検討する. 底質移動についても,平成26年度に引き続き室内実験を行う.特に遡上波先端での底質濃度計測や砂粒子の移動形態の把握を行い,流速測定実験と併せて,遡上波先端での流体運動や底質巻き上げの状況について検討する. また,底質移動フラックス計測の応用として,遡上波や通常波浪下での底質巻き上げ量についても検討を行う.底質巻き上げ量は,特に高濃度下での巻き上げ量の評価がほとんどなく,底質移動モデルに組み込むピックアップ関数の高精度化に寄与するものと期待できる.得られたピックアップ関数を底質の移流拡散モデルに組み込むことにより,底質移動モデルの高精度化を図る.
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Causes of Carryover |
年度末実験における消耗品費確保のため,予備費として一定額を留保しておいたが,当該実験において僅かではあるが残額が発生したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度消耗品費に組み込み,引き続き実験等で使用する予定.
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Research Products
(2 results)