2015 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化時の洪水・氾濫の発生頻度・強度の非定常頻度解析と最大規模洪水の評価
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26289163
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
立川 康人 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40227088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Kim Sunmin 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10546013)
椎葉 充晴 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (90026352)
萬 和明 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90554212)
市川 温 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30293963)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水災害 / 気候変動 / 治水計画 / 洪水 / 氾濫 / リスクカーブ / 流出モデル / 氾濫モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
気象庁地球温暖化情報第8巻(2013)の時間降水量データを用いて連続流量計算を実施し、それに非定常水文頻度解析手法を適用して流量極値の経年変化を分析した。また、擬似温暖化実験による仮想台風情報および確率降雨を用いて地球温暖化時に想定される最大クラスの洪水流量を予測した。次に、1km空間分解能の全国分布型洪水流出モデルを母体として、それにネスティングする空間分解能50mの洪水氾濫モデルを用い、氾濫浸水深の確率分布を求める手法を開発するとともに被害額の確率分布を推定し、水害リスクカーブを導出した。 1)流量極値の非定常水文頻度解析とT年確率洪水流量の経年変化の分析:平成26年度に計算した九州地方全域の60年間の連続流量時系列データから、年最大時間流量、年最大日流量を1km分解能のグリッド地点ごと抽出し、地点ごとに非定常水文頻度解析を実施した。その変化特性を空間的にマッピングし、地域によって大きな違いが表れることを明らかにした。 2)仮想台風情報を用いた最大クラスの河川流量の分析:淀川流域を対象とし、分布型流出モデルの再現性を高めた上で伊勢湾台風のコースアンサンブル台風シミュレーションデータを用いた流量計算を実施し、物理的に発生し得る最大流量を推定した。また、伊勢湾台風と平成25年台風18号の降雨パターンによる確率降雨を用いて、再現期間とそれに対応する洪水流量およびダム群の洪水調節効果を分析した。 3)氾濫浸水深の頻度解析:由良川流域および淀川下流域を対象として2次元洪水氾濫モデルを構築し、年最大氾濫浸水深の確率分布を得る手法を開発した。 4)浸水被害額の推定と浸水リスクカーブの作成:由良川流域および淀川下流域を対象とし、上記の氾濫浸水深から被害額を推定して、年最大浸水被害額の確率分布を由良川および淀川下流域で推定した。さらに年超過確率と水害被害額の関係である水害リスクカーブを導出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
最大クラスの洪水推定計算では、流出モデルのモデルパラメータを推定しなおすとともに、狭窄部での遊水効果を表現できるよう分布型流出モデルの精度を向上させることにより、、流出モデルの精度を向上させることができた。また、伊勢湾台風のコースアンサンブル台風シミュレーションデータを用いた流量計算に加えて、確率降雨を用いた流量計算を実施し、再現期間とそれに対応する洪水ピーク流量およびダム群の洪水調節効果を分析した。また、前年度までに開発したリスクカーブ推定手法を用いて、由良川および淀川下流域のリスクカーブを推定するとともに、降雨継続時間に応じた総降雨量の条件付き分布関数を導入してリスクカーブ推定手法の改善を図ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
経路アンサンブル台風シミュレーションデータを用いて、最大降雨および河川流量の地域分布特性を調べ、ある地域で発生した極端降雨や洪水が他地域でも発生し得るのかを分析する。また、擬似温暖化実験による新たな仮想台風情報を用いて、地球温暖化時に想定される最大クラスの洪水流出量を推定する。さらに、平成27年末に新たに公開された「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース、d4PDF」を用いて、過去実験3000年分、4度上昇実験5400年分の高解像度大気モデル実験データを用い、日本列島の主要河川域を対象として、その中に含まれる最大クラスの降水事象を抽出する。次に、前年度までに開発した降雨流出氾濫モデルを用いて、最大クラスの洪水氾濫強度を分析する。一方、d4PDFデータによる降水分布情報を用い、前年度までに開発した水害リスクカーブを適用して、現在と4度上昇時の水害リスクカーブの変化を分析する。
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Causes of Carryover |
平成27年度に達成した課題に取り組むにあたり、計算実行時の効率化とデータ保存の整理集約を実施したことにより、大量の内蔵ハードディスクを持つ計算機の購入費を計画当初よりも抑えることができた。平成27年度には4つの課題を達成した。これらを達成するために複数の計算機を購入し多数の数値シミュレーションを実施した。その際、より効率よく多数の計算が実施できるようシミュレーションの実施の手順を工夫し、少数の計算機で多数の計算を実行することができた。また、多数の数値シミュレーションの結果は、計算機に内蔵のハードディスクを最大限活用するとともに、既存の計算結果を整理集約することで保存スペースを確保した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用分はハードディスクの購入に使用する。ハードディスクには、平成27年末に新たに公開された「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース、d4PDF」のデータおよびそれを用いた分析結果の一部を保存する。平成28年度には、d4PDFデータを用いた最大クラスの降水事象の抽出と、現在と4度上昇時の水害リスクカーブの変化を分析する計画である。d4PDFデータは、過去実験3000年分、4度上昇実験5400年分の高解像度大気モデル実験データである。大容量のハードディスクを購入し、データ量が膨大となるd4PDFデータおよびその分析結果を保存する。
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Research Products
(9 results)