2015 Fiscal Year Annual Research Report
鉄筋のカットオフ・付着・定着とひずみ速度を考慮したRC部材のせん断抵抗能力評価
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26289185
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西村 康志郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00343161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 直毅 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20579784)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 鉄筋コンクリート / せん断強度 / 付着強度 / カットオフ |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄筋コンクリートの付着性状を把握するために、せん断補強されたコンクリート内に直線定着された引張鉄筋群の引抜実験を行った。昨年度の実験で、引張鉄筋群の付着割裂強度は、部材の付着割裂面のせん断強度で評価する方法が有効であることが明らかとなったが、引張鉄筋群の中で付着長さの短い鉄筋は単体で付着破壊する恐れがある。今年度は、せん断補強筋や周囲の主筋が鉄筋単体の付着破壊に及ぼす影響を把握するために引抜実験を行った。その結果、鉄筋単体で付着破壊する時の強度は周囲の鉄筋の付着応力の影響を受けて低下すること、鉄筋単体で付着破壊する前に想定付着割裂面のせん断応力度が最大となること、その挙動がコンクリートのひび割れの伸展と関連していること、などが明らかとなった。 鉄筋のひずみ速度が付着性状に及ぼす影響を把握するために、動的加力と静的加力による引抜実験を行った。試験体は、いずれもコンクリートに直線定着された引張鉄筋群を配置した。動的加力では、地震動を受けて振動する状態を想定して載荷速度を決定した。動的加力と静的加力を比較した結果、付着強度とその時の変形が動的加力のほうが大きくなること、付着の剛性はあまり変わらないこと、ひび割れは静的加力のほうが小さな変形で伸展すると考えられること、などが明らかとなった。 2段配筋で2段目がカットオフされている鉄筋コンクリート梁を対象にFEM解析を行った。既往の実験結果と比較し、曲げ降伏する梁については付着応力の挙動を比較的精度良く再現できるモデル化に成功した。その結果、カットオフ筋の先端付近で大きな付着応力度を負担する結果が得られた。 昨年度に提案したせん断強度評価式を軸力が作用する柱に拡張するため、既往の柱試験体の実験資料を用いて検討を行った。軸力の効果は、軸応力度に比例して増大させる従来の方法である程度の精度で評価可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、鉄筋コンクリート梁のせん断破壊と付着割裂破壊の複合的な破壊を評価し得るせん断強度式を昨年度に提案し、今年度はそのせん断強度式を軸力の作用する柱部材への拡張を検討した。既往の実験結果を基に検証した結果、軸応力度に比例してせん断強度を増大させる従来の方法で比較的良い精度で評価可能なことがわかった。実験結果に対するばらつきは、せん断破壊時の付着割裂の有無が影響していると考えられるため、最終年度に予定している鉄筋コンクリート柱の加力実験結果を基にさらに検討する。 初年度に引き続き、コンクリートに直線定着された引張鉄筋群の引抜実験を行い、付着性状を把握した。また、当初は最終年度に予定していた動的な加力実験を前倒しで行った。これは、主筋とコンクリートの間の付着性状を把握した上で、梁部材の逆対称曲げ加力実験を行うほうが効果的と判断したためである。引張鉄筋群の引抜実験結果より、引張鉄筋群にカットオフ筋が混在することで想定付着割裂面のせん断強度が低下すること、付着性状に与えるひずみ速度の影響は付着強度が上昇することと強度時の変形が大きくなること(つまり剛性は変わらない)、が明らかになった。これらの知見は、想定付着割裂面は梁部材のせん断力と釣り合っているため、部材のせん断強度が低下する可能性があること、ひずみ速度の影響は部材の挙動に対して安全側に作用し得ること、が想定され、次年度の梁試験体と柱試験体の実験計画に有用な情報である。 梁試験体と柱試験体の実験計画を進めるに当たり、既往の実験データを文献から収集し、データベースを作成している。対象とした試験体は、梁と柱で、せん断破壊・付着割裂破壊・曲げ降伏後の付着割裂破壊とした。寸法効果などを考慮してより精度の高いせん断強度評価式を提案するために、これらの実験データを用いる。
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Strategy for Future Research Activity |
梁部材と柱部材の逆対称曲げ加力実験を行う。これらは、鉄筋のカットオフや軸力が部材のせん断強度に与える影響を把握するための実験である。 梁部材の実験では、基礎梁を想定し、梁せいが大きく3段配筋あるいは2段配筋の試験体でカットオフ筋を有するものを作製する。近年、カットオフ筋を含む梁試験体の加力実験報告が増えつつあり、通常の梁に関する知見が多くなっており、実験データの少ない基礎梁に着目した。梁断面は200x500mmで、内法長さを1700mmとする。主筋にはD16異形鉄筋を用いる。コンクリート強度は27N/mm2とする。パラメータは主筋段数とカットオフの有無で、3段配筋で全て通し筋、3段配筋で3段目のみカットオフ筋、2段配筋で2段目がカットオフ筋、の3体を準備する。破壊形式は、付着割裂破壊、せん断圧縮破壊、あるいはその複合的な破壊を想定している。 柱部材の実験では、軸力比とせん断補強筋比をパラメータとする。柱断面は300x300mm、内法スパンは900mmとする。コンクリート強度は24N/mm2とする。せん断補強筋には高強度鉄筋を用いる。せん断補強筋比が0.3%と1.0%の試験体を2体ずつ作成し、高軸力(軸力比0.4)と低軸力(軸力比0.1)でそれぞれ加力する。軸力の効果は付着割裂の有無が影響すると考えている。つまり、付着割裂を伴う破壊の場合は軸力の効果が小さく、伴わない破壊では軸力の効果が大きいと予想している。これらの性状を把握するためのパラメータとなっている。 初年度に梁のせん断強度評価式を考案し、2年目に柱への拡張を試みた。評価式は、せん断破壊と付着割裂破壊の複合的な破壊を評価可能となっている。これまで行った鉄筋の引抜実験により把握した付着性状、既往の実験資料、今年度の梁と柱の逆対称曲げ加力実験結果を基に、せん断強度評価式の高精度化をはかる。
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Causes of Carryover |
せん断補強されたコンクリートに直線定着された引張鉄筋群の動的な引抜実験と、鉄筋コンクリート梁試験体の逆対称曲げ加力実験の順番を入れ替えたためである。梁の加力実験は、主筋の付着性状やカットオフ筋の有無が梁のせん断強度に及ぼす影響を把握するために行うものであるが、近年、カットオフ筋を有する鉄筋コンクリート梁の実験成果の報告が増えている。これらの最新情報を取り入れつつ、梁の実験計画を進めるほうが効果的と考え、実験データが不足している付着性状に係る動的な効果を把握することが先決と判断した。今年度は引張鉄筋群の動的加力実験を行った。当初、今年度行う予定であった鉄筋コンクリート梁の加力実験は次年度に行う。梁試験体の製作費を次年度に繰り越すため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、主に鉄筋コンクリート梁試験体の製作費と梁試験体の加力治具の製作費に使用する。梁試験体とその加力治具の製作費は、鉄筋とコンクリートの材料費、ひずみゲージと専用接着剤の購入費用、治具の材料費と加工費、などである。
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Research Products
(3 results)