2014 Fiscal Year Annual Research Report
猛暑による健康被害リスクの評価と増幅要因分析に基づく屋外温熱環境設計理論の再構築
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26289200
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
持田 灯 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00183658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 伴延 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20386907)
吉田 伸治 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50343190)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 都市環境・設備 / 地球・都市環境 / Severe Weather |
Outline of Annual Research Achievements |
1.Risk評価のためのメソ・ミクロ・熱ストレス一貫解析の基本フレームの構築 1)持田と大風等が精度の改善を加えてきたメソ気象モデルWRF(Natural Hazardの評価)、2)持田と吉田等が開発してきたCFDモデルに基づくミクロ気象解析モデル(健康被害発生Riskの増幅要因(Vulnerability)の評価)、3)後藤らがStolwijkモデルに基づいて開発した人体温熱生理モデル(熱ストレスの評価)の3つのモデルを統合し、仙台の定禅寺通りを対象とした一貫解析を実施した。さらに2)のミクロ気象解析に関しては、指向性反射の効果を予測可能な形にモデルを改良した。 2.WRFによるメソ気象解析による現在と将来のSevere Weather Conditionの予測手法の開発 WRFによるメソ気象解析の結果からWBGTの空間分布を計算し、Natural Hazard Mapを作成する手法を開発した。さらに、大気循環モデルの1つであるMIROCの解析結果を領域気象モデルWRFの境界条件とした力学的ダウンスケーリングに基づき、仙台の2030年代を対象としたNatural Hazard Mapの作成も可能となった。 3.屋外における人体生理量の測定に基づく人体温熱生理モデルの精度検証 仙台において歩行者空間における歩行時を対象に同時移動計測を行った。そして、この測定結果を利用していくつかの人体温熱生理モデルの精度を比較、検討した。 4.Risk評価モデルの基本フレーム検討 Riskの定式化を行い、上空の気象条件から推定される熱中症リスクに対する街区内の熱中症発症リスクの増減の分布を評価する手法を開発した。 5.全国9都市の気象データから算出した温熱指標と救急搬送データの関係の分析 厚生労働省の全国の死亡統計データ10年分、仙台,東京,横浜,浜松,静岡,名古屋,大阪,神戸,福岡の消防の搬送統計データ5年分と最寄りの気象官署の気温と気象データから算出したWBGT等の温熱指標との関係を分析し、熱中症、心疾患、脳血管疾患の発症率との関係を調べ、各地域の特性を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
・Risk評価のためのメソ・ミクロ・熱ストレス一貫解析の基本フレームの構築と全国9都市の気象データから算出した温熱指標と救急搬送データの関係の分析は、予定通り完了することができた。 ・WRFによるメソ気象解析によるSevere Weather Conditionの予測に関しては、現在のNatural Hazard Mapを作成する手法を開発しただけでなく、2030年代を対象としたNatural Hazard Mapの作成も可能となり、期待以上の進展があった。 ・歩行者レベルの屋外温熱環境に大きな影響を及ぼす放射環境の予測精度改善のために、都市外表面における日射反射の指向性を組み込む形にモデルを改良し、その精度の検証を行った。これにより屋外歩行者環境の温熱環境、人体受熱量に関するより詳細な分析が可能となったのも、当初の計画以上の成果である。 ・屋外における人体生理量の測定に基づく人体温熱生理モデルの精度検証については、測定時期が計画とずれ9月下旬となり、Severe Conditionにおける測定を実施できずやや計画から遅れているが、平成26年度は環境条件と人体生理量の移動計測に関するノウハウを得、人体温熱生理モデルの検証を行うまでの一連のプロセスを実行することが出来、平成27年度はより規模の大きい測定を実施し、人体温熱生理モデルの追加検証を行うことが可能と考えている。 ・Risk評価モデルの基本フレーム検討については、Riskの定式化を行い、街区内の熱中症発症リスクの上空の気象条件から推定されるリスクに対する増減の分布を評価する手法を開発し、実際の屋外歩行者空間のリスク評価まで一貫して行うことができたという点で期待以上の進展といえるが、屋外歩行者空間の人間の生理量と熱中症リスクの関係の分析は途中であり、平成27年度中にさらなる検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 昨年度の温熱環境・人体生理量の同時移動計測で培ったノウハウを活かし、今年度は多数のサンプルに対してより熱的に厳しい条件で計測を実施し、人体熱生理モデルの適用可能性の検証を行う。測定で得られた生理量の変化の傾向から適切なRisk評価指標、評価時間等について検討を加える。 (2) 現在と将来(2030年代)の仙台と東京に対してWRFによるメソ気象解析を行い、都市上空の気象条件の空間分布からNatural Hazard Mapを作成。次に、これと人口分布等を考慮することにより対策優先度の高い街区を抽出する。同様の検討を東アジアの都市(広州、武漢等)に対しても行う。 (3) WRFの結果からミクロ気象解析の境界条件を生成し、(2)で優先度の高いと推定された街区内のミクロスケールの温熱環境を予測する。これと上空の温熱環境の比較により、都市気候に起因するRisk増幅要因(Vulnerability)の評価を行い、現状の街区の問題点を抽出する。次にこれを踏まえて、a)気象条件、b)対策手法、c)対策箇所、等を変化させたパラメトリックスタディを実施する。 (4) (3)で得られた各ケースの気象条件の空間分布と(1)で検討した、移動する歩行者の生理量等の変化に基づくリスク評価を行い、各種対策を実施した場合のリスク低減効果を試算する。 (5) (4)の結果から、標準的な夏の気象条件と猛暑日での対策技術の効果の違いを分析し、従来の屋外環境設計で推奨されてきたヒートアイランド対策手法の効果、優先順位を再検討し、効果的な適応策を抽出する。さらに、(4)で検討した各対策手法を施した街区のミクロ気象解析の結果から、領域内で発生する顕熱量、領域内の建物に流入する熱量の評価を行い、各対策手法を用いた場合のヒートアイランド現象の緩和、低炭素化とのトレードオフ・シナジーの関係を整理したうえで、猛暑による健康被害リスク低減を考慮した屋外温熱環境設計基本フレームとガイドラインを作成する。
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Causes of Carryover |
昨年度中に完了する予定であった屋外における人体生理量の測定に基づく人体温熱生理モデルの精度検証に関して、今年度に追加検証を行うこととしたため、予算を今年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
測定を行うための皮膚温センサーの購入、測定を行うための被験者への謝金等に使用する予定である。
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