2015 Fiscal Year Annual Research Report
自然超格子熱電材料における電気と熱伝導特性の独立制御
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26289260
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 克志 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30236575)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 熱電材料 / 酸化物 / マグネリ相 / 層状構造 / 不純物元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
【四価元素複合添加(Ti,M1,M2)O2-xマグネリ相の作製】昨年度の研究で添加が可能であることが明らかになったZrO2に加えて,さらに重い元素で強いフォノン散乱が期待できる四価元素としてSnO2を選択し,その添加が可能であるかどうか実験的な研究を行った.その結果,TiO2-SnO2は高温で均一固溶体を形成するが,部分還元を行うと,SnO2のみが還元され,試料中に金属スズが析出することが明らかになった.また,金属スズを除くと(Ti,Sn)O2-xの還元量はSnO2が完全に還元されたとしたときの値と一致し,ほぼ100%に近い添加SnO2が金属スズに還元されることが明らかとなった.これはZrO2と複合添加したときも同様であり,ZrO2はマグネリ相中に固溶するがSnO2は還元され,マグネリ相中に固溶しないことが明らかとなった. 【添加元素の占有位置の特定】ZrO2を添加したマグネリ相を透過電子顕微鏡を用いて分析した.その結果,固溶したZrはマグネリ相中のTi2O3層にはあまり固溶せず,TiO2相中に優先的に固溶しているらしいことが示された.ただ,試料作製方法に問題があり,分析中の試料のドリフトが抑えきれなかったため,確定的な分析結果を得ることはできなかった.今後機械的に安定な検鏡試料を作製することで詳細な分析を行う. 【四価元素添加材の熱電特性の測定】ZrO2を添加したマグネリ相の熱電特性の測定を行った.期待通りZrO2を添加した時に熱伝導率の大幅な低下が見られたが,同時に電気的な特性が劣化する結果となった.この原因については今後明らかにする必要があると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに計画していた研究はおおむね終了した.一方で,四価不純物が固溶した際に変化しないと期待していた電気的な特性が大きく変化することが明らかになった.これについては最終年度に追加で調査を行う必要がある.これを明らかにすることが本研究課題である電気的特性と熱的特性の独立制御を達成するために必要な研究となる
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Strategy for Future Research Activity |
【熱電特性の最適化】これまで適正化すべきパラメータが酸素欠損量のみであったため,ZT=0.13以上の特性を示す材料を作製することができなかった.本研究により,これに添加元素量というパラメータが加わることで,適正な酸素欠損量も変わると考えられる.より高性能な熱電材料とするためにこれらのパラメータを最適化する試みを行う. 【マグネリ相単結晶材の作製と特性評価】実用材料の開発という観点からは上記の研究で十分であると考える.一方,この結晶中で何が起こっているのかを正確に把握するためにはマグネリ相の単結晶材を作製することが重要と考える.すなわち,面欠陥の導入によって生成するマグネリ相では面欠陥に平行な方向と垂直な方向で大きく特性が異なることが予想される.計算科学的手法でも大きな異方性があることが示されているが,その異方性を直接確認することが計算手法の正しさの確認にもつながり,将来の他の材料開発にも役立つ.マグネリ相単結晶材の作製を試み,それに成功したならば,その電気的・熱的性質とその異方性を明らかにし,申請者らが予想している伝導機構との対応付けの詳細を行いたい.
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