2015 Fiscal Year Annual Research Report
溶融塩化物中でのマグネシウム,リチウム電解用陽極材料の新視点からの開発
Project/Area Number |
26289282
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
竹中 俊英 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (60197324)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森重 大樹 関西大学, 化学生命工学部, 助教 (30530076)
西本 明生 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (70330173)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 金属生産工学 / 反応・分離工学 / 溶融塩電解 / 不溶性陽極 / リチウム / マグネシウム / SiC / MoSI2 |
Outline of Annual Research Achievements |
Li2Oを含むLiCl-KCl共晶溶融塩中でTi-50%Mo合金を用いた研究を行ったところ,平成26年度のTi-5~20%Mo合金に関する研究成果に反し,不働態化現象が見られなくなった.この結果から,単純なTi-Mo合金は本研究の目標とする材料とはならないと判断している. Li2Oを含むLiCl-KCl共晶溶融塩中でSiCの陽極挙動を調べたところ,高い電位ではCl2ガス発生反応に伴う大きな電流が流れ,Cl2ガス発生反応より卑な電位ではSiO2生成反応とCO2発生反応がおこった.生成するSiO2被膜は,十分に保護膜としては作用しておらず,CO2生成に伴う消耗を完全に抑制することはできなかった. Li2Oを含むLiCl-KCl共晶溶融塩中でMoSi2の陽極挙動を調べ,かなり広い電位領域で明瞭な不働態化が起こることを示した.この不働態化は,表面に形成される緻密で安定なSiO2膜によるものと考えられるが,電気抵抗はかなり大きいことが示唆された.形成されるSiO2被膜の電気伝導度の改善を,Cl2ガスに対する耐性の維持,Mo溶出の抑制を考慮しつつ行う必要があると考えている. CaOを添加したMgCl2-NaCl-CaCl2溶融塩中での炭素電極の陽極特性について,Cl2ガス発生反応より卑な電位でCO2ガス発生反応がおこり,単純な炭素系材料では電極の消耗を防止することが困難であることを確認した.また,COも発生していることを確かめた. SiC,MoSi2で形成されるSiO2被膜も特性の改善が必要であることがわかった.本研究では第3元素のコーティングと熱拡散処理による表面改質を計画している.本年度は,表面コーティング装置製造メーカー2社に予定する元素のコーティング可能性とコーティング条件の検討を行って頂き,その結果に基づき,最終的に本研究目的に合致するメーカーの製品を選定・購入し,研究に着手した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していたMo-Ti合金,SiC,MoSi2のLi2Oを含むLiCl-KCl共晶溶融塩中での陽極挙動を詳しく検討して,成果をあげた.Mo-Ti合金については,これまでの結果からMo量を増加させることによって特性の改善が図れるものと期待したが,過剰の添加により特性が悪化することがわかった.この結果から,目的とする不溶性陽極として利用することは困難であると判断している.SiCとMoSi2については陽極として利用した場合,予想通り表面にSiO2が形成され,不働態化につながることを確かめた.ただし,SiC上のSiO2被膜に関しては緻密性や密着性の点で,MoSi2上のSiO2被膜に関してはMoの透過性や電気伝導度の点で課題があることが判り,今後の研究指針を明確にすることができた.また,MgCl2-NaCl-CaCl2溶融塩を用いた研究にも着手した. SiCやMoSi2表面への第3元素のコーティングと熱拡散処理による表面改質にも着手した.ただし,目的とする表面コーティングが可能かを確認するため,装置製造メーカーのご好意でコーティング試験を行っていただいた.この結果を見て最終的な機種選定を行ったため,選定機種の納入が遅れて,表面改質の検討は着手したところである.
|
Strategy for Future Research Activity |
過去2年の研究により,検討すべき課題はかなり明確にすることができたと考えている.平成28年度は,これらの知見に基づいて研究を推進していく. SiCやMoSi2上に形成されるSiO2被膜の特性改善が最も重要であると考えており,この点を中心に研究を進める.このためには,表面改質が必須であると考えている.昨年度は,表面改質装置の機種選定と選定機種の納入が遅れたため,十分な研究成果をあげることができなかった.しかし,逆に機種選定前に装置製造メーカーにテストを行ってもらっており,計画した目的に使用可能であることは確認済みで,おおまかなコーティング条件も判明している.このため,本年度は,これらの知見を活用して研究を推進していく予定である. MgCl2-NaCl-CaCl2溶融塩浴を用いた昨年度の研究成果を見る限り,より高温であることを除けば,LiCl-KCl溶融塩中での研究成果と大きな差異は見られなかった.このため,LiCl-KCl溶融塩中で得られた研究成果を活用して,MgCl2-NaCl-CaCl2溶融塩浴を用いた研究を推進していく.
|
Causes of Carryover |
平成26年度経費の研究費の一部を繰越して,平成27年度に本研究目的に合致する表面コーティング装置を大きな費用をかけた購入した.同装置の選定に時間をかけたため,購入時期が遅くなり,購入までその費用を残しておく必要が生じた.このため,それ以前の研究代表者の旅費等には学内経費等を充てるようにした.最終的には物品費はほぼ計画通りにおさまったが,旅費等の支出額が小さくなり,一部の経費を持ち越すことになった. 上記のとおり,物品費はほぼ計画通り支出しており,旅費等は学内経費を用いたため,研究の遂行に支障はでなかった.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度はMgCl2-NaCl-CaCl2溶融塩を用いた研究を行う予定であり,必要となる透明石英製ビーカーの購入等で使用予定である.また,現在留学中の共同研究者の森重大樹准教授の留学先は,Alの溶融塩電解で著名な研究機関であり,留学先,および留学先と関連をも持つ研究機関において,溶融塩電解に関する情報収集を積極的に行う予定であり,情報収集のための旅費等にも使用する予定である.
|