2015 Fiscal Year Annual Research Report
微小液滴の衝突を利用した新規マイクロ反応プロセスの開発
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26289295
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
牧 泰輔 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10293987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前 一廣 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70192325)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マイクロ反応工学 / 新規反応場 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、各種マイクロミキサーおよび購入した3Dプリンタにより作成したマイクロチャネルを用いて、微小液滴の生成とそのサイズ制御について検討を行った。物性の異なる種々の溶液について検討を行い、キャピラリー数やウェーバー数などの無次元数を用いたより一般的な液滴サイズ推算式を提案した。これにより、液物性、合流部体積、流速、および合流後の流路サイズによって任意の液滴を作成することを可能とした。以上の結果より、本研究の目的である微小液滴の生成については目的を達した。 次に液滴生成デバイスを2つ用いて合流させる液滴合一チャネルについて検討をおこなった。昨年度までに得られた液滴の合一のタイミング制御についての知見をもとに、液滴の生成と合一を一連で行うマイクロデバイスを試作した。デバダッシュマン反応を用いて液滴の合一による混合特性の評価を行った結果、混合性能の向上には液滴の衝突時における相対速度が非常に重要であることを示すとともに、混合時間と液滴径および衝突相対速度の関係を表す相関式を提案した。 液液系の液滴生成制御および合一制御に加えて、気相中で液滴を生成してそれを衝突させた場合についても検討を行った。この検討には平成27年度に導入したInk Jet吐出装置を用いた。本装置は2つのインクジェットノズルから液滴を射出して衝突させるものであるが、両者の射出タイミングと射出速度を高度に制御する必要がある。物性の異なる液滴の射出制御は非常に困難であるが、ストロボカメラを用いて観察しながら吐出圧を制御することで、気相中において安定な液滴の射出と衝突に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に購入した3Dプリンタを用いることで、種々の形状のチャネルを短時間に作製することが可能となり、液滴生成に及ぼすチャネル形状や操作条件の影響を網羅的に検討することができた。これにより、液滴生成については既に研究の目的を達している。 液滴合一制御については、液滴の生成と合一を一連で行うデバイスの開発に成功している。ただし、液滴生成時の条件と合一の条件が相反するために広い流動条件範囲で利用可能とは言いがたい。しかし、合一時に第3物質を添加することやデバイスの素材変化を行うことで、目的を達成できると考えている。 また、気相中の液滴生成・合一まで研究範囲を広げており、研究は概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目(1)については研究目的である微小液滴生成の制御法を確立を達成できたので、今後は研究項目(2)の合一制御について主に検討を行う。液滴合一制御の鍵となるのは液滴生成のタイミング制御と生成後の速度ベクトルの制御である。しかし、これまでの結果から、液滴生成の条件と液滴合一の条件は相反するため、同一デバイス内で両者を実施できる条件は非常に範囲が狭いことが分かっている。このため、合一時に第3物質を添加したり、デバイスの素材を変化させることによって安定な液滴生成・合一デバイスの作製も検討する。 気液系の液滴合一混合反応特性の検討については、平成27年度までに安定に液滴を衝突させることに成功しているので、今後は気相中での衝突による混合性能と反応特性について検討を行う。混合性能の評価には、これまでと同様にダッシュマン反応を用いて行い、液液系と同様に混合特性に対する液滴径および衝突速度の関係を検討する。 最後に、液液系、気液系ともに衝突液滴を反応場とした実際の反応を行う。反応系としては金属ナノ粒子の生成を検討し、ナノ粒子前駆体溶液と還元剤溶液の衝突による反応の特性を詳細に検討し、液滴を反応場とする新規反応の利点や可能性について明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成26年度に導入した3Dプリンターを供用設備として他の研究費と共同で購入したため費用が削減できた。また、3Dプリンターは今後さらなる発展が予想されるため、購入時にメンテナンス契約を締結し、研究期間内の機能向上を可能にした。そのメンテナンス費用として次年度以降に使用する。さらに平成27年度に導入したインクジェット吐出装置の納品が2月にまで遅れたため、この装置を用いた実験の費用を平成28年度に計上する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由にも記載したが平成26年度に購入した3Dプリンタのメンテナンス費用として810千円を使用する。また、平成27年度に導入したインクジェット吐出装置を用いた実験費用などに、2283万円(試薬・配管部品など物品費:1883千円、発表・調査旅費:300千円、その他:100千円)を使用する。
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