2015 Fiscal Year Annual Research Report
高機能化タンパク質ナノスフィアによるがん細胞ターゲッティング
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26289310
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小畠 英理 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00225484)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオテクノロジー / タンパク質 / 生体分子 / ナノバイオ / 生体機能利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生体適合性、生分解性、生体吸収性等に優れるタンパク質のみを構成成分として、粒径がナノメートルスケールで精密に制御され、かつ安定な構造を有する高機能化タンパク質ナノスフィアを設計・構築し、これをキャリアとして用いてがん細胞をターゲッティングするドラッグデリバリーシステム(DDS)を開発することを目的とする。これまでの研究で構築したナノ粒子の特性を明らかにするとともに、タンパク質の多機能化を行いDDSキャリアとしての可能性を追求した。 1.分子認識タンパク質導入による多機能化ナノスフィアの構築 薬剤を特定のがん細胞にデリバリするためには、DDSキャリアに分子認識能を賦与することが重要である。そこでがん細胞に過剰発現するEGFレセプターをターゲットするために、EGFと(APGVP)nとの融合タンパク質を新たに構築し、これを用いて粒子を作製することにより、表面にがん細胞ターゲッティング能を提示したナノスフィアを作製した。疎水性蛍光プローブを担持したナノスフィアを用いて、蛍光顕微鏡観察により細胞へのターゲッティング能を評価したところ、効率良いデリバリが確認された。 2.薬剤内包ナノスフィアによる殺細胞効果の確認 疎水性抗がん剤であるパクリタキセルを用いて、これをEGF表面提示ナノスフィアない文意内包した。これをがん細胞に添加した。その結果、本法によるがん細胞特異的な殺細胞効果が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、高機能化タンパク質ナノスフィアを設計・構築し、これをキャリアとして用いてがん細胞をターゲッティングするドラッグデリバリーシステム(DDS)を開発することを目的としている。 現在までに、安定なタンパク質ナノスフィアを作製し、その基本特性を明らかにした。さらにナノスフィア表面に、がん細胞表面分子に対する認識能を導入し、がん細胞のターゲティングが可能であること、ナノスフィアの疎水性コアに抗がん剤などの薬剤を担持できること、がん細胞を特異的に殺傷できることなどを明らかにした。研究は順調に進み、現在までのところ、当初の目標をほぼ達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
がん細胞ターゲティング能を有する表面分子を容易に挿げ替えることができるナノスフィアを作製できれば、ターゲットとする細胞・組織に応じた汎用性の高い薬剤送達システムが実現できる。そこで今後は以下のナノスフィアを構築する。 1.抗体結合タンパク質提示タンパク質ナノスフィア:抗体結合タンパク質を表面提示したタンパク質ナノ粒子を構築できれば、抗体分子を挿げ替えることにより、様々ながん細胞を標的とするナノ粒子を構築することができる。そこで抗体結合タンパク質とナノ粒子を形成するタンパク質との融合タンパク質を作製し、表面に抗体結合能を賦与したナノ粒子を構築する。 2. DNAアプタマー提示タンパク質ナノスフィア:がん細胞のターゲティングには抗体同様DNAアプタマーも有効な分子である。そこで当研究室で開発したDNAを特異的に結合できるGeneAタンパク質を提示したナノ粒子を構築する。 以上種々の細胞に対するターゲティング能を有する機能的な表面を持つタンパク質ナノ粒子を利用して、各種がん細胞へのターゲッティング能、および内包した薬剤によるがん細胞特異的殺傷能を調べ、その有効性を評価する。
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Causes of Carryover |
当初の予定通り、がん細胞表面分子を認識する部位を導入したタンパク質ナノスフィアを構築した。研究を進めるにあたり計上していた人件費・謝金を使用しなかった。人件費・謝金に関しては、実験補助員の雇用を予定していたが、実験を担当している大学院生により十分に研究を推進することができたため、雇用をしなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
改良を重ねたより優れたタンパク質を作製し、細胞実験の評価を行うと、当初予定していたより多くの実験量が必要であり、それだけ多くの物品費が必要となる。したがって、生じた次年度使用額は、主としてこれら追加実験の物品費として使用し、本年度請求研究費は当初予定していた研究の遂行に使用する。
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Research Products
(5 results)