2014 Fiscal Year Annual Research Report
海洋ナノ微生物資源の高精度探査に向けた現場型AFM技術の開発
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26289330
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西田 周平 東京大学, 生産技術研究所, 特任講師 (90463900)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 走査型プローブ顕微鏡 / 海洋探査 / 微生物 / 現場分析装置 / ナノテクノロジー / 海中探査機 / 海底熱水活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である本年度は、1)海中探査機に搭載可能な現場型原子間力顕微鏡(海中AFM)の開発、および2)観察試料の採取・固定機構の開発を行った。 1)海中AFMの開発においては、海中探査機の限られたペイロードに実装するために、装置の小型化・軽量化・省電力化を図った。小型の円筒型金属製容器内にピエゾスキャナー・カンチレバー・試料台・アプローチ機構等、海中AFMの主要機構が全て格納できるように設計した。またカンチレバーの変位検出法として、光学系に依らない自己検知型カンチレバー方式を採用した。ここで自己検知型カンチレバーをパリレン薄膜でコートすることにより、撮像性能を保持しつつ海水塩分による腐食や電気回路の短絡を防止する手法を確立した。また深海の高圧環境における対応するため、駆動機構部の油浸機構や金属密閉耐圧容器を開発し耐水耐圧化を図った。本装置は国立研究開発法人海洋研究開発機構の「なつしま」および「ハイパードルフィン」を用いた調査航海において実海域試験を実施し、伊豆小笠原海域の熱水活動域においてカンチレバーの変位を安定的に計測することに成功した。 2)観察試料の採取・固定機構の開発においては、メンブランフィルターによる濾過機構を備えたAFM試料台を考案し、これを用いてピエゾスキャナーの内側から海水を吸引することにより、観察試料の濃縮と固定を同時に行うことに成功した。これにより、液中環境を保持したままの試料固定、遠隔的な観察試料の採取・固定、および懸濁液中の試料濃度が低い場合の観察試料の濃縮等、従来法では困難であった試料固定の課題を克服することに成功した。本機構を備えた海中AFMは、東京大学臨海実験所周辺の油壺湾浅海域において動作試験を実施した。この結果、メンブレンフィルタのポアをAFM観察することに成功し、実海域においてナノメートルオーダーの微小構造が観察可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
原子間力顕微鏡を海中探査機に搭載するための要素技術を分析・検討し、本年度の研究計画を達成した。この開発の過程で、パリレンを用いた自己検知型カンチレバーの絶縁コーティング手法を確立した。またメンブランフィルターによる濾過機構を備えたAFM試料台等の新規なAFM機構を考案し、実用化を念頭に国際特許の出願を行った。さらに、当初の計画では次年度以降に実施予定であった、本装置の海中探査機への搭載および実海域試験を実施し、海中におけるカンチレバーの挙動を解析することに成功した。また本装置を用いて浅海域における撮像試験を実施し、現場環境でAFM撮像することに成功した。これらの成果は国際会議・学会等で積極的に発表を行い、肯定的な反響を得ることができた。以上の理由から、本研究は当初の計画以上に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度に開発した海中AFMを用いて、浅海・深海等の様々な実海域における撮像実験をを引き続き実施し、本装置の運用に関わる基礎的データを蓄積する予定である。これらのデータを元に、複数探針を搭載したマルチ計測システムや自動計測に向けたソフトウェアの検討等、海中AFMを効率的な撮像実験を実施するための更なるの改良を実施し、新しい現場型海洋ナノ計測システムとしての完成度を向上させる予定である。これと平行して海中AFMを海中探査機に搭載するの際に重要な防振機構の開発を行う。また、海洋微生物の専門家とも積極的に連携して、海中AFMで得られた撮像結果の解析手法についても検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は3年間の研究期間を予定しており、全研究期間に渡り円滑に研究活動と成果発表活動を遂行するために、初年度である本年度に一括交付を受けた学術研究助成基金助成金を次年度以降も使用する必要があるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度については、カンチレバーや海中AFMの制振機構を開発するための物品費、成果発表のための旅費、および学会参加のためのその他費用を合計して、本年度と同様、科学研究費補助金を3,100千円、学術研究助成基金助成金を約1,500千円を使用する予定である。
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