2015 Fiscal Year Annual Research Report
JET-ITER Like Wallタイルのトリチウム分布測定
Project/Area Number |
26289353
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
波多野 雄治 富山大学, 研究推進機構水素同位体科学研究センター, 教授 (80218487)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 哲平 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (80315118)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | プラズマ・核融合 / 放射線 / 構造・機能材料 / 水素 / 可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際熱核融合実験炉ITERでは炉内トリチウム(T)滞留量を低減するため、従来の炭素材に替えて、第一壁やリミタ材料としてBeを、ダイバータ材料としてWを用いることが検討されている。その準備のため、大型核融合プラズマ実験装置初の試みとして、欧州のJoint European Torus (JET)においてBeとW被覆炭素材を用いた重水素(D)放電実験、いわゆるITER-Like Wall(ILW)実験が実施されている。D放電においても、DD核融合反応で生じるTの挙動を調べることで、ITERでの壁材料中のT蓄積を予測するのに必要な情報を得ることができる。そこで我々は昨年度までに、イメージングプレート(IP、放射線に感光する一種の蛍光版)を用いてILW第一サイクル実験で使用されたW被覆ダーバータタイル(以下、Wタイル)表面のTの2次元分布を測定した。 今年度は2013~2014年度のILW第二サイクル実験で使用されたWタイルのIP測定を行った。また、Tの深さ方向分布を調べるため、半導体検出器を用いてTからのβ線で誘起されるX線のエネルギースペクトルを測定した。測定はWタイルが保管されているフィンランドのVTT研究所で行った。 第二サイクル実験後では、第一サイクル後にT濃度が低かった垂直方向のタイルや、プラズマに直接面していないタイル側面においてもTが比較的高濃度に検出された。これは磁場配位の差異による堆積層形成パターンの変化と、プラズマパラメータの向上に伴うT生成量の増大に起因すると考えられる。また、β線誘起X線の計測では、X線エネルギースペクトルの形状より、DD反応で発生したのち高エネルギーのままW被覆層に打ち込まれたTと、プラズマ中で一旦熱化されたのちBeと共にWタイル表面に堆積したTを識別できることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に予定した通り、第二サイクル実験で使用されたWタイルのIP測定を実施することができた。また、β線誘起X線の測定にも着手し、DD核融合反応で発生したのち高エネルギーのままW被覆層に打ち込まれたTと、プラズマ中で一旦熱化されたのちBeと共にWタイル表面に堆積したTを識別できることを確認した。前者の分布は磁場中でのMeVオーダー高エネルギー粒子の閉じ込めに関する情報を、後者の分布はITERで形成される共堆積層中のT挙動に関する情報を与える。以上のように、今年度は当初予定した測定を全て遂行することができており、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は第一サイクル実験で使用された内側ダイバータタイルのβ線誘起X線測定を実施した。平成28年度は、外側ダイバータタイルについての測定を実施する。これによりポロイダル方向に一周、Tの深さ方向分布を明らかにする。また、既知量のTで標識した標準試料や粒子輸送計算コードを用いて定量化を行い、IP測定の結果と合わせて、Tの3次元分布を評価する。第二サイクル実験で使用されたタイルのうち主要なものについてもβ線誘起X線測定を実施し、プラズマパラメータがTの3次元分布に与える影響を調べる。 また、ITERや将来の原型炉の安全性評価においては、壁材料中のみならずプラズマ実験で発生するダスト(微粒子)中のT濃度も重要なパラメータである。我々は既に金属微粒子を用いた模擬実験によりIP法がダスト粒子中のT濃度測定にも有効であることを明らかにしている。今後、ILW実験で発生したダストについてもIP法によるT濃度評価を行う。 現在、JETでは第三サイクル実験が行われており、平成28年の夏ごろからタイルの取り出しが始まる予定である。従って、平成28年度の後半から29年度にかけて、第三サイクル実験で使用されたタイルのIP測定およびβ線誘起X線測定が実施できる見込みである。これらにより、プラズマパラメータがT蓄積に与える影響をさらに詳細に明らかにする。
|
Causes of Carryover |
成果発表のため国際会議に参加した際の航空券が当初の見込み額よりわずかに安く購入できたこと、消耗品を効率的に使用したことなどにより次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度にも成果発表のための学会参加を予定しており、旅費の一部として使用する予定である。
|