2014 Fiscal Year Annual Research Report
低放射化フェライト鋼-ステンレス鋼異材溶接継手の中性子照射特性と不均質変形の解明
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26289358
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
長坂 琢也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40311203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野上 修平 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00431528)
四竈 樹男 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30196365)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱影響部 / 溶接後熱処理 / 焼き戻し / 有限要素法 / 摩擦係数 / 中性子照射 |
Outline of Annual Research Achievements |
低放射化フェライト鋼-316Lステンレス鋼の異材突合せ溶接材の製作、溶接後熱処理条件の探索、金相試験を行った。異材溶接材の製作においては、電子ビーム溶接を用いた。フェライト鋼の熱影響部では高温状態における炭化物の分解と、冷却過程でおこる焼き入れで、焼き入れマルテンサイト相が生成し、これもが非常に硬いために継手の衝撃特性が劣化する。この焼き入れマルテンサイト相は、溶接後熱処理で母相中の炭素を適度に析出させれば軟化させることができる。溶接後熱処理条件の探索を行った結果、フェライト鋼の母相全体が焼き戻し過ぎで軟化するのを避けつつ、溶接部の硬さを80%程度回復させる条件として680℃×1時間、また母相全体が焼き戻し過ぎで軟化するのを許容し、溶接部の硬さを100%回復させる条件として750℃×1時間が得られた。 一方、非照射材の有限要素法解析と応力分布計算を開始した。これまでの同様の研究では、試験片のみが計算対象であったため、大きな変形を再現することが不可能であった。本研究では、試験片冶具も含めた試験系全体を計算することで、歪量20%までの再現が可能となった。試験治具も含めた計算においては、冶具と試験片の間の摩擦係数が必要である。本研究ではこれを求めるために、異材接合材ではなく母材の試験片を用いて実際に曲げ試験を行い、有限要素法解析でそれを再現するためのフィッティングから摩擦係数を求めることに成功した。 核融合炉で想定される照射条件の300℃、0.1 dpaで中性子照射した異材接合材試料において、照射後試験を開始した。照射試料の溶接後熱処理条件は上記の680℃×1時間である。照射後の衝撃特性は良好であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度実施を計画した異材溶接材の作製、溶接後熱処理、金相試験は順調に終了した。これに加え、溶接後熱処理条件の探索においては、当初予定よりも広く条件を探索し、先の研究で行われている条件とは違う観点で、適合条件を求めることも行った。 有限要素解析においては、実験結果を高歪まで計算で再現するには試験片のみではなく、周囲の試験片冶具も合わせての解析が必要で、そのため試験片と冶具の間の摩擦係数が必要であることが明らかとなり、予定外の実験を行った。そのため異材接合材自体の曲げ試験再現計算まで終了はしなかったが、既に手法は確立されていて大きな遅れにはつながらない。 平成28年度から予定していた中性子照射後試験に前倒しで着手し、大きな進展となった。核融合炉で想定される照射条件でも異材接合継手が十分な衝撃特性を持つことを確認した。照射による特性変化のメカニズムや、衝撃試験における変形挙動についての解析など、詳細な照射後試験を平成27年度以降継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の研究計画にのっとり研究を推進する。
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Causes of Carryover |
試験片冶具の消耗が見込みより軽度で、予定していた冶具交換が不用であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度前期には試験片冶具の交換が見込まれるので、予定通り試験片冶具の購入に充てる。また、前述のとおり研究が見込みより進展したので、成果発表のための学会参加旅費の一部として使用する。
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