2017 Fiscal Year Annual Research Report
低放射化フェライト鋼-ステンレス鋼異材溶接継手の中性子照射特性と不均質変形の解明
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26289358
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
長坂 琢也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40311203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野上 修平 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00431528)
四竈 樹男 八戸工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (30196365)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不均一変形解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、300℃、0.1 dpaの中性子照射材の衝撃試験を終了し、ITERあるいは原型炉条件で想定される中性子照射後も、本研究で試作した異材溶接継手は良好な機械特性を有することを示した。さらに、中性子照射後の機械特性データを得て、これを有限要素法計算に入力し、異材溶接継手の不均質変形挙動を解析した。これにもとづくと、衝撃試験時の最大引張応力は溶接金属内で発生し、その大きさは1540 MPaであった。これは衝撃試験で溶接金属が経験した最大の引張応力であり、このことから異材接合材の接合強度は1540 MPa以上と推定できる。実際に衝撃試験後の形状を測定したところ、SS316L母材部分がF82Hよりも大きく変形していることが分かった。計算で得られた試験片形状と、実験との比較を行った。衝撃試験における支点の位置と、応力集中のためのノッチの肩の位置の距離の変化を求めた。計算では、SS316LとF82Hにおける距離の変化、すなわち平均の歪はそれぞれ6.8 %、0.88 %であった。一方、実験ではそれぞれ6.4 %、2.0 %であった。SS316Lでは計算で実験をよく再現できたが、F82Hでは誤差が大きくなった。これは、計算の収束のためにF82H側の支点を固定したことによると考えられる。これは、F82Hと冶具の間のすべりが無いことを仮定しており、試験片がその支点を中心に回転するのでSS316Lの変形を計算上大きく、F82Hの変形を小さくすることになる。より正確なシミュレーションには、支点におけるすべりと試験片の回転を取り入れる必要があることが分かった。 一方本研究では、F82Hの熱影響部と思われる位置で局所的に非常に大きな照射硬化が新たに発見された。この硬化メカニズムを明らかにするため、F82Hの溶接試料を作製して熱影響部の調査を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
中性子照射した異材接合材の有限要素法計算と、実験との比較まで終了した。これにより当初の課題における実験と解析は終了し、最終年度ではこれらの研究のまとめを十分できる見込みとなった。さらに、当初想定していなかったF82Hの熱影響部と思われる位置での局所的に非常に大きな照射硬化のメカニズムを明らかにするための調査を開始することができた。中性子照射特性が良好であったことを踏まえ、先進的な原型炉のブランケットも想定し、より高温あるいはより厳しい中性子照射条件異材溶接継手を使用する場合の課題等についても検討できる見込みとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で明らかになったF82Hの熱影響部と思われる位置での局所的に非常に大きな照射硬化については、熱影響部のみの現象であれば異材接合材ではなく、F82H共金溶接材でも同様に硬化がおこるはずである。そして、この硬化は溶接後熱処理で十分に析出せずに母相に残留した炭素が照射下で析出するために起こっていると推定している。残りの期間では、溶接後熱処理の温度と時間、そして熱処理後の長時間時効が熱影響部の硬化と微細組織にどのような影響を及ぼすのかを調査し、上記のメカニズムで照射硬化を説明できるかどうか検討する予定である。一方、先進的な原型炉のブランケットとして、F82Hではなく酸化物分散強化フェライト鋼を使用する場合の異材接合についても本研究と同様の溶接条件が適用できるかどうか検討する予定である。
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Causes of Carryover |
異材接合材の強度試験に必要な冶具等の消耗品が想定より長期間使用できたために当該年度内に購入する必要がなくなった。これらは次年度に購入する予定である。また当初想定していなかった照射硬化のメカニズムを探るために、あらたに溶接材を作製したがそれに時間を要したため、試験片への加工は次年度に実施することとした。
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