2016 Fiscal Year Annual Research Report
TDP43の分子内病原配列に対する特異抗体を用いた新規分子標的治療・診断法の開発
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26290023
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
漆谷 真 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60332326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
守村 敏史 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 助教 (20333338)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 / 蛋白質 / シグナル伝達 / 筋萎縮性側索硬化症 / TDP-43 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は以下の計画に従って実験を行った。 1) 病原TDP-43に結合する低分子ライブラリースクリーニングの継続:RRM1,RRM2ドメインで申請者らが明らかにした病原エピトープに結合する低分子化合物を独自の抗体を使った競合ELISAによって明らかにする。2) 細胞内抗体の病原TDP-43の除去効率を高めるため、Hsp70などのシャペロンの誘導化での標的除去効率を検討し、さらに子宮内電気穿孔法を用いた胎児マウス脳での凝集体発現と細胞内抗体の効果、in vitroでの成果について論文化を目指す。 3)引き続き、マウスの繁殖、表現型解析、脳脊髄の免疫組織学的解析を行う。現在明らかな麻痺はないが、タンパク量や分布部位に問題があった場合は、凝集体モデルとしては極めて有望なため再度のインジェクションも考慮するが、in vivoの有効性については期限内に子宮内電気穿孔法にて検証可能と考えている。 結果) 1)さらにRNA認識モチーフ(RRM)のキー配列に結合する低分子のスクリーニング方法を確立し、幾つかの候補分子を同定し、in silico解析によって結合部位の推定、さらに細胞内凝集体の減少効果を確認したが、有効濃度では毒性も出現した。2)in vitroにおいてオートファジー移行性シグナルを付加させた3B12A一本鎖抗体(CMA-scFV)はプロテアソーム以降シグナルCL1を付加させたscFvに比し、TDP-43の細胞質異常凝集体を除去し細胞死を防ぐことを示した。さらにこの機序がHsp70の誘導を介しており、細胞内抗体のリフォールディングによって分解が促進されるユニークな抗体治療となることを示した。3)細胞質にTDP-43の異常封入体を形成する遺伝子を発現する新たなALSモデルマウスを作出しP0世代を得、表現系の解析を行ったが、目的蛋白質が運動ニューロンで十分に発現しておらず表現型も得られなかった。この理由としてニューロンでの恒常的な凝集体発現の毒性が強く胎生致死となったためと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ALSの病原蛋白質であるTDP-43の分子標的治療として既に同定した病原配列に対する(1)自己分解型細胞内抗体、(2)低分子ライブラリーのスクリーニングの戦略を進めているが、(1)ではほぼin vitroでの治療に成功しており、本年度は論文作成に入る予定である。(2)はスクリーニング方法が確立し、市販の低分子物質におけるヒット化合物を複数同定した。細胞内異常凝集体の減少効果も認めているが、有効濃度における毒性が認められるものも有り、さらにライブラリーを広げてゆく。凝集体異形成型のTDP-43をニューロンに発現させる遺伝子改変マウスは産出したものについて表現型と、病理所見を解析したが明らかな表現型を認めなかった。胎生致死を来した可能性が高く、テトラサイクリンにて発現調整ができるコンディショナルなマウスの作製を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
①子宮内穿孔法を用いて、マウス胎児脳での細胞内抗体発現と病原型TDP-43の反応性、さらに細胞内抗体の持続的発現の脳の初期発生への影響ついて、マウス匹数を増やして確認と検証を行う。 ②in vitroでは分解型細胞内抗体の病原TDP-43特異的除去と神経細胞死の軽減に成功している。その分子メカニズムも判明しており、本年中の論文作成と投稿を目指す。 ③in vitroと子宮内穿孔法によって、TDP-43の病的凝集体の発現モデル作製と、細胞内抗体の発現、さらに凝集体除去について有望な結果が得られている。一度運動ニューロン特的な凝集体発現マウスモデルを作成したところ、産出マウスにおいて有意な表現型が得られなかったが、上記の治療成果から治療への応用を考えると、ALS病理を再現するモデルマウスを新たに作製することは必要と考える。これまでに、テトラサイクリン存在下で転写誘導が抑制されるpTRE-TDP-43プラスミドを構築しており、本年はそのトランスジェニックマウスを作出し、市販のNeurofilament-H-rTAマウスとの交配により、神経細胞特異的なTet-off型の病的TDP-43発現マウスの作出を進める。これまで幾つかのマウスが市販利用可能であるが、ヒト病理を再現したマウスはなく、最終年度ではあるが、今回の成果を今後につなげるためにも非常に重要な実験と考える。
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Causes of Carryover |
平成28年度に計画通り、神経特異的病原型TDP-43の遺伝子導入マウスを作出し、得られた産仔の表現型と病理解析を行ったが、免疫染色やウェスタンブロット法によって有意な発現が得られなかった。SynapsinIプロモーター下の病原TDP-43が胎生致死を来したと推察しており、テトラサイクリン制御型の神経特異型T病原TDP-43のマウスの作製を行うこととした。コンストラクションと制御状態の確認に時間を要し、さらに研究代表者の異動(平成28年7月1日付で滋賀医科大学神経内科教授に着任)に伴う、研究環境や書類の再申請が重なり、マウスの作製開始に時間を要した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ヒトNeurofilament-H tet-Offマウスを購入し、テトラサイクリン制御プロモーター下に細胞質に病的TDP-43を発現するダウブルトランスジェニックマウスを作製する。病態解析や表現型、病理の解析を行い。細胞内抗体や低分子候補物質の投与実験を行う。次年度持ち越し分はマウス作製、繁殖維持にともなうエサ代、ケージ代、さらに解析に必要な試薬代として、さらに低分子や細胞内抗体作成に必要な経費に用いる。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Velocity of intraneural blood flow is increased in inflammatory neuropathies: sonographic observation.2016
Author(s)
Carandang A, Takamatsu N, Nodera H, Mori A, Mimura N, Okada N, Kinoshita H, Kuzuya A, Urushitani M, Takahashi R, Izumi Y, Kaji R.
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Journal Title
J Neurol Neurosurg Psychiatr
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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