2015 Fiscal Year Annual Research Report
初期胚組織構築を制御するミクロオートファジーの研究
Project/Area Number |
26291041
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
和田 洋 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50212329)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | エンドサイトーシス / 原腸陥入 |
Outline of Annual Research Achievements |
初期発生ではシグナル伝達活性や組織構造がダイナミックに変化し、その制御にエンドサイトーシスが関与すると考えられる。マウス初期胚では「ミクロオートファジー」とよばれる極めてユニークなメカニズムでエンドサイトーシスが進行する。ミクロオートファジーには低分子量GTP結合タンパク質rab7が必須である。rab7欠失胚では中胚葉誘導は起きるが、中胚葉組織のパターニングが正常に進まず、結果として原腸陥入が完結せずに胎性致死となる。中胚葉は胚性外胚葉から分化する組織である。胚性外胚葉は原腸陥入前後の時期には顕著なエンドサイトーシス活性を示さず、またエンドソーム・リソソームなどのオルガネラも電子顕微鏡下にはっきりとしない。一方、臓側内胚葉visceral endodermはきわめて活発なエンドサイトーシス活性をもつ細胞で、母胎から様々な栄養因子を受け取っており、細胞内に巨大なリソソーム=apical vacuoleを発達させる細胞である。 臓側内胚葉特異的にCreを発現するTtr-Cre、胚体外胚葉特異的にCreを発現するSox2-Creをもつマウスとrab7floxマウスをかけ合わせた結果、臓側内胚葉でのrab7の欠損が原腸陥入の欠損を引き起こす一方、胚体外胚葉でのrab7欠失はE8.5まで、顕著な表現型をもたらさないことを見出した。すなわち、中胚葉パターニングは、臓側内胚葉におけるエンドサイトーシスに依存するが、自身が由来する細胞のエンドサイトーシスは必須ではない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
エンドサイトーシスのように、細胞内での応答を担う分子の機能が、組織間の相互作用に、非自律的に作用することは極めて興味深い。このメカニズムを明らかにすることは初期発生のみならず、組織における情報伝達の制御機構のあらたな側面を理解することにつながる。
|
Strategy for Future Research Activity |
Rab7が担うendocytosisは、細胞表層のリモデリングや細胞外環境を改変するのに重要な機能をもつと考えられる。また、非自律的な表現型をもたらすためには、細胞外のシグナル分子の動態や活性を制御していることを強く示唆する。そこで、中胚葉誘導から原腸陥入を司る細胞間シグナル、特にTgf-b (Nodal)とWntに着目し、rab7欠損胚でのこれらのシグナルの挙動を明らかにする。 Nodalのシグナルが胚体外胚葉に受容されているか否かを、Tgf-b経路の活性型メディエータであるリン酸化Smad2を用いた免疫抗体染色、Nodal mRNAのin situ hybridizationによる検出によって、空間的パターンをも含めて検討する。Wntのシグナルに関して、Wnt受容体Lrp6のリン酸化状態を検出できる抗体をもちいて解析を進める。この抗体はimmunoblotでは大変、強力な解析手段を提供するが、免疫抗体法での実績は未だ報告されておらず、検出の条件検討と最適化が必要と予測している。また、Wntシグナルにダイレクトに制御されているAxin2/conductinのmRNA分布を解析して、野生型胚、rab7欠失胚、さらには組織特異的な遺伝子欠失胚におけるWntシグナル受容の空間パターンを検討する。 Tgf-b・Nodalのシグナルは、細胞表層あるいは細胞外ではLefty-1, Cerlなどのantagonistによって負に制御される。またWntシグナルは、Dkk-1やsFRPとしてしられる細胞外タンパク質によって制御されるとともに、Wntリガンドの組織内での分布にはヘパラン硫酸をもつプロテオグリカンが重要であることが知られている。これらの細胞外の因子を空間的・時間的に適切に配置することが組織間の相互作用とパターニングに必須である。rab7が非自律的に影響しているのであれば、これらの細胞外因子を通じている可能性が極めてたかい。そこで、これらの因子の空間分布、存在を、蛍光抗体法によって明らかにする。
|
Causes of Carryover |
マウスの数量をセーブすることができ、当初より少ない費用で研究を進めることが出来た。また抗体に関して、前年度のストックを活用することできたため、節約することが出来た。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後、遺伝子決定のためにPCRに使う試薬が必要とされる。抗体等もストックがなくなるため、新たに購入する。
|
Research Products
(3 results)